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第107話 炎の祠再び

「じゃあ、ここで待っていて欲しい。エレナなら大丈夫だと思うけど、周囲の警戒をしてくれ」


 頷くエレナを確認した俺は祠の結界を解く。かといって、手をかざすだけなので、儀式と呼べるようなものでもない。


 祠の中は以前と変わらないな。感傷的になるほどではなかったけれど、どうしてか懐かしさを覚えている。


「問題は素手なんだよな……」


 エレナに長剣を手渡してしまった俺は子リスと同程度の存在だ。防具も武器も装備していなかった。


「ま、そうそうファイアードラゴンが現れるわけないか」


 ホーンラビット程度なら倒せるはず。ここに湧く魔物は火属性に他ならないが、フレイムを無効化するような魔物はいないと思うし。


 慎重に歩いて行くも、拍子抜けだった。炎を吐く狼っぽい魔物がいただけで、軽くフレイムで焼き殺している。


「あとはサラマンダーに願うだけか」


 一応は手を合わせて、祈りを捧げる。エレナにも加護を与えてくれるようにと。


「早く出てこい、サラマンダー。一刻も早く出てきやがれ……」


 熱心に祈ると、祭壇が輝きを帯びる。

 まるで火の粉のような光の粒。それらが祭壇の中心に凝縮していく。


 それは前回と同じだった。サラマンダーが顕現する前兆であったことだろう。


「わたしを急かすなんてクソみたいな使徒だわね……」


 どうも俺の祈りに不満を持ったらしい。

 妖精の姿をしたサラマンダーはプイッと顔を背けている。


「三つ指ついて待ってろよ。俺は忙しいんだ」


「何の用だ? わたしだって忙しい。おちおち昼寝もできやしない」


 どうやら俺たちは二人共が暇だったらしいな。

 なら、好都合。俺は願望を告げるだけだ。


「実はあとから来るエレナって子にファイアーを授けて欲しいんだ」


「ファイアー? そんなゴミ魔法は無理。わたしは気高き大精霊だからな」


 やっぱ、そうだよな。

 大精霊の加護で一番弱い魔法でもテロリストと間違われてしまうほどだ。サラマンダーが炉の火を熾す程度の魔法を扱うわけがない。


「何とかしろ。可及的速やかに対処しろ」


「無茶を言うなぁ。リオのことは好きだけど、その女の資質が分からないと。ファイアーは下っ端の精霊が授ける魔法だ。わたしの領分じゃないね」


「知ったことか。俺は急いでいる。大精霊なら精霊を脅せ。脅迫してでも授けさせろ」


 俺は要求を突きつけるだけだ。

 絶対にエレナには俺が使う剣を打ってもらわないと。俺たちの愛はそこからしか始まらないのだし。


「まったく。わたしに会いに来たかと思えば……。まあ別に無理難題というわけでもない」


 サラマンダーは機嫌を損ねたかと思えば、肯定的な話をする。


 早くしろ。俺は装備がない状態でこのダンジョンにいるんだ。さっさと来た道を戻らなければ、不安でしょうがないっての。


「ただし、条件がある」


 チッ、食えねぇ大精霊だぜ。

 条件を出してくるだなんて、高尚な存在として恥ずかしくないのか?

 俺の言い付け通り、エレナにファイアーを授けるだけの簡単なお仕事だろうが。


「なんだよ?」


 嘆息しながら要求を聞く。

 しかし、大精霊が求めることを俺ができるとも思えないんだけどな。


 薄い目をして聞いた俺にサラマンダーは告げる。

 予想すらしていない現実を述べるのだった。


「またファイアードラゴンが湧いたから倒してね?」


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