1章2話 止まない笑み
大通りを歩いているせいかは分からないが、向かっている最中でもオークに絡まれてる人を多く見つけた。それと同じ数だけ人の死骸も見つけられるんだ。本当に世界は終わってしまったんだろう。
至る所でオークに犯された、もしくは絶賛やられている最中の女性とかも見かけるし。それを見ると助けるべきか悩む……いや、助けるしかないか。
何人かは見捨てたが、さすがに最中のオークは見逃せないよな。
それに、寝覚めが悪いのは好きじゃない。
気を引くのなら……これでいいか。
一応、犯されそうな人から先に助けないとな。だから、襲おうとしているオークを先に対処する。その後に行為真っ最中のオークに、だ。
計七体に石ころを投げてみた。
大丈夫、全部当たった。そりゃ怒るよな。
頭に石を当てられたら誰だって怒るわ。
足の速さ自体は先の戦いで遅いとわかっている。
簡単に逃げることが出来るのなら……人目のつかないところで殺したいな。
ぶっちゃけ、寄生虫はいらない。
妹が寄生してくるのなら、全然構わないが。というか、ノープロブレム、アイツなら依存してもらいたい。比喩的な話じゃなく本当の意味で……俺がいないと寂しがる程には依存して欲しいな。
とりあえず九体、三体は俺よりも女を選んだようだ。それに関してはどうする気もない、力を見せないようにしたいからな。ある程度の速度を出しながら九体を連れてきて。
家の影まできた。追い詰めたとばかりに気持ちの悪い顔を歪めている。
残念。
俺は家の壁を軽く蹴ってグングニールをオークに叩きつける。一体は頭が爆ぜ、肩などに当たったオークも肩が爆ぜる。
今ので五体が満身創痍、一体は死亡。三体は俺を見て「ブオオオ」と大きな声を上げた。
そのまま突進してきたが、さっきのを見てなかったのか。
速度だけならオークよりも俺の方が高い。
それに狭い路地裏でそんな行動をとったら。
「一直線になるだろ」
オークが向かってくる方にグングニールを突き出す。そのまま三体の腹に突き刺さり、パンと音が響いた。
オークの腹が爆ぜた、それだけである。
アナウンスが聞こえた。
一応、他のオークの首を落として倉庫に入れる。まただ、またアナウンスがなった。
俺はステータスを開いてみた。
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カナクラヨウヘイ
種族レベル 7
ジョブ 1.
HP 400
MP 400
攻撃 142
知力 142
防御 142
精神 142
俊敏 142
魅力 500
幸運 500
スキル 身体強化7、経験値増加10、ポイント増加10、異次元流通4、異次元倉庫4、槍術1
魔法 刻印10、火5、水5
ポイント 1500
ログ
オークLV1を撃破しました。
レベルが上昇しました。
オークLV1を撃破しました。
オークLV1を撃破しました。
(以下省略)
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レベルは俺が上げた通り七まで増えている。
多分、経験値増加のおかげでもあるんだろう。オーク一体だけでレベルを上げるのは難しくは無かった。
ただステータスの伸びが微妙だな。
他の人ならレベルを上げることでジョブをつけられるから何とかなるけど……就けられるジョブによっては強くなれないかもしれない。元々の俺は人の中でもQOLが低かった分類の無職だ。逆に俺が就ける仕事とかあるのか?
今のところはオーク相手ならグングニールで一撃だから問題は無い。ただ武器のゴリ押しだし、これ以上に強い魔物だって出てくる可能性だってあるんだ。気にならない人の方が少ないだろう。
まぁ、もしもの為に普通の武器を持つのはアリかもしれない。
鉄の剣程度なら異次元流通で何とかなるかもしれないし。ましてや、他の武器に触ったり性能を理解しておいた方が後々、いいかもしれない。
そう思ってステータスの異次元流通をタップしてみた。ステータス欄が入れ替わり、色々な商品の名前に変わる。選んだ商品の情報が書かれた欄があるようで、簡易的な説明を見ることができた。
金額の欄は俺の財布の手持ちみたいだな。ということは買い物は円で大丈夫なようだ。
壊れた世界ならお金を必要とするものは少ないだろう。だったら、そこら辺も有効活用出来そうだな。
コンビニから奪うか。後は助けた報酬として貰うのも悪くないな。使えないものを自分の命の代わりに出来るんだから喜んで渡してくれるだろう。
金額の欄を見る限りでは心もとない。だって、四千円しか所持していないのだから。
こんなことならもっとお金貯めておけばよかったな。いや、よく考えろ。
売却、か。
異次元倉庫と連動しているみたいだな。倉庫の中の物を売れる。
ちょっと待てよ。物を売れるのか。
試しにオークの遺体を売却の所まで引っ張ってみる。成功した、一万円増えている。
命をかけてオークを倒しても一万円か。安いのか高いのかわからないな。
そこらにもオークはいるからということで、オークの遺体は全て売却した。十万四千円だ、それ以内で物を買わないと。
まずは武器だな、あまり強そうに見えない、そんな武器。
鋼の剣でいいだろ。次いでスキルとかも買えるようだけど、パスしよう。そこまで余裕はない。
やるならどこかでお金を調達してからだ。
カートのマークに鋼の剣を引っ張ったら、値段が出てきた。七万円か、必要経費だと思って割り切ろう。
食料系は後からでも買えることはわかったし。精算のボタンを押した。
「うっお」
目の前にダンボールが一つ降ってきた。某宅配会社のロゴみたいなのが書いてある。
中を静かに開けると確かに鋼の剣が入っていた。鞘も入ってるなんてサービスいいな。
ベルトに取り付ける型の鞘のようで、ベルトも付いてきていた。それを腹に巻いてから鋼の剣を腰に付ける。
うん、見違えたのではないだろうか。
自画自賛でしかないけど。
グングニールはしまっておこう。
ここに用はないし出るか。
その場を後にして、また中学に向かい出した。後の三体は……誰かがなんとかしてくれるだろう。
にしてもオークの数が多いな。よくあるゴブリンとかコボルトとかはいないみたいだ。
いや、いるのか? 見てないだけで。
そんな考えは置いておいて、オークは全て逃げて対処した。いちいち相手をしていられないし、逃げているだけなら他の人に何かを言われることもない。誰かが襲われていたわけでもないからな。
それにスキルの使い方がわかった今、一番にすべきことは妹と会うこと。もう変な男に騙されてしまって、とそんな事が起こるわけがないか。
俺が言うのもなんだがアイツは重度のブラコンだからな。そんな奴が他の人のもとへ着くわけがない。……命を助けてくれたら話は別かもしれないな。だったら、どこぞの馬の骨に助けられるよりも先に俺が助けてあげないと。
俺は足をよりいっそう早めた。
次回は本日の十八時の予定です。