シェイン視点
それから数日後、働くにあたり詳しい条件などを話し合うために彼女が学園へとやって来たのだが、その話し合いの場でとても驚かされることがあった。
「…詳しい条件はこんなところだが何か質問はあるかい?」
「いえ大丈夫です。…ただ一つだけお伝えしたいことがあります」
「ん?なんだい?」
「雇っていただくにあたり今の偽りの姿では信用を得られないなと思いました。なので今ここで本来の姿に戻ります」
「はっ?なにを」
「では失礼して…」
そう言って彼女は鞄から小瓶を取り出し、一気に飲み干したのだ。
「ちょっと…!」
止める間も無いあっという間の出来事であった。一体彼女は何を飲んだのだろうかと思っていると彼女の身体に変化が現れた。
「なっ!?」
なんと彼女の髪と瞳の色が変化したのだ。茶色の髪がプラチナブロンドに、茶色の瞳が水色へと変わったのだ。
「本来はこの色なのですが、今まではこの色で生活するには不都合が多かったので魔法薬で色を変えていました。でもこれからは本来の姿に戻りしっかりと勤めていきたいと思います!」
「…」
(美しい髪と瞳だ。…確かにこの色なら隠していた方がリスクが少ないだろう。それなのに私からの信頼を得るためにリスクを負ってまで本来の姿を見せてくれたのか。とても誠実な女性だな)
「あの…?」
「あ、ああ!すまない。少し驚いてしまって」
「いえ!私も突然こんなことをしてすみませんでした」
「いや君の覚悟はよく分かったよ。これからよろしく頼む」
「は、はいっ!よろしくお願いします!」
「そうだ。ちゃんとした自己紹介がまだだったな。以前も伝えたが俺はこの学園で剣の教師をしているシェイン・アレスだ」
「え…、アレスって…」
「ああ。一応この国の第三王子でもあるが、そんなことは気にせず気さくに話しかけてくれ」
「え、ええっーー!?」
俺も先ほどのことはとても驚いたのでちょっとした仕返しのつもりで彼女を驚かせようと思ったのだが、想像していたより驚かせてしまった。
あの後彼女にはちゃんと謝罪したのだが、それすらも驚かせることになってしまった。せっかく同じ職場で働くのだから仲良くなりたいし、いつかは彼女の特別になりたいと思っている自分がいるが、出だしを失敗してしまったのでこれから挽回していきたい。
そのためにはどうすればいいかと悩む日々が始まろうとしていた。