第102話 急な訪問者
「エレナ……?」
どうしてか伯爵令嬢のエレナが裏通りにある小さな工房へと足を運んでいる。
俺に用事があってのことだろうけど、俄には信じられなかった。
エレナから会いに来てくれるなんて。
牢獄へと放り込まれて以来だ。俺が足繁く通う他は彼女と会う方法などなかったというのに。
「リオ、大変だったみたいね? ガラム様に話を聞いて驚いちゃった!」
どうやらエレナは俺が罪に問われようとしていたことを聞いたらしい。
ならば納得だ。俺はエレナを助けたのだし、彼女がお礼に来たのだと推し量っている。
「マジでビビったよ。また断頭台に上がらなきゃならないのかと思った」
「あはは! そんなこと絶対にないから! リオは王都の救世主よ? 私はこの目で見たもの……」
言ってエレナは頬を染める。
えっと、何その反応? 今までとは明確に異なる。エレナはひょっとして俺を男として見てくれているのかもしれない。
「とにかく被害がでなくてよかった。俺はやれることをしただけだけど」
「いやいや、一人で戦ったのよ? もっと自信を持ってよ。リオは世界で一番格好良かったと思ってる。白馬さえあれば完璧!」
ああ、それね。
そういや白馬の値段を調べてなかった。どうもエレナの英雄イメージに白馬は欠かせないみたいだし。
「それで今日はどうしたんだ?」
ここで要件を聞くことにした。
わざわざ足を運んでくれたエレナに言う台詞でもなかったけれど、沈黙を嫌がった結果として、そんな台詞しか口を衝かない。
「会いに来たのよ。リオってば鍛冶の修行を続けるみたいだし、どれくらい成長したのかなって……」
そういうことね。
ちょうど、午前中の作業が終わったところだ。今の成果をエレナに見てもらおうかな。
「師匠、この方は伯爵令嬢のエレナです。俺が打ったバスターソードを見てもらっても良いですか?」
「お、おう、そりゃ構わんが……」
何だか煮え切らない返事だな。とはいえ、師匠が濁した理由は直ぐに察知できていた。
「リオさんのお昼ご飯はありませんので、お二人で食べてきてください!」
どうやらルミアの機嫌が悪いらしい。
たまに彼女は情緒不安定になるけれど、悩み事でも抱えてるのかな? 今度、落ち着いたときにでも悩みを聞いてあげよう。
「じゃあ、俺はエレナに剣を見せたあと、外食してきます。昼からはまた作業に戻りますので……」
「お、おう……」
「ご勝手に!!」
ドズドスと階段を昇っていくルミアを見ていると不安になってしまうな。
せっかく奇跡のエルフだというのに、歩く様子はドワーフそのもの。
やっぱ血は争えないのかもな。
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