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第123話 本気を見せて

 一週間が過ぎていた。

 俺は相変わらず、午前中を修行に費やし、午後は消火活動と忙しい日々を送っている。


 エレナとは炎の祠以来、会っていなかった。


「うむ、良い具合になってきたな? 明日からは研ぎに入ろう」


「マジっすか!?」


 刀身の鍛錬がようやく終わるらしい。

 完全に一体化したミスリルを師匠が認めてくれたのだ。しかし、研ぎは鍛冶職人の腕次第だと聞く。今まで以上に頑張るしかない。


「お昼できたよー!」


 ルミアが俺たちを呼びに降りてきた。

 不機嫌になったかと思えば、あれからは普段通り。俺が飯抜きになるようなことはなかった。


 俺たちが作業を終えて、昼食を取ろうかと言うとき、


「ごめんください!」


 工房の扉が開いた。

 俺と師匠は目を丸くし、ルミアは顔を顰める。


 その理由は訪問者が明らかに客ではなかったからだ。


「エレナ、どうした?」


 工房に現れたのはエレナであった。

 フレイムを習得した彼女は自身の工房に籠もっていると考えていたのに。


「ドルース様、どうか私に鍛冶を教えてください! 何でもします。給料など必要ありません。ただ鍛冶の技術を学びたいのです!」


 どうやらエレナは本格的に鍛冶を学ぼうとしている。

 天才だと語っていた彼女はもういないのだろうか。


「うちで修行だと? 既に弟子はいるのだが……」


「どうかお願いします! フレイムなら四十回は唱えられます! 火力調整もできるようになりました! 雑用からで結構ですので、どうか私に鍛冶を教えてください!」


 流石に師匠は困惑している。


 何しろ小さな工房なのだ。俺と師匠が作業するだけで狭く感じてしまうほどに。三人が一度に作業を始めると、流石に邪魔すぎる。


 難色を示すかと思われたのだが、事態は思わぬ方向に。


「もう私は鉱石を泣かせたくありません」


 それは先日の酷評であった。

 ドルース師匠は折れたエレナのナイフを見て、そう口にしたのだ。


 恐らくエレナは相当に落ち込んだはず。感情がないはずの鉱石が泣いているなんて言われてしまったのだから。


「いつからできる?」


「お父さん!?」


 ルミアは反対である感じだけど、どうやら師匠は受け入れるつもりらしい。


 師匠は真っ直ぐな人だ。つまり真剣な想いをぶつけられたら、真面目に思考してしまう。

 今もエレナの本気に晒され、無茶を承知で承諾しようとしている。


「いつでも大丈夫です! 私は絶対にちゃんとした鍛冶士になりたい。最後まで音を上げないことを誓います」


「それなら午後から始めよう。昼からはリオがいないからな。毎日、午後から夕方まで。言っておくが、ワシは手加減などしない。貴族様であろうと、女であろうとも」


 エレナは頷いていた。

 師匠はマジで厳しい人なんだけど、大丈夫だろうか?


「特に厳しくしてください。私は今まで甘えた人生を過ごしていましたから」


 エレナの本気を見ていた。俺は入れ違いで消火活動に向かうけれど、影ながら応援してるぜ。


 自称天才である彼女が努力したのならと。


 脳裏には仮定の未来が朧気に見えていた。


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