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第103話 明かされた事実に

「このナイフはジョブ[剣聖]の力によって折れないだけだ」


 え? 何それ?

 確かに私は剣聖のジョブを持っているけど、そのせいで切れ味が良いっていうつもり?


「リオぉぉ、そんな冗談は笑えないわ……」


「冗談じゃないって。俺はいつも君の作った武具が壊れたと話してただろ? 実をいうと鎧は街門を出た辺りでバラバラになってしまったし、剣だって抜いた瞬間に折れたりした。現状でエレナの武具を使えるのは剣聖である君しかいない」


 私は唇を噛んだ。

 リオの話が冗談であって欲しいと願っていたから。


 私だって知っているもの。剣聖のジョブを得たあと、詳細を調べてもらったからね。


 確かに私には武具の扱いが大幅に向上するスキルがあった。でも、それのおかげで切れ味が増しているなんて考えたくもなかったの。


「だけど、私は天才……」


 絶対に認めたくない。

 私は女神様に愛された存在だもの。鍛冶の才能だって絶対にあるはず。


「エレナ、俺だって君が作った武具を使いたいよ。だから、ちゃんと学んで欲しい。君の製作に口を出すと契約したのは、俺が学んだことを君に教えたかったからだ」


 私は顔を振った。

 リオは製作に口を挟む約束をしていたけど、それは注文を付けるためだと考えていたのに。拙い私の鍛冶技術を向上させるためだなんて思わなかった。


「鍛冶の修行をして分かったことがある。鍛冶は才能だけじゃできない。日々の積み重ねがなければ良いものなんて作れないよ。基礎があってこそ応用ができる。経験値を積み重ねるのに段階をすっ飛ばすなんて駄目なんだ」


 リオのくせに……。

 私に説教するのね? 確かに私は書物で読んだだけだけど、天才だから基礎なんか必要ないの。


「話は聞かせてもらった。そのナイフを見せてみろ」


 ここで二階から工房主と思われる人が下りてきました。

 彼は折れた刃を私から受け取り、無情にも顔を振るのです。


「これは鉱石が泣いている……」


 胸に突き刺さる一言。愕然とさせられていました。


 店舗を訪れたお客さんが去って行くのと同じ顔。その返答は少しも売れなかった私の武具に対する答えでした。


「嫌よ!!」


 私は背を向けて走り出していました。


 そんなの聞きたくない。私は天才なんだもの。

 鉱石が泣くはずもないわ。ただ溶けて固めただけの鉱石が喋るはずがない。


 走り去る私の頬を意図せず涙が滑り落ちていく。


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