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11.負の感情

side.クロヴィス


ーーーー堕ちればいいのに。


ああ、聞こえる。


ーーーーみんな、みんな、堕ちてしまえばいいのに。


とても心地の良い負の感情。

他の奴らは煩わしいだけなのに、あなたの声だけが、あなたの感情だけが俺の心をざわめかせる。

俺のフィオナ。

負の感情を纏わせる君は誰よりも美しい。ただ一つ不満があるとすればその感情を俺以外の人間に向けているということ。

好意も悪意も全て、君が向けるべきは俺だけでなくてはいけない。でも、仕方がない。君はまだ微睡の中にいるから。

俺は君のそばで君が微睡から目覚めるのをゆっくりと待つよ。だから目覚めたその時は俺の元へ堕ちておいで。

俺のフィオナ。


◇◇◇


周囲の視線が鬱陶しい。これが伯爵家と子爵家の違いなのだろうか。

昨日のカフェテリアでの一件はすでに多くの人の目に触れ、耳に入っているだろう。脚色されて。けれど、非があるのは私だけになっていた。

私はなんの理由もなく義弟に手をあげる野蛮な女だと噂されている。その一方で義弟に婚約者を盗られた女として嘲笑の的にもなっている。

浮気をしたアランのことや、私からアランを奪おうとしている義弟のことは誰も口にしない。アランが伯爵家だから。そしてそんなアランにランが気に入られているから。子爵家を敵に回しても問題はない。でも、伯爵家を敵に回すのは問題があるということなんでしょうね。

「むかつくはね。人の不幸は蜜の味ってやつ?貴族のくせに、高貴な血を引いているって普段は自慢しているくせに心が卑しいのよ。フィオナもフィオナよっ!どうして黙っているのよ」

眉間に皺を寄せて鬼の形相という比喩がぴったりなリリーがいるのは私にとって唯一の救いね。

「反論したところで意味がないからよ。それどころか自分の立場を悪くするだけ。それに、否定をするほど虚飾で塗り固められた噂は信憑性を増すものよ」

まぁ、誰も真実なんてどうでも良いでしょうけど。

欲しいのは真実なんかじゃない。面白さだもの。

リリーの言う通り。心の貧しい人たちよね。

でも、こういう状況にアランも義弟も堕ちればいいと思ってカフェテリアで口論した私も似たようなものね。失敗してしまったけど。

「悔しくないの?」

「・・・・・悔しい?」

腹は立つ。どうして私だけ?っていう感情もある。でも、悔しいのかと言われると分からない。自分を優先されないのはいつものこと。侮蔑も屈辱も日常的に受けてきた。そのことに悔しいと思ったことはない。

悔しいとはどういう感情なんだろう?

分からない。分からないから抱いても気づいていないのかも。

「さぁ、よく分からないわ」

「・・・・・フィオナは、フィオナの目には誰も映っていないんだね」

「えっ?」

「だって、そうでしょう?だから何をされても、何を言われても、どうでもいいって思うんじゃないの?」

「どうでもいいと思ったことはないわ」

「そう?少なくとも私の目にはそう映るけど。フィオナってなんだか変だよね。理不尽だって怒る割には向けられる負の感情に頓着してない」

「そう、かな?」

「そうだよ」

随分と断言するのね。付き合いが長い分、私でも気づかない私自身のことが見えているのかも。だからリリーが言うのならきっとそうなんだろう。

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