第111話 祠の上空
急に周囲が暗くなっていました。
まだ日は高いはずなんだけど、お日様が雲の上へと隠れたのかもしれません。
「えっ……?」
空を見上げた私は見ていました。
暗くなった原因。それはお日様が雲に隠れたわけではなく、巨大な影によって遮られていたからでした。
「なに……あれ……?」
まるで理解できない。空を覆うような影が何であるのかを。
けれど、私は記憶を掘り返す。どこかでそれを見たはずだと。
「邪竜討滅伝……」
それは大好きだった英雄譚。邪竜討滅伝にあった挿絵と同じでした。
空を覆う影は英雄譚で見た飛竜と酷似していたのです。
「邪竜なの……?」
物語ではお姫様が邪竜に攫われていました。英雄様が邪竜を討伐するのですけれど、生憎と私の英雄は炎の祠に籠もったまま。
「戦える……?」
リオから受け取った長剣。しかし、なかなか柄を握ることができない。動揺した私は冷静に事前準備を始めることすらできませんでした。
「リオ……怖いよ……」
剣聖というジョブなんて当てに出来ない。未だかつて一度もその恩恵を受けたことなどないのですから。
「見つからなきゃ大丈夫……」
とりあえず、祠の影に隠れてみる。そうすることで、飛竜がどこかに飛んでいかないかと。
しかし、無駄な足掻きであったみたい。飛竜は大きく咆吼をして、その存在を誇示している。
私の覚悟を促すかのように。
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