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1章17話 仲間を頼って

今回の内容の中にグロテスクな表現が含まれます。

苦手な方は飛ばしていただけると幸いです。

「って事で、これから外へ行く。校内のオークの大半は借り尽くしたし、一階にいるのも玄関前の一体だけだからな」

「それを私に倒してもらう、と」

「ああ、菜沙なら難なく倒せるだろうしな」


 本音を言えば校内にオークは沢山いる。

 でも、体育館に近づかなければいけなくなるし、それこそ、俺が一番に懸念しているのは他の奴らと出会う事だ。それに体育館の惨状とかを見せるわけにもいかないだろう。とはいえ……そのうち楽園を築いているオーク達には滅んでもらうつもりだが。


「そしたら私に抱きついてもらう、と」

「したいなら拒まない、とだけ言っておく」

「ふふ……さすがに冗談ですよ」


 口元を手で隠して菜沙は笑った。

 その姿を見て大きく安堵する。今いる場所は戦場と言っても過言では無いからな。気を抜くのは良くないが張り詰めるのも同じくらい悪い。とはいえ、ゲームで学んだ事だから実践では逆の可能性もあるけどな。


 菜沙に笑い返し、先行して進む。

 目的地は中学校の生徒玄関前だ。その近くに菜沙に倒してもらいたいオークがいるからな。唯も莉子も簡単に倒せたんだ。接近戦が得意な菜沙が負ける可能性は少ないだろう。


 最悪は俺が出るだけだし。

 だけど、少しして後悔した。


「最悪だな……」


 生徒玄関近くは地獄の様相へと変わっていた。

 幾つもの生徒の死骸、そのどれもが食い荒らされており悪いものでは半身が無いものもある。男子生徒は食われるだけの食料になり、そして女子は……ああ、駄目だ。俺ですらも見ているだけで気分が悪くなってくる。


 それに……四肢が無くなった死体もあるのか。

 これは遊びで四肢をもいだ……とかなのかな。分からない、ゲームではそんな最悪な事をするのはゴブリンだったはずだ。でも、この近くにはオーク以外の敵は見当たらない。


 という事は、オークもゴブリンと変わらない。

 そう考えるべきなんだろう。


 俺達が幼い時にやっていたように。

 無邪気にするべきでは無いことを笑顔で行う下劣な存在なんだ。マナーやモラルなんてものは無い。子供がバッタを足だけをもいで死ぬのを見守るように……俺も負ければそうなるんだろうな。


 だが、負けなければいいだけの事だ。

 死体を見て息を飲む三人を置いて進む。


 すぐに後ろを着いてくる足音が聞こえてきたが気にしていられないを殺す覚悟を、とか大層な事を考えていたが、今のを見て同じ事を言えなくなってきた。


 少しだけ足を早めて玄関前まで進む。


 確かにそこにオークはいた。

 だが、早めに来て正解だったかもしれない。


 ソイツは未だに女を犯している最中だった。


 ただ犯していたならまだ良い。

 ソイツは……死んでいる女を犯していたんだ。


 どこから捕らえてきたであろう、オークの体躯に比べれば大幅に小さな女子生徒。百五十あるかどうかの体躯に覆い被さる二メートル以上の大きな豚。


 何度も犯され続けていたのか、体からは白い液体を垂れ流し目には大粒の涙の跡が残っている。


 ましてや、すぐ近くに恋人であろうか、同学年ほどの男子の遺体も転がっている。それも四肢が明らかに曲がってはいけない方向へと折れていた。わざわざ見せつけながら死ぬを待ったのか。


 ショック死、それが女子生徒の死因だろう。

 我慢の限界だった。


「汚ぇもんを見せつけるなよ、雑魚が」


 悲鳴を聞く前に、鳴き声すらも出る前に……。

 グングニールを軽く刺して力を込めた。ただそれだけでオークの体が四方八方に飛び散ったのだ。苦しめて苦しめて殺してやりたい気持ちはある。でも、それよりも胸に残るイライラを吐き出したいんだ。

 そんな時に悲しげな声が聞こえた。


「……菜沙」

「すいません。知っている……二人だったので」


 目尻には大粒の涙が溜まっている。

 それを聞くと尚更……早めに倒しておいて正解だと思えた。そして俺の判断が大きく間違っていた事も同様に思い知らされる。後に見る景色だったとしても慣れていない今のうちに見せるべき景色では決して無い。


「なら、構わないよ」

「洋平……先……輩……」


 隠さずに涙を流し始めた菜沙を抱き締める。

 出来る限り顔を胸元に隠させて二つの死体を回収しておいた。これだけ悲惨な目にあったんだ。せめて、死んだ後くらいは悲惨なままに済ませておきたくなかった。それに菜沙の精神状態を安定させるためにも供養しておく必要がある。


「今日は帰ろう」

「……いえ、大丈夫です」

「少しも大丈夫そうに見えないぞ。錯乱状態で戦っても傷を負うだけだ」

「それでも、です」


 食い気味に菜沙が顔を上げる。

 未だに涙は涸れているように見えない。少しでも気を抜けば流れてしまいそうなくらい潤んでいた。その姿を見てどうして俺は了承できる。


「私のせいで予定を変更したくありません。それに強くならないと同じ目にあってしまいます。無理でも何でもなく私は戦いたいんです」

「憂さ晴らしに、か」

「それもあります」


 少しだけ苦々しそうに笑った。

 嘘だ、絶対に菜沙は嘘をついている。辛くないわけが無いのに戦うと言っているんだ。だからこそ、俺はなんて答えればいいのか分からない。無理にでも休めと言うべきか、それとも菜沙の意思を尊重して戦わせるべきか。


「それに危なくなったら先輩が助けてくれるんですよね」

「ああ、菜沙が襲われている姿なんて見たくないからな」

「それだけで戦えます」


 一瞬だけ胸に顔を埋めて菜沙は顔を上げた。

 ここまで言われて戦うなとは言えないよなぁ。分からないけど菜沙は菜沙で寄生虫にはなりたくないって思っているのかもしれない。それだけ俺が口酸っぱく言っていたからか。だとしたら、もう少しだけ優しくしないといけないな。


「なら、一つだけ約束しろ」

「内容によります」

「簡単な話だ。戦うのは自由だが命令を聞いてもらう」


 これは最低限の約束だ。

 少し不思議そうにされてしまったが理由はそこまで難しくない。


「今の菜沙は冷静な考えをできるとは思えないからな。例えば西園寺と出会った時に勝手な行動をされたら全員に命の危険が及ぶ。そこら辺をケアするために今だけは言う事を聞け」

「……なるほど、それならいいですよ。ただし、エッチな命令は禁止ですからね」

「度が過ぎた行動を取ればするかもな」


 抱き着いたままの菜沙に強めにデコピンをする。

 痛そうに額を抑える姿を見ると気持ち的にはリフレッシュできたのかもしれない。百パーセントじゃなくてもいいんだ。少しでも心に余裕ができたのならそれでいい。


「それじゃあ、外へ出るぞ。校内よりも酷い、凄惨な世界だ。心してかかれ」


 先に三人に注意して正解だった。

 一歩、外へ踏み出すと昨日とは打って変わった景色が広がっている。幾つもの死体が並び、それを貪るカラス達……道の至る所に息絶えた人々がいた。


「すぐ近くにオークがいる。次はそれらを狩るつもりでいる」


 周囲にいるオークは五体か。

 その中に俺よりもステータスの低いオークナイトがいる。とはいえ、俺よりも低いだけで他の三人に比べたら明らかに強いからな。コイツは俺が相手をする。


「少し先にオークが五体いる。そのうちの四体を三人で倒してくれ。莉子も銃を使っていい」

「三人で?」

「そうだ。後々連携は必要になってくるだろうし、近距離と遠距離の連携は意外にとりづらいからな」


 菜沙と唯なら、まだ楽にできるだろう。二人とも前衛だから敵と相方を意識すればいいだけだ。


 だけど、莉子が関わってくると話は変わる。ゲーム内での話だが一歩間違えればフレンドリーファイアまっしぐらだ。間違えて莉子が撃ってしまう可能性、前衛が射線に入ってしまう可能性……それらで好きに動けなくなる。


「……なら、わかったよ。でも、残り一体はどうするの」

「ああ、ソイツは俺が相手をする」

次回は明日の八時の予定です。

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