第119話 いざ試練に
エレナが祠へと入ってから、俺はガラムたちに色々と質問を浴びせられていた。
かといって、難しい内容には答えられない。何しろ、俺は上空にいる飛竜の影を確認しただけだからな。
一応は消火活動を始めながら、俺は彼らの質問に答えていく。
「嬢ちゃんが剣聖とか、まことの話か?」
「ああ、それな。エレナは不満らしいが、良いジョブだよな。何しろ折れかけのナイフでも木材を綺麗に斬ってしまうんだ」
「リオはそれを見たのか?」
「ああ、じっくりと。あんなジョブを授かる者こそが英雄になるんだと思った。俺には無理な芸当だったよ」
俺が使えばスライムを叩いただけで折れてしまう。だけど、エレナが使用したのなら、きっとスライムは瞬殺されていただろうな。
「勿体ないのぉ。リオからも説得してやってくれんか?」
「無理だって。エレナはあれで我が強い。夢を諦めたりしねぇよ」
「なるほどの。ワシも若者の夢は叶えてやりたいが、惜しくなってしまうわい。誰もが授かるジョブではないのじゃ。きっと嬢ちゃんは使命を受けておるはずじゃよ」
「そんなもんかね……」
◇ ◇ ◇
私は再び祠のダンジョンへと踏み入っていました。
リオが話を付けてくれたという話ですが、本当かしらね?
ようやく私は本当の意味で鍛冶士として歩んでいけるのかしら?
一応は剣を握り締めている。リオが踏破したあとだけど、何時間か経過していたし、魔物が湧く可能性もあったからです。
まあしかし、懸念した魔物は一匹もおらず、私は祭壇まで辿り着いていました。
「精霊様、どうかお願いします。鍛冶士として恥ずかしくない火属性魔法を授けてくださいまし……」
一心に祈る。
だけど、本当に精霊っているのかしら? まるで想像できなかったりします。
私が祈っていると、どうしてか祭壇が輝き出す。
「うそ!?」
期待したけど、信じてもいない。
しかし、明確に何もない空間が輝いており、火の粉のような光の粒が一つになっていく。
それは徐々に形状を成して、妖精のような形へと変貌を遂げた。
「じゃぁぁん! 僕はイフリート!」
えっと、妖精だよね……?
イフリートって確か上位の精霊だけど、名前が同じってだけかしら?
「貴方、妖精さん?」
「おいおい、妖精だなんて心外だな? 僕が普通の姿で顕現すると、祠が壊れちゃうからね。これは仮の姿。僕は燃えるような愛を語る精霊だよ」
精霊様って割と饒舌に語るのね。リオもこんな会話をしたのかしら?
「リオは大精霊様に話を付けたと言っていたけれど?」
「その通りさ。あの坊やがサラマンダー様に願うから、僕が向かうことになった。面倒くさいったら、ありゃしないね!」
やる気がなさそうな子だわ。
せっかくリオが話を付けてくれたそうだけど、残念ながらハズレみたい。
「貴方はファイアーという魔法を授けられる?」
「ファイアー? どうしてまた火花程度で我慢するんだい? 山々を全焼させたり、湖をお湯にしたりしようよ?」
「そんなの必要ない。私は鍛冶がしたいだけなの」
「へぇ、火事がしたいって物好きだね? なら、バーンフレアを授けよう」
聞いたことがない魔法ね? それって私でも唱えられるものかしら?
「どんな魔法?」
「なぁに、ただの燃焼系爆裂魔法さ!」
あ、駄目だわ。
この妖精って馬鹿なんだ。燃焼系だけで良いっての。爆発させてどうすんのよ?
私は長い息を吐きながら、首を振るのでした。
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