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第112話 祈りを捧げて

 右足がドラゴンの胸へと突き刺さったまま、俺は左足を蹴り上げていた。


 眼前にある頭部目がけて、渾身の蹴りを繰り出している。


「でりゃあああああっ!!」


 身体がよじれてしまうほどの蹴り。確かに顎先へとヒットしたはずだが、俺の蹴り足は勢いよく回転しており、何の感触も残していない。


「空振り!?」


 そう思った刹那、俺は大量の血を浴びることになった。


 まるで水魔法が暴走したかのような水流、息もできないくらいに浴びせられている。


「ぶはっっ!!」


 俺は何とか左足を使って、突き刺さった右足を抜くことに成功。転がるようにして地面へと落ちていた。


「どうなってんだ?」


 よく見ると、ファイアードラゴンの下顎が完全になくなっていた。


 俺の蹴りは下顎から首にかけてを吹っ飛ばしてしまったらしい。


 しばらくの間、ドラゴンは血飛沫を上げていたけれど、それは徐々に勢いを弱めて最後にドラゴンは前のめりに伏した。


「倒した……?」


 どうやら俺は勝利できたみたいだ。

 武器などなかったというのに、モンクさながらの攻撃にてファイアードラゴンを屠っている。


「そういや、浄化だっけ……」


 サラマンダーとの約束。俺がドラゴンの御霊を天に還すことで、お礼としてエレナにファイアーを授けてくれるのだ。


「えっと、女神エルシリア様、どうかこのクソドラゴンの御霊を回収してください。本当に迷惑なんです。死ぬかと思いました」


 こんなものでどうだろうか?


 熱心に祈れと言われても、俺にはこれくらいしか思いつかないっての。教会での修行を始めてすらいない俺は希望を口にするだけだ。


『浄化を習得しました』


 あれ?

 祈れば勝手に回収してくれると考えていたのだが、どうもそれは違ったらしい。


 浄化を授けてくれたってことは俺自身でドラゴンの魂を天に還せと言うことか。


「ま、手間もないし、いいか……」


 さっさと浄化をして地上に戻ろう。

 エレナが心配だ。こんな今もエレナが恐怖に震えているなんて考えたくもないし。


 さらばファイアードラゴン。三度も俺に殺されることがないように、ちゃんと迷わず逝ってくれ。


「浄化!!」


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