第114話 この生の終わりに
「冗談でしょ……?」
私は一転して絶望していました。
上空を飛ばれては魔法を持っていない私に手出しなどできません。
それどころか飛竜は口を開いて、頭部よりも巨大な火球を生み出していたのですから。
飛竜は指先でも丸太ほどあります。その頭部は私の店舗よりも確実に大きい。巨大な火球が撃ち放たれたのであれば、私は逃げることすら叶わないでしょう。
「リオ……」
もう一度会いたい。何度もキスをしたかった。
英雄になるまで待つよりも、私から告白した方が良かったのかも。
去来するリオとの想い出に心を委ね、私はその時を待った。
撃ち出された火球に、私は静かに目を瞑っていたの。
「さよなら……」
一筋の涙が頬を伝う。
それは離別の涙。私に燻る感情が溢れ出したものに他なりません。
「エレナァアアア!!」
ここで私は声を聞く。
待ち焦がれた人の声。絶望を希望へと転換する愛しき人の声を。
「フレイィィム!!」
絶叫が木霊する。
思わず目を開いた私は見ていました。
視界が真っ赤に染まっている。だけど、それは飛竜が撃ち放った火球の色ではない。
リオが撃ち放ったフレイムの輝き。視界を覆い尽くしたのは新たな真紅の輝きだったのです。
「エレナ、剣を!」
颯爽と現れたリオは私から奪うように長剣を取り、透かさず振り下ろしている。
「風圧っ!!」
私は唖然としていました。
それはそのはず、視界を埋め尽くしていた赤が真っ二つに割れたのです。
次の瞬間には私たちが立つ両隣が炎を上げる。何をどうしたのか、リオは飛竜による火球攻撃を長剣にて斬り裂いてしまったみたい。
「リオォォッ!!」
思わず抱きついてしまう。
彼はどうしてか血まみれだったけど、まるで気にならない。
彼の温もりがあるのなら、汚泥にまみれていたとしても私は彼を離したくなかった。
「エレナ、あれが飛竜だな?」
「うん、急に現れたの……」
頷くリオ。どうしてか上空に手をかざしている。
何をするつもりなのか、リオは遙か上空を飛ぶ飛竜に呟いていました。
「ヒートストーム――」
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