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第101話 新しい日々

 俺は鍛冶工房スミスの自室で朝を迎えていた。


 辺境伯の養子になったけれど、俺は鍛冶を途中で投げ出したくなかったんだ。


 ガラムも構わないと言ってくれたし、師匠やルミアも同じ。せめて自分のバスターソードを完成させるまでは辞めるつもりなどない。


「リオ、今日から刃を鍛えていけ。型に流しただけで完成というわけじゃない。元々はインゴットなのだ。叩いて一体化させていかねば、強度が落ちてしまう」


 なるほど、インゴットを作る際に不純物を取り除いていたけれど、それを溶かして固めただけではダメなんだな。


「了解しました。張り切っていきます!」


 二人は俺が無事に戻ったことを喜んでくれたが、スタンピードについては何も聞かなかった。想像できなかっただけかもしれないけど、気を遣ってくれたような気もする。


「ほう、なかなかフレイムの扱いが良くなっているな?」


 炉に火を入れる俺にドルース師匠が言った。

 ま、それね。何百回と撃ったんだ。成長していないはずがないよな。


 溶け出す寸前まで熱されたバスターソード。炉から取り出しては大槌を振り下ろす。


「むむ、先日よりも力強さが増しておるな! いいぞ、もっと打て! 打ち続けろ!」


 やはり十万という魔物を殲滅したからだろうか。

 鎚が異様に軽かった。世に言うレベルアップをしているのかもしれない。更には僧侶から昇格したパラディンの影響も少なからずあるだろう。


「いくぜぇぇ!!」


 とても清々しい気分だ。俺は生きている。

 だけど、それだけじゃない。人生における目標を定めて、熱心に打ち込んでいたんだ。


 鍛冶は生きていることを実感させた。男爵家の五男坊という薄暗い生活にはなかったことなんだ。


 気付けば昼になっている。

 作業に集中しまくって、鎚を振る以外に何も考えていなかったと振り返っていた。


「すっげぇ、集中力だったな……」


 軽く感じる大槌。心地よい手応え。耳に届く金属音を確かに覚えている。


「リオ、いい音だった。先ほどの感覚を忘れるな? あれだけの音を出せる鍛冶士はなかなかおらんだろう」


「ありがとうございます! 絶対に忘れません!」


 師匠も褒めてくれた。

 今の感覚が正しい鍛冶。五感を介して伝わった全てを忘れてはいけない。


 お昼にしようかと師匠がいうので、俺は名残惜しそうに大槌を置く。

 残念だけど、今日はここまでだ。何しろ北街道の消火活動を頼まれている。それも王陛下直々に。


 ま、それで食卓へと向かうつもりだった。意外な訪問者が現れなければ……。


「すみません! ここにリオという男の子がいると思うのですが」


 店舗の扉を開いて現れたのは淡い空色の髪をした女性だった。


 加えて、彼女は俺に用事があるとのこと。


 俺は目を泳がせている。なぜなら、俺から会いに行くべき人だったからだ。


「エレナ?――」


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