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年下の女の子。

 おいあんた!俺だよ!そう声を掛けてきた奴は全く見覚えのない女子だった。


 女の子なのに、「俺」はどうなんだというのはおいといて、しゃべり方も大分、おっさん臭いというか、およそ女子っぽくない黒髪ベリーショートの女の子に放課後渡り廊下ですれ違いざまに声を掛けられた。

「ほら、一年前、湯上山で会った俺だってば、無事だったんだな、ああ、そういえば、名前聞いてなかったもんな…」

「いや、人違いだろ?俺あんたと会ったことないし…」

「…?忘れたのか…?」

 こういうナンパの仕方あったっけ…と思いつつ、ナンパするタイプにも見えないけど。俺だよ!とか興奮気味に話しかけてくる。

「いや、だれ…?」

 こわ…という言葉を飲み込みつつ、全校集会でも見た覚えのない子だし、もし見てたら絶対忘れないタイプの子だもんな…。俺より頭一つ分低いが、黒髪のベリーショートに鋭い目つき、何より話し方がおよそ女子っぽくないし、女子人気ありそうな女の子っていうか、俺より女子からバレンタインデーにチョコとか、お手紙とかもらうタイプっぽいな…。


 話を聞いてみると、以前湯上山で俺とそっくりの奴と一緒に遭難して、無事に救助されたけど、そこにいたはずの俺のそっくりさんは救助の時に居なくなってて、すごく心配して探したんだけど、名前も聞いてなくて、椎名中学の1年の陸上をしてる奴にも同じ特徴の人物は居なくて、嘘を教えられたんだと思ってた、あるいは、へんな夢を見たせいで、ひょっとしたら人間じゃないと思っていたんだそうだ。


「つまり、そいつと俺が似てたってことか?」

「似てたっていうか、そのまんまっていうか…そんなそっくりさん居るのかな…、でも確かに一年前に俺が小学校6年の時に、一緒に遭難したんだよ、いや、夢だったのかもしれないけど、いやそんな馬鹿な…」

「俺も覚えてるけど、あの遭難事件」

「えらい騒ぎになったもんな…」

 名前も知らない黒髪ベリーショートの女の子はぶつぶつと憎々し気に呟いた、詳しくは知らないけど、連日ニュースになってたし、隣町は騒がしくて、お堂饅頭とか、街の観光名所になってたし…。なんか、いろいろ大変だったんだろうな…。

「不思議な話があるもんだなぁ…」

「夢でも見てたのかな…それにしては生々しいというか…どうみたってお前だったぞ…」

 眉間に皺を寄せ、俺を睨みつけ上から下までジロジロと見ている。感じ悪!…ん?湯上山といえば、そうだ…。

「俺さ、来週、その、ゆがみ山に陸上部の合宿で行くんだけど…まさかな…」

「まさか…」

 およそ、現実的じゃないし、もしかして、俺が来週、小学校6年生のこいつと一緒に湯上山で遭難するのか…?

「ちょっと面白そうだけど、さすがに、ないだろ、…なぁ?」

「だ、だよなぁ!」

 人間ってのは自分に処理しきれない出来事が起こると、笑っちゃうっていうけど、今がそういう時だったんだろう、何がおかしいのか判らなかったが、渡り廊下の真ん中で初対面の二人でワハハと夏空に空虚に笑った。

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