1章7話 戦いの中で
休日なので今日は二回投稿です!
気が向けば明日も二回投稿するかもしれません。
ポイントの総計は三千弱あった。
たかだか十体ほどのオークで、と一瞬だけ思ったけど違う。ポイント増加とレベルアップがかなり効いているようだ。レベルが十になっており本来ならばジョブにつける状態なのだが……無論、今はそんな時間は無い。
安全な場所に着いたら、する事だ。
まあ、そジョブどうこうは後回しでいいだろう。
今は……二人を優先しないとな。
ポイントをタップしてスキルを表示させた。
お金でもスキルを買えるみたいだけど、ポイントとかいうチートを持つ俺には関係がない。なんなら、お金でポイントも買えるしな。……割に合わないというか今は勿体なく思えてしまう。
とりあえず千五百も使うことにはなったが、スキル『マップ』を獲得した。もちろん、スキルレベルを最高まで上げておく。
ただ今のでポイントからスキルを獲得した時の駄目なところを一つだけ見つけた。スキルの説明がない、まぁ、取った後で気が付いたが特に問題は無いか。異次元流通から説明を見ればいいだけだしな。でも、その一手間が若干、面倒くさい。
「少し気持ち悪いな……」
「ん? お兄ちゃん、どうかしたの?」
声に出てしまったらしく心配されてしまった。
一応「なんでもない」と返したが気分が悪いのには変わらない。マップを使った瞬間に視界が二重になったのだ。
背景が周りの情景で周囲の情報が地図として書かれている。例えば敵は赤い点、仲間は青い点という感じだ。ただ関心がないものなら書かれないらしい。
他にも検索欄が上にあるから、そこにオークと入れればオークのいる場所が緑の点がうたれる。とてもわかりやすい分、オーク以外も映るようにしてしまうと点が多くて目で追いづらくなってしまう。そこら辺は慣れなていくしかないか。
最初こそ俺が簡単に倒せるオークの、それでいて数が少ない場所を選ぶのがいいだろう。……それにまだ調理室は取られていないようだし、拠点を置くならそこがいいか。
それに乾パンとかも回収できるなら、と思ったがそれは要らないよな。食料に関しては買えばいい、買えば。マップを説明通りに小さくさせて視界の端っこに追いやっておく。想像するだけでいいから楽でいいな。
「図書室に向かうぞ」
俺は二人にそう声掛け、図書室に向かう。
敵がいない場所を通ったため、少し時間がかかったが無事到着できた。 戦っても良かったが他の人達に見つかるのが厄介だ。現にオークの場所に女の子がいる所とかもあったし。
……まぁ、助けに行くつもりはないかな。可愛かろうが不細工だろうが唯がいればそれでいい。
すごく鼻息の荒い豚の鳴き声が聞こえる。何度聞いてもこの嫌悪感は拭えないな。
「中に三体いる。俺が怪我をさせて動けなくさせるから、二人が一体ずつトドメをさせ」
まずは経験値でステータスが得られるかの実験だ。そうなってくると二人に汚い豚を殺させないといけなくなってくる。穢れて欲しくはないがどうせ通る道だからな。本当はしたくないが……こんな世界ではステータスを持っていないと自衛ができない。
だから、無理にでもやってもらう。
仮に試しに、だとしてもだ。
「……わかりました」
菜沙は納得したようだ。
唯もそれを聞いて頷く。そんな二人の頭を優しく撫でておいた。
「固くならなくていい。一緒にいられる間は守ってやるから」
俺の容姿はそこまでイケメンではない。だからといって、デブでブスということもないはずだ。いや、引きこもり生活のせいで多少はデブってしまったか。まぁ、どちらにせよ、イケメンでは決してないな。
だから、菜沙が顔を赤らめる、なんてラノベ展開もないようだ。少し悲しいけど、それは俺がカッコよく無いのが悪いよな。実際、元の生活ならば相容れぬ存在だっただろうし。
「んぐっ」
「いっぱい守ってね!」
可愛いが……痛い。これが幸せの痛みか。
ある意味、唯の突撃はオークのそれより重い気がする。
静かに扉を開けた。
オークは名前だけに奥の方にいるようだ。
俺は駆けて三体との距離を詰める。
足を切った。行動ができないように。
それを見て二人が入ってきた瞬間、オークが下卑た笑みを浮かべる。酷く汚い、二人に向けられるべきではない視線。アイツを思い出すようなクソみたいな笑みだ。
「ブヒャァァァ」
無意識に三体の腕を切り落としていた。
かなり血が出てしまっている。時間次第でもう命は尽きてしまうだろうな。
「二人ともコイツらの首を切れ」
俺は二人に命令をして、手本のように一体のかオークの首を掻っ切った。
それからすぐに二体のオークの声が消える。
「……お疲れ様」
少しだけ居た堪れなさを感じる。
強くなるためとは分かっていても人型の生物を殺すことに嫌悪感を抱くのは普通だ。逆に何も感じない俺の方が何か壊れているのかもしれない。自己満足のためだとわかっていながら、そんな言葉を表に出してしまった。酷い自己嫌悪に襲われる。
「……強くなるためですから」
悲しそうに笑う菜沙。
「お兄ちゃんのためだから」
唯はブレないがそれがとても嬉しい。
だからこそ、俺は唯を愛しているんだ。
「勝手に慣れていくと思います。それで本命のステータスを手に入れましたがどうしましょうか」
菜沙はそう言って話を変えようとしてくれた。
本当に優しい子だ。……今はその優しさに甘えさせてもらおう。
「先に安全そうな調理室に行こう。詳しい説明はそこに着いてからだ。確か……二階だったよな」
分かっていても確認のために聞く。
二人が頷いたのを見てオークを回収する。後、手に取れるだけの本を倉庫に入れた。中古品であろうと高く売れる可能性はあるからな。うちの中学校の刻印が無ければもっと良かったような気もするが気にしたら負けか。着火する時に燃やす材料にもなりそうだし他の使い道はある。
そのまま俺たちは図書室を後にする。
先にマップを手に入れて正解だった。最初に現れた魔物達は予兆だったようで今はオークの数が増え、俺でさえも死ぬかもしれない数になっている。
傍目でマップを確認しながら最短距離を脳内で描いていく。途中で魔物がいるようなら道から逸れればいいだけだ。数が多いとは言っても蜘蛛の目のように抜け道がない訳では無い。避けながらマップのオークの名前の隣にあるレベルも頭に入れておく。
全てでは無いが何体かのレベルはかなり高い。最初こそ敵が弱かったが、もう強い敵が現れ始めているようだ。敵も人を殺せばレベルが上がるのか、それとも同士討ち、いや種族の違いから戦ったからとかか。どちらにせよ、そいつらと戦って二人を守れる自信がない。
例えばだがオークソルジャー、レベル三十四とかは普通に無理だろう。今のステータスでは頑張ったところで相討ちが限界だな。俺のステータスの五倍はあるし。
なんとか調理室の目の前に来てから扉を開ける。鍵は……かかっていないようだ。まぁ、すぐ近くに職員室もあるので、鍵を取りに行ってもいいのだが。それでも手間が省けた。
三人で中に入り鍵をかける。
そのままステータスを確認した。ポイントはまだ残っている。今、俺が欲しいと思っているスキルが果たしてあるのだろうか。……分からないが適当に検索に引っかかりそうな単語を入れてみた。
……これが該当しそうだ。
千使いスキル『拠点』を手に入れる。使い方は説明で軽く見たから何とかなるだろう。すぐにスキルレベルを10にして使用する。
体から力が抜ける感覚……頭痛が酷くなってきた。
そして明確に調理室が白い光で包まれ始めてくる。
……プツンと何かが切れた音がした。
何か柔らかな感覚がする。ああ、そうだ。俺の足が立つことをやめてしまったんだ。
その感触に身を委ねながら俺は瞳を閉じた。
次回は今日の十八時の予定です。
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