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第124話 想いを乗せて

 リオが消火活動に向かったあと、私の修行が始まりました。


 繋ぎを着てきたので着替えは必要ありません。愛用の大槌を片手に指示を待っているところです。


「うむ、まずは鎚を振ってみなさい。全てはそれからだ」


「分かりました。ドルース師匠様……」


 全身全霊の力で振るだけよ。


 私だって大槌は毎日振ってきたんだもの。ふらつくようなことはないし、ちゃんと振り切れると思う。


 何度か振って見せると、ドルース師匠様は頷きを返してくれます。


「女だと油断した。うむ、良い振りだ。思いのほか努力していたようだな。あのナイフがどうやってできたのか不思議に感じるくらいだ。まさかジョブが鍛冶士ではあるまいな?」


「鍛冶士じゃありません。私が授かったジョブは剣聖なんです」


「剣聖じゃとぅ!?」


 うんまあ、そんな反応になるよね。

 今までも、ずっとそうだったもの。私のジョブを聞いて驚かなかった人はいません。


「どうしてまた鍛冶を……?」


「幼い頃からの夢だったんです。私が打った剣を使って、英雄様が世界を救う。そんな夢が私にはありました。だから鍛冶職人になったのです」


 自分でも変な夢だと思う。だけど、いつまで経っても捨てられない夢でした。


「だけど、その夢は少しばかり変化しています」


「ほう、聞かせてくれ。伯爵令嬢が抱く今の夢について」


 ドルース師匠様は話の続きを促す。

 完全に脱線話でありましたが、現状の夢を知りたいといいます。


 少しばかり恥ずかしい。でも、今の私は異なる夢を持っている。

 嘘偽りない想いを口にするだけだわ。


「リオが納得できる剣を打つことです」


 今の私がやりたいこと。それは明確に定まっている。

 どこにいるのかも分からない英雄様じゃなく、リオが使う剣を作りたいの。


「それは良い夢だな?」


 笑われるかと思いましたが、ドルース師匠様は頷くだけ。私の夢を馬鹿にしたりしませんでした。


「しかし、現状のリオはかなり上達している。あのバスターソードを見てみろ? あれを超えなければ、リオが使う理由などないぞ?」


 壁際に放置された大剣。それはリオが打ち続けているというものでした。


 遠目にも分かる。均一に鍛錬されていること。魂が籠もった剣であることくらいは。


「承知しています。けれど、私はリオが使う剣を作りたい。同情で使ってもらうのではなく、性能で比べて欲しい。そんな風に考えています」


 小さく笑った師匠様。やはり私の夢は少女が見るような現実味のないものであるのかもしれません。


「どうして、そこまで拘る? リオにプレゼントするだけじゃ駄目なのか? ワシはこのバスターソードを超えるなんて難しいと考えておる」


 実際に私も驚いたわ。リオが短期間でこれ程の剣を打つなんて。

 だけど、私にだって矜持があるし、絶対に折れてはいけないラインだってある。


 従って、私はその理由を口にしています。師匠様がどう感じようと気にすることなく。


「リオが好きだから――」


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