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1章4話 変わらない校内

 鋼の剣をまた腰に戻し、学校の門まで歩く。

 仕舞った方が怪しまれないんだろうけど、それだと身を守る術が無くなるからな。この場所は違う意味で地獄だ。少しでも気を抜けば命は無いかもしれない。


 門前にプレハブ小屋みたいな場所があるんだけど……さすがに警備をしている人はもういないようだ。中から光が漏れているということは少し前まで居たってことか。となると、勝手に逃げ出したって感じだな。どこかへ行くだけなら慌てずに規則通りに鍵をかけて電気を消すだろうし。


 まあ、人なんてそんなものだ。

 愛だとか仕事だとか講釈たれる奴ほどこの程度でしかない。いいだけ説教してきた癖に我が身惜しさかよ、気持ちが悪いな。プライドがとか言っていたのにアホらしい。


 まぁ、別におかしいとは思わないさ。……ただ、良いだけ説教垂れていた監視員がこれだと笑えてしまう。


 だが……どうせなら開いて逃げて欲しかったな。

 警備員は門から出たのか、学校内にいるのか分からないがご丁寧に門の鍵はしまったままだ。


 門を無理やり壊すのは……出来るが面倒だし最悪は拠点にするつもりだから無しだな。堀の無い城みたいに拠点としての機能が無くなってしまう。となれば、門をよじ登って中に入るか。


 結果は高さ的にはできた。でも門の上につく不審者対策の鉄線で傷がついた。


 HPの影響は、ダメージが十入っただけ。まだ範囲内だし、全然大丈夫だ。ステータスを手に入れたおかげか痛みとかも薄いし、ありがたいことだらけだな。


 ってか、俺でこれならオークも無理に入ろうとしたらできるんじゃないか。


 まぁ、いいや。俺には関係が無い。


「スーハースーハー」


 懐かしい空気だ。

 学生という本分を捨てて……三ヶ月は経つのか。


 本当は来たくもなかったが、非常事態だ。

 会ってしまっても無視すればいいだろう。


 ご来賓用の玄関に向かう。

 ここで扉を壊して入っても意味は無いからな。出来る限りは問題を起こさずに妹を連れ出したい。インターホンを押して中の教師に顔を合わせる。


「はい……って、え……」

「金倉洋平です、家庭の事情で妹と話をしたいのですが……」


 わざとらしく下を向きながら、インターホンの画面に向かう。相手の表情を見ることはできないが、すぐに鍵が開いたということは中に入っていいのだろう。


 靴を置いた振りをして倉庫に入れた。

 礼儀とか言われるのでスリッパを履いて中へ上がる。このまま妹の所へ向かっても、授業中の教師が許すわけもない。


 最悪、汚名をかぶってでもいいのなら、武器を振りかざして連れていく、なんて手もあるのだが。


 二階にある職員室に向かう。

 よく友人とここに来ていたな。今は転校して話もしていないが。


 コンコンコン、これがここの礼儀だ。

 二回のノックはトイレだとか意味不明なことを言われていたな。ネタだとしても職員室ぐらい二回でいいような気がする。どうせ、この中にいるヤツらは排泄物以下のゴミ野郎ばかりなんだし。


「……お久しぶりですね」

「小夜先生……そうですね」


 中に入った俺に声をかけたのは元担任だった。

 小早川小夜、俺の中学三年生の時の担任でまだ二十六歳だったはずだ。俺たちが初めての担任だとも言っていた。そしてこの人は……俺の大嫌いな人でもある。


「それで高校にも行かないで、こっちになんのようかな」


 少しトゲがあるな、教師が言うような言葉ではない。私怨を持ち出すか、教師としての自覚が未だに無いようだ。


「唯と話がしたいだけです。親のことが絡むので、できれば二人がいいのですが」


 見つめただけなのに、小夜先生は俯く。

 そうか、恐怖を抱いているんだ。なんで気が付かなかったんだろうか。俺の今の姿を見てしまったら武器どころの話ではないだろうに。


「……その血まみれの姿でそんなことが言えるんですか」


 小夜先生はまだなんとかなるとばかりに、俺をじーっと見つめてくる。


 めんどくさい、なんで殺人疑惑をかけられないといけないのだろうか。


「はぁ、外見ましたか? もしくはテレビとかを。なんか変な化け物が現れ始めたんですよ。そいつを殺して唯を助けに来ただけです」


 小夜先生はなにも言わない。

 今更だがなんで礼儀を通さないといけないのだろうか。小夜先生が、ではないが教師は俺を助けはしなかった。教師としての礼儀を通さない奴に、生徒として礼儀を通させてくるのは横暴だ。


「そんな事を信じるとでも」

「別に信じなくてもいいですよ。ただ小夜先生も分かっている通り俺からしたら……テメェら全員が信用できない輩だからな。無理にでも唯は返してもらうぞ」

「な、何を」


 剣を抜いて首に突きつけてやる。

 他の教師達も動こうとし始めたがファイアーボールを見せてやったら体を止めた。そりゃあそうだよなぁ、こんなのは元の世界なら見る事が無かったものだ。


「これ以上、無駄話をする気はありませんので」


 職員室にいる教師が電話をかけていたような気がするが、どうでもいい。どうせ、その助けの連絡も届きはしないんだ。


 殺そうとしてくるなら勝手にそうすればいいし、そうなった場合はとことんやってやろう。コイツらを爆発四散させるのは面白そうだな。小夜先生以外は殺してしまっても問題は無い。


 とはいえ、嫌いでも小夜先生には聞きたいことがある分だけ生きていてもらわないといけないな。


 まぁ、死んでも構わないけどね。

 俺が近くにいないなら勝手に死んでくれても構わない。何だかんだで生き抜きそうな人ではあるけども……所詮は人、いつかは勝手に死んでしまうだろ。


 だが、どうせ死ぬのなら長く苦しんで死んでもらいたいものだ。


 三の二、そこが妹である唯のクラスである。

 近付くにつれ恐怖を覚える。あの時の楽しかった思い出と、辛かったトラウマが一瞬だけ脳裏に過った。だが、今は関係が無い。トラウマと妹、どちらが大切か比べるまでもないからか。


「お兄ちゃん?」


 やはり一番に気付いたのは唯だった。

 後ろの窓から顔を覗かせただけだというのにいきなり振り向いて手を振ってくる。これがブラコン、もとい愛の力というものだろう。多分、俺も同じ状況なら気付けただろうが。


「ああ、迎えに来た。ちょっと外へ出なければいけない理由が出来たからな」


 唯の手を取る。それのせいか、大きなツインテールが揺れた。


 従順、そんなものを求めやしないが、唯は俺を信じてくれるようだ。なにも言わずに立ち上がってくれた。まぁ、引きこもりの俺が外へ出ている時点で何かを察したんだろう。……ちょっとだけ嬉しそうなのはよく分からないけど。


「早く行こう」


 そんな言葉を俺が漏らした時だった。


「なにをやってるんですか!」


 若い男の教師が俺の手ではなく、唯のもう片方の手をとった。俺の大切な唯の左手を勝手に触って引っ張ろうとしている。……触れるだけでも極刑に値するというのにこの屑は……ッ!


「……消えろ」


 最大限の威嚇だ。

 それ以上は今は必要が無い。それ以上を求める時はコイツらを殺す時だけだ。本当は四肢を切り落として惨殺してやりたいが我慢しろ。私怨でここに来たわけではないからな。


「消えるべきは貴方ではありませんか!」

「ご高説ありがとうございます。だが、テメェの口から教師地味た話はされたくねぇな。虫唾が走るし吐き気だってしてくる。ここにいるヤツらの目の前でアレをバラしてやってもいいんだぞ」


 まあ、職業なんて意味を持たなくなるわけだが。

 俺は知っている。コイツは、いや、コイツらは複数人の女生徒に手を出している糞ロリコン野郎だってことを。


 成績を盾に自分勝手な行動を取っている教師の風上にも置けない屑だってことを証拠と共にな。


「な、何を言うつもりで」


 奴はそれ以上の言葉を紡げなかった。

 だって、奴の頭は既に無くなっていたのだから。その後ろからニタリと笑みを零す豚の化け物。本当は嫌な気持ちをするんだろうが……少しだけ嬉しくなった。あの嫌いな講釈たれが惨殺されたんだからな。

次回は明日の八時の予定です。

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