表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/232

第128話 すまん

 消火活動へと向かう時間。俺はガラムに呼び出されていた。


 あと少しで街道上の炎はなくなるってのに、何の用だってんだ?


 炎の色も白から黄色に変わっており、明確に温度が下がっている。だからこそ、俺は一刻も早く片付けたいと考えていたのだけれど。


「何だよ?」


「むぅ、一応は父なのだぞ? もっと敬意を持て」


 父というより祖父じゃないか。

 とはいえ、貴族にはこれくらい年の離れた親子も多いけどな。


「じゃあ父上、何の用だ?」


 問いを続けると、ガラムは長い息を吐いた。


 もう既に良くない予感しかしない。良い話ならともかく、悲報を聞くための時間なんて俺にはなかったというのに。


「実はな、お前に釣書が届いておる……」


 えっと、何だそれ?

 釣書ってあれか? お見合いとかに使うやつ。


「誰からだよ? 婚約なんかするつもりはないぞ」


 エレナならばともかく、他のご令嬢なんて御免だ。面倒ごとになるのなら、事前に断ってくれ。


「それは理解しておるのじゃが、難しい話での」


「煮え切らないな? 雷氷の二つ名のようにピシャリと断ってくれよ」


 俺の返答は分かっていただろうに、無駄な時間を使わせやがって。


 恩義には感じているけれど、俺は自分の結婚相手くらい自分で決めたいんだ。


「そうもいかん。何しろ相手はソフィア姫殿下じゃからな……」


 あ、そういうこと。

 てか、あの姫様って今さらだよな? 既に求婚されたようなものなのに。


「どうして、そんなことになる?」


「口で伝えるのと文書を送るのでは意味合いが異なる。つまり、姫は他の男性の申し込みは受けない意志を明確にされた。送付にあたって、貴族界中に情報がバラ撒かれておるわい」


 マジで?

 ダンスを踊っただけなのに、どこまで本気なんだよ。


 嬉しいことだけど、好きな人がいる俺には重荷でしかない。


「断れないのか?」


「流石にワシからはのぉ。リオが直接会って、お断りするのが筋じゃ」


「放置しちゃ駄目なのかよ?」


「それこそお前の立場が悪くなるぞ? 姫が行き遅れてみろ? リオの返事を待っていたからだと言われてしまうわい」


 ああ、なるほど。

 確かに、そんな話になりそうだぜ。だったら早い内に断るべきだな。


「断っても構わないのだろうな?」


「基本は断れんものじゃが、ワシは辺境伯じゃし、王都で評判が悪くなろうと平気じゃわい」


 その言い回しじゃ、確実に評判が悪化するやつじゃん。

 さりとて、ガラムは構わないというのだし、俺は断るべきだな。


「しかし、嬢ちゃんの立場は悪くなるじゃろうな……」


 どうしてエレナの立場が悪くなんだ? 少しも関係ないだろうが?


「どうしてだよ?」


「分からんか? それなら、お前は断る理由をどうするつもりなんじゃ?」


 言われて気付く。

 俺は好きな人がいると断るつもりだったんだ。


 だとすれば、それは誰かと問われてしまう。結果的にエレナの立場が悪くなるだろう。


「どうしよう……?」


「グズグズしとるからじゃ。男ならスパッと嬢ちゃんに求婚せい」


「いや、まだ無理だ! 俺はエレナの夢を叶えていない。俺が告白するのはそれからなんだよ」


 英雄にならなければいけない。それに白馬も用意しなきゃ。

 エレナの打った武器を手に取って、俺は世界を救うしかないっての。


「面倒臭いやつじゃのぉ。なら、嬢ちゃんを妾にするのじゃ。それしか方法はない」


「そんなの絶対に無理だ! 妾を取るってのは王女殿下が男子を産んだあとだろ? エレナがそれまで独身でいるはずがないって」


「そうとも限らんぞ? フェリクス王子がいるのだ。頼み込めば可能じゃろう」


 俺は首を振った。

 エレナを妾にするなんて嫌だ。彼女が一番輝いていなきゃ、俺は我慢ならない。


 後宮に押し込むのではなく、いつも俺の隣で笑っていて欲しいんだ。


「ならば誠心誠意断れ。ワシはそれで良い」


 ガラム的には受けて欲しい話に違いない。だけど、義父は強要することなく、俺の意志を尊重してくれる。


 俺はただ小さく告げることしかできなかった。


 簡単な謝罪の言葉しか。


「すまん……」


本作はネット小説大賞に応募中です!

気に入ってもらえましたら、ブックマークと★評価いただけますと嬉しいです!

どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ