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第131話 秘密だけど

 翌日のこと。

 師匠には王家での仕事があると伝え、朝からスミスを飛び出していた。


 しかしながら、向かったのは王城ではない。

 しばらく留守にするんだ。俺は旅立つ前にエレナと会っておきたかった。


 勇ましき戦士の嗜みへと飛び込む。するとエレナは工房で作業中のよう。


 気付いていないようなので、俺はカウンターを飛び越えて彼女のところまで駆けていく。


「エレナ!」


 背中越しに肩を叩くと、エレナは飛び跳ねるようにして驚いた。裏返った変な声を上げては、俺を振り返っている。


「リオ!? どうしたの!?」


 まあ、そう思うだろうな。朝は俺が修行する時間なんだし。


「俺は今日から旅に出ることになったんだ。しばらく戻らないから挨拶しておきたくて」


「んん? 南部に用事かしら?」


 そうじゃないよ、エレナ。詳しくは言えないのだけど、俺は他国に行く。


 君が見る淡い夢を実現させるために。


「俺は北部の小国を回って、プロメスタ聖王国へと行く。巡礼の旅にでなきゃならなくなった」


「ええ!? それって、どれくらいかかるの!?」


 有り難いことに驚いてくれている。ふーんと聞き流されなくて、本当に良かった。


「馬で行くから、一ヶ月くらいかな? しばらく会えなくなるから、最後に会っておきたくて……」


 俺がそんな風に言うと、エレナは顔を赤らめた。

 その反応って期待して良い? 俺のこと嫌いじゃないってことで良い?


「リリ、リオってば、知り合いが多いから挨拶回りが大変よね?」


 そうじゃないんだ。俺が挨拶するのは君だけだよ。


「誰にも言ってない。そもそも言っちゃいけない。君だけに伝えようと思った」


 内密にとのことだったが、俺は黙っていられない。

 もしも、俺がいない間にエレナの縁談が決まってしまっては生き甲斐を失ってしまう。


 だから俺は彼女の心の隅にでも居座りたい。いつでも、俺のことを思い出してくれるように。


「どう……して?」


 察しが悪いのか、エレナは問いを返している。


 もう頃合いなのかもしれない。これ以上、俺は自分の気持ちを偽れなかった。


「エレナ、好きだよ――」


 誰もいない工房。炉にくべられた炎が稀に存在感を主張するけれど、雑音は他に何も存在しない。俺たち二人だけの空間がここにあったんだ。


「あっ、それって胸? ああいや身体のことだよね?」


 どうしてこうも誤解されているのだろうな。


 全部、俺が曖昧なせいか? エレナは俺が遊び相手を欲していると考えているのかな。


「俺はエレナ・メイフィールドが好きだ」


 俺は首を大きく振って、エレナの問いを否定した。


 旅立つ前の心残りは俺の本心そのものだ。


「俺の人生にはエレナが必要なんだ」


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