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ケルト魔術とか一般教養ですが何か?

「良かったんですの? ルーアさん、泣いていましたわよ」



「良くないかもだけれど、あの子働き過ぎなのよ。こうでもしないとろくに休みをとってくれないからね」



 今朝新しい形のタバコを発明することを決めた我子はルウとフィリアムを引き連れ、ウィンチェスターを離れ馬車で街道を進んでいた。



「まあルーアちゃん、アンジュちゃんがいるならどこへでも行くって感じだもんね。休みの時でもなんだかんだアンジュちゃんのサポートで働き詰めで――もう少しで協会から子どもを働かせ過ぎだって警告がかかるくらいには忙しくしてたからなぁ」



 我子はブラック企業改め、ブラックギルドにならないように仕事の量を調整していたつもりだったが、ルーアが何から何まで仕事をするために、まとまった休みを与えようと考えていた。

 しかし彼女が簡単に休んでくれるとは思えず、強引な手を使うしかない状況だったとはいえ、泣かせてしまったことを悔やむのだが、それでもルーアに体をいたわってほしく、今回は心を鬼にして同行を拒否したのだった。



「ナイトとウルを置いてきたから2人がちゃんとフォローしてくれているとは思うけれど、やっぱり強引だったかしらね。帰ったらたくさん甘やかさないと」



「そうやって甘やかすばかりだと同じことを繰り返すだけですわ。ルーアさんにも問題はありますが、アンジュさんにも非があることを理解してほしいですわ」



「うっ、ルウはいつも痛いところをつくわね。わかってはいるんだけれどね、ルーアが可愛くて仕方がないのよ。あの子ずるいわ、ウチの弱点を的確についてくるんだもの」



「ギルドマスター、サブマスターの仲がいいのは結構ですが、これで業務に支障が出るようならあらゆる手を講じて矯正させることになるのを理解してくださいまし」



「……ちなみにどんな?」



 我子の問いにルウがニヤリと口元を歪め、妖しい笑みを浮かべた。



「私、どれだけ屈強な戦士でも死なせてほしいと情けない声を上げるような拷問も経験済みですわ。とだけ言っておきます。ルーアさんに嫌われるようなことだけはさせないでくださいまし」



「わかった、わかったから。ちゃんとルーアと話すわ、だからギルドにいる間はルーアの優しいお姉さんでいて頂戴」



 我子はルウを抱き寄せると呆れたように言い放つ。

 この子もこの子で放っておくとろくなことにならないだろうなと、浮き彫りになる問題に頭を抱える。



「ルーアちゃんもそうだけれど、ルウちゃんもアンジュちゃん大好きだよね。一番上のお姉ちゃんとしてはギルドみんなが仲良しなのは嬉しいよ」



「あら、フィムはうちのことが大好きではないと?」



「そんなこと言ってないもん。でもほら、あたしは大人ですから」



「つまみ食い回数ダントツトップの長女がなにか言っていますわ」



 フィリアムに我子が大好きだと指摘され顔を赤らめていたルウがどこか意地悪な表情で言い放った。



「ああ確かにフィム、少しふっくらしてきたものね」



「ご、ご飯が美味しいのはいいことでしょう! それにほら、あたしがつまみ食いしちゃうほどの美味しいお料理を提供できてるって証拠だよ」



「そういうことにしておくわ。今回の遠征ではたくさん動いてもらうことになると思うから痩せたい箇所を意識して動かすようになさい」



「そういえば目的地を聞いていませんでしたわね、今朝アロマさんのもとに飛び出していってなんの情報を得たのですの?」



 今回の目的、新たなタバコの開発の材料集めを我子は3、4日ほど見積もっており、ミスティックルナーのギルドマスター、アロマからの情報提供によりある鉱石を探し出そうとしていた。



「ドルイド湿地帯を突っ切って奥の森で採掘するわよ」



「ちょっと待ってそれあたし死なない?」



「死なせないから安心なさい」



 ルウが我子の腕の中で頭を抱えており、ドルイド湿地帯がどのような場所であるのか表情が物語っていた。



「通称、魔呪付師まじゅつしの墓場。自然と寄り添う宗派の魔法使いたちが死ぬ間際に、世界に溜まった悪意だけをその身に宿して作り上げた魔術を封印して出来上がった湿地帯。アンジュさんはあそこがどんなところか知っているんですの?」



「ええ、一通り説明を受けたわ。その上で大丈夫だと判断したわよ」



 訝しむルウだったが、我子の大丈夫だという声を聞き、渋々ながら了承した。

 しかしフィリアムが涙目のままであり、「フィリアムさんを安心させてくださいまし」とだけ口にした。



「大丈夫よ、ちゃんと対策もねってきたしフィムが危険な目に遭う心配はないわ。むしろ心配してほしいのは採掘での筋肉痛だけなんだけれど」



「逆にどうしでかすのか心配になってきたよ!」



 それは見てからのお楽しみだと我子は不敵に嗤うのだった。

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