第113話 冗談でしょ?
大きく咆吼した飛竜は旋回を始めました。
明らかに祠を中心としています。恐らく私の姿を確認したからでしょう。
「リオも一人で戦ったんだ」
一人ずつしか入れない祠。逃げ込めたのなら良かったのだけど、残念ながらリオが戻るまで私は入れないの。
まあでも覚悟を決めるには良い状況かもね。
簡単に譲る命などない。私はまだ好きな人と結ばれてもいないのよ。
「私は天才だもの。努力を覚えた天才がどれほどのものか見せてあげる」
心を強く持つ。武器は長剣しかないけれど、私は戦う決意を固めました。
先日のリオに比べたら絶対にマシだもの。無限に湧いた魔物に取り囲まれる状況より、一匹を相手にする方が間違いなく楽だわ。
「よし……」
何とか落ち着いて長剣を抜きました。
物語だと飛竜は火を噴いてきましたが、きっと私は餌だと思われている。だとすれば、炭にしようとはしないことでしょう。
「簡単な相手だと油断してくれたら勝機もあるはずよ」
とにかく時間を稼ぐだけ。リオは祠のダンジョンに行っただけだもの。幾ばくも経過することなく、彼は私の下へと帰ってくる。
「時間くらい稼いで見せるわ!」
旋回のあと、飛竜が急降下を始めました。
こうなると逆に落ち着いています。焦らされるのは性に合っていないの。戦いが始まるのなら、私は開き直るだけよ。
やはり私は餌みたいね。急降下した飛竜は大きな足を私に向けていました。
捕らえて食べるつもりでしょうけれど、私は抵抗させてもらうわ。誇り高きメイフィールド伯爵家の一員なんだもの。
「近寄るなぁぁっ!!」
長剣を振る。剣術を習った経験などありませんけれど、驚くほどスムーズに振り切れていました。
タイミングもバッチリ。飛竜の拡げた足先を私は斬り落としていたのです。
「やったわ!」
私でも戦える。剣聖に期待などしていませんでしたが、やはり誰もが羨むジョブであったらしい。
指先を一つ斬り落としただけですけど、巨大すぎる飛竜の指先なんですから断面はまるで丸太です。
「少しずつ輪切りにして、掴めなくしてやろう」
俄然、やる気が出ていました。
英雄の妻になることを夢見ていた私だけど、今や私こそが勇者じゃないかと思えます。
血気盛んな飛竜に対して、私は一歩も引いていないのですから。
「もう一本!」
右脚にあった指をもう一本斬り落とした。
今度もまたスパンと綺麗に輪切りです。リオに借りた長剣のおかげか、私は対等に渡り合えている。
「これなら、私一人で討伐できるかも?」
そんな軽口を叩いた直後、飛竜が上昇していく。
私に恐れを成したのかな? これで去って行ってくれるのかな?
私の期待も虚しく、飛竜は上空に留まっています。
それどころか大きな口を開いて、巨大な火球を生成していたの。
「冗談でしょ……?」
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