表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/37

サイラス視点

 

 セレーナが出ていってからもう三年が経つ。


 母からはセレーナを探すなと言われたが、私はどうしても我慢できず密かに探し続けていた。セレーナは金の髪に水色の瞳と目立つ容姿なので、多少時間が経っていても探せばすぐに見つかるだろうと思っていたのに、いつまで経っても見つけることができなかった。


 父が進めていた魔法薬事業の違約金やらの支払いで我が家の財政は厳しいものになっているし、それに以前いた使用人をほとんど解雇し新しい使用人を雇ったばかりなので今は家を維持するので精一杯だ。


 それに私は王太子殿下であるハインツ様の側近でもあるので、自分の足で探しに行くことは難しい。


 一体セレーナはどこに行ってしまったのだろうか。もしかしたらもうこの国にはいないのかもしれない。探し出して直接謝りたいが今の状況がそれを許してはくれない。


 今の私にできることは目の前にある仕事をこなすことだけだった。




 ◇◇◇




 セレーナが出ていってしまった後、私はすぐに使用人達に聞き取りを行った。するとほとんどの使用人がセレーナがいなくなったことを知ると喜んだ。


 なぜ喜ぶのかと尋ねると皆が同じことを言った。


『侯爵様はあの女がお嫌いだったから』と。



 セレーナの手紙に書いてあった通りだった。全ては私の態度が招いたこと。それを改めて突き付けられた私は自分の愚かさを後悔することしかできなかった。


 ただそれでも使用人達はカリスト侯爵夫人であったセレーナを不当に扱ったのだから罰さなければならない。私は関わった使用人達に退職金は払ったが、紹介状は渡すことなく解雇した。退職金を払ったのはせめてもの償いだ。だが紹介状がなければ次の仕事を見つけることは容易ではないだろう。それを使用人達への罰としたのだ。


 しかし家令だけは違う。


 家令は私がセレーナを抱けない理由を父に伝えており、家令からの報告を聞いた父はまだ子を生む予定がないのであれば、カリスト侯爵家のために働いてもらわなければと考えたそうだ。


 その結果セレーナ一人に大量の仕事を押し付けることになったのだ。


 父は私の知らない間に少しずつ販路を拡大していたようで、セレーナの負担は大きなものになっていた。あまり屋敷にいない私に代わり、屋敷の管理を家令に全て任せたのが間違いだった。


 家令は父の代から屋敷で働いていたからか、私が侯爵となってからも家令の中での優先順位は私より父の方が上だったようだ。家令だけは退職金を払わずに即解雇した。


 後から調べて分かったことだが、家令は侯爵夫人に割り当てられた予算を横領していた。私にはセレーナが使ったと報告してきていたが、調べると横領していることが簡単に分かった。


 証拠を隠そうともしなかったのは私が気づくはずないという自信があったのだろう。確かにその通りで、今回のことがなければいつまでも気づかなかったかもしれない。


 ここでもまた自分の愚かさを目の当たりにすることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ