第115話 その結末に思う
「ヒートストーム!」
リオがそう口にした直後、視界が真っ白になりました。
目がおかしくなりそう。直前まで真紅に染まっていた視界が、一瞬にして純白に塗りつぶされていたのです。
「嘘……?」
空一面に拡がった白いものは炎でした。
見たこともない真っ白な炎が空を焼き尽くしています。
「あり得ないよ……」
青空が白く焼かれていく。空に存在した雲や鳥。例外なく焼き爛れてしまった。
無論のこと、空の支配者たる飛竜でさえも……。
私はしばし呆然と空を見上げていました。
上空に撃ち放たれた白き炎。どこまでも拡がったあと、それは消えてなくなったのです。
「消えた……?」
地上の炎はまだ燃えていたというのに。空には燃えるものがなかったからでしょうか。雲さえも燃やしたあと、完全に消失しています。
私が空を眺めていると、バサッと言う音がしました。
何事かと視線を映すと、そこにリオが倒れていたのです。
「ちょっと、リオ!?」
前のめりに倒れ込んだリオ。息はあるようですが、意識がありません。
どうやら、話に聞く魔力切れという状態みたい。私を助けるために無茶をした結果がこの現状なのでしょう。
「大丈夫よね……?」
不安だった私はリオの頭を膝に乗せ、地面へと座り込む。
ドレスが汚れてしまいますけれど、そんなこと気にならない。私の英雄様はちゃんと仕事をしたのだからね。
だったら姫君は英雄様を癒やすだけ。私にできることは多くありませんが、突っ伏したまま寝るよりも、膝枕が良いかと思って。
「リオは無茶ばかりするね……」
聞いてはいないだろうけど、私は話しかけている。
いや、聞いていないからかな。いつもより素直になれた気がします。
「カッコ良かったよ」
正直な感想を口にする。
私はもう絶対に死んだと考えていたんだもの。ギリギリで現れたリオがどんな強者よりも英雄に見えた。
伝説にある勇者様だって、あそこまで格好良く登場できなかったはずだわ。
「私だけの英雄……」
リオの頭を撫でながら、そんな風に言った。
ま、流石に恥ずかしいわね。私だけのなんて。
だけど、みんなの英雄なんて面白くない。私は強欲だし、独り占めしたいわ。
「でもさ、こういうときって……」
英雄譚のお決まりとして、助けられた姫君はお礼にキスをするの。
今の私は明確にお姫様ポジション。英雄様は意識を失っているけれど、間違いなく私を助けてくれたんだ。
「お礼は必要だもんね」
弁明めいたことを言葉にしつつ、私はリオと口づけを交わした。
身体を折って前髪を掻き上げながら、長く唇を重ねている。
四度目の接吻。
それは身も心も溶けるほど、熱い口づけでした。
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