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「お願いします!頭を上げてください!」
「…理由が分からない以上俺は謝ることしか」
「っ、好きなんです!」
「え…」
「わ、私はシェイン先生のことを好きになってしまったんです!でも私から好かれても迷惑でしかないでしょう?それならこの想いを隠したまま今の関係を続けていきたいとずるいことを考えてしまったんです。だからバチが当たったのかこの想いを隠すことが日に日に難しくなってきちゃって…!そしたらもう迷惑をかけないためにはシェイン先生と関わらないようにしなくちゃと思ってあんな態度を取ってしまったんです!シェイン先生のせいではないんです!私が、私があなたを好きになってしまったばかりに…っ!シェ、シェイン先生!?」
突然私はシェイン先生に抱きしめられた。これは一体どうなっているのか混乱していると頭の上から声が聞こえてきた。
「…今の話は本当か?」
どこか不安そうなそれでいて懇願するようなシェイン先生の声に戸惑ってしまう。
(どうしてそんな声なの?シェイン先生は今一体どんな顔をしているの?)
「セレーナ…」
「ほ、本当です!でも迷惑でしょうからさっきのは聞かなかったことにしてください!私もこれ以上シェイン先生に迷惑をかけたくありません。…ただ心の中であなたを想うことだけは許してもらえませんか?」
「…」
「ダメ、ですか…?」
私が問いかけるとさらに強く抱きしめられた。
「シェ、シェイン先生?」
「シェイン」
「え?」
「シェインって呼んで欲しい。好きな女性からは名前で呼ばれたい」
「それって…」
「セレーナが好きだ」
「っ!」
心臓が止まるかと思うほどの衝撃だった。まさか私のことを好きだと言ってくれる人がいるなんて思わなかったし、その相手が自分の好きな人だなんて信じられない。
シェイン先生は誠実で素敵な人だ。
前世では人並みに恋愛は経験してきたはずの私だが、記憶を思い出したからといって今までの心の傷が癒えたわけではないことを今実感している。本当にシェイン先生の言葉を信じてもいいのだろうか。
「でも私は…」
「セレーナが辛い想いをしてきたことは知っている。だからすぐに俺の言葉を信じられないということも分かっているつもりだ」
「…」
「だけど俺にチャンスをくれないか?」
「チャンス…?」
「ああ。俺のセレーナを想う気持ちに嘘偽りがないことを証明させてくれ」
そう言って抱きしめられていた身体が離され、シェイン先生の顔と向き合う。シェイン先生の目はとても真剣な目をしていた。
「っ…」
私は息を飲んだ。シェイン先生のこんな表情を見るのは初めてで、それだけで先ほどの言葉は本当なのではと思ってしまいそうだ。しかしまだどこか完全に信じきれない自分がいる。それならシェイン先生の申し出を受けてみてもいいのだろうか。
(そうすればまだしばらくは近くにいられるよね?)
ずるい考えかもしれないが私だって誰かに必要とされたいし愛されたいのだ。
「…分かりました」
「っ!本当か?」
「はい」
「ありがとう!セレーナにこの想いを信じてもらえるように頑張るから!」
「お、お手柔らかにお願いします…」
それからは毎日シェイン先生と食事をしたり出掛けたりと、仕事以外でも一緒に過ごすようになった。
そして必ず愛を伝えてくれるのだ。
そんな彼の想いを信じて受け入れられるようになるまでに、そう時間がかからなかったのは当然の結果だろう。