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第106話 夢のままに

 本日はリオとお出かけです。

 動きやすい服装を指示されたんだけど、私はドレスのまま街門を出ていました。


 だって、作業中は仕方ないとして、男女が出歩くときにまで野暮な格好はできないし。


 それに魔物に襲われたとして、私の英雄様が守ってくれるはずだもの。


「馬車じゃなくて良かったのか?」


「この前も徒歩よ? 散歩もできるし良いじゃない?」


 不思議そうな顔をしてリオは私を見つめます。

 そんなにおかしいかしら?


「エレナが良いなら構わないけど……」


 リオは残念がっているみたい。御者に覗かれるのが嫌じゃないのかしら?


 そういや、リオは人目を気にしないのよね。テラスで始めようとしてしまうし。

 やはり義父の影響を受けているのかもしれません。


 ああいや、ガラム閣下は覗く方だったわ。だとしたら、逆にリオは見られることによって興奮するタイプなのかもね。


「辺境伯家、恐ろしいわ……」


「どんな妄想してんだ!?」


 自覚はないのかな。天然の変態かも。


 かといって、明確な変態のモニカよりも絶対にマシ。私の英雄様はマシなのよ……。


「もう見えてきたわ! この炎のおかげで、魔物も現れないし安全ね」


「それを言うなって。悪いけど俺は消火活動しなきゃいけない。先に祠の魔物を見ておこうか?」


 優しいのね。

 この前は魔物なんていなかったけど、帰り道に何か湧いたのは明らか。じゃあ、お言葉に甘えて、先に見てもらおうかな。


「お願いするわ。今日こそは精霊様にファイアーを授けてくれって話してくれる?」


「ああ、分かった。きっと問題ない。あと、この長剣を渡しておくよ。何かあっても剣聖ならなんとかなるはず」


 リオは腰にある長剣を抜いて手渡してくれる。


 あら? これは割と良さそうな剣だわ。


 今になって思う。私の打ったナイフは泣いていたのだと。この澄んだ輝きを見ると、そう思えてならない。


「リオ、私は立派な鍛冶職人になってみせる。リオは最高の英雄になって欲しい」


「そうなれるように頑張るよ。一ヶ月前は想像もできなかったけど、俺にもできるような気がするんだ。何事も努力。王都に来てから、それを痛切に感じている」


 リオは努力家なのね。確かに黒鉄級冒険者から始めたり、鍛冶だって努力してる。


 グレイス侯爵様にも評価されたし、今じゃウェイル辺境伯の後継者だもの。努力なくして成し得ないことよね。


「努力かぁ。私は今まで何でも直ぐにできたのよ。だから、勘違いしてた。天才なんて世の中に一人もいないのかもしれない。それは客観的評価であって、間違っても自称するものではないのでしょうね」


 あの子は天才だと持て囃されたことを真に受けるなんて。

 私は馬鹿な子供だった。そのまま大人になってしまったから、今更に打ちのめされている。


 天才なんて簡単な言葉で人は計れないのね。内側にある人生まで、その言葉は加味しないの。上辺だけの薄っぺらい表現でしかないはずだわ。


「もう天才じゃなくてもいいわ。私は望む姿を手に入れたい」


 改めて思う。夢に見た姿を手に入れたいと。


 白馬に乗って現れた英雄様。私は恋をして、彼を守る剣をプレゼントするの。


 私が打った剣は巨悪を斬り裂いて、英雄様は私にプロポーズする。淑女として、私は頷くだけ。言葉などなくても、彼には分かってもらえるはずなの。


「とりあえず、少しだけ夢に近づいているわ。だから、私は手を伸ばそうと思う。夢を掴み取るためにね……」


 きっとリオが英雄様だ。

 三度もキスしてしまったし、そもそも私は彼のことが好き。


 リオが英雄になるのも、私が鍛冶士として名を馳せるのも、私たちの努力次第だもの。


 きっと夢は手の届く範囲に近づいているはず。


 私が懸命に手を伸ばし続けるのなら。

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