何度だって繰り返してやるわ!
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「ん――あれ、ウチどうしたんだっけ? 確か猿と一緒に帰ってて……」
目を覚ました琴吹 我子は見慣れない風景に首を傾げた。
辺りは真っ白な壁と床で、何もない空間。
どこか覚えのあるその景色に我子は思案顔を浮かべる。
まずは自分の状態をチェック、服装は幼馴染である猿回 元気といたときと同じで、着崩した学校指定の制服。ごくごく一般的なYシャツに、膝上までにしたグレーのスカート、靴はスニーカーで、ブレザーがダサかったためにそれを着ずにユニオンジャック柄のパーカーを羽織り、首元にはリボンではなくネクタイ。
記憶の中にある学校の制服を着ていた。
では次、果たしてこうやって思考している自分は琴吹 我子本人なのか。
我子は自分の顔をペタペタと触り、覚えのある感触を探す。
しかし鏡もないここではそれも困難で、見た目についてはきっと可愛だろうと諦めて髪に手を伸ばす。
腰まで伸びている髪を指で掬い、その髪質を確かめる。
何度も何度も触っていたからわかる。この髪は間違いなく自分の髪で、よく手入れが行き届いていた。
我子は自分自身を確かめると、ではここはどこかという疑問に行き着いた。
そんなことを考えているとその声が突然聞こえた。
聞こえますか、聞こえますかと囁かれるような声。
懐かしい気分になるその優しげな声だったのだが、我子の額には脂汗が滲んでいた。
「え、何これファミチキなら持ってないわよ」
「聞こえますか?」
「――っ」
背後から突然聞こえたその声に我子は驚き飛び退いて、手に握られているハリセンに目を落とした。
「これは……?」
「覚えていないのですか? それならば私が思い出させてあげましょうか?」
「あんたは」
我子の背後にいた男性は白いローブのようなものを羽織っており、優しげに我子に微笑みかけた。
しかし彼の背中に引っ付いている少女がまるで親の敵でも見るような目で我子を見ており、その視線に首を傾げる。
「……止めなさい」
「でも――っ」
突然始まった頭部の寂しいおじさんと少女のやり取り、一体何を見せられているのかと我子が説明を求めようとしたのだが、少女が涙目で漆塗りの黒のフレームに入れられた写真を掲げたことで、我子は頭を抱える。
すべて思い出した。
琴吹 我子は元気との帰宅途中で不幸な事故にあって死亡し、それを不憫だと思った神様にすくい上げられて異世界で生活をすることになった。
しかもその恩人とも言える神様をわざとではないとはいえ勢いで殺してしまい、超絶スキルとレベルを手に入れたのだった。
「お父さん! あたしはやっぱり許せないよ! だって、だってあの人は……」
「娘! 止めなさいと言っているでしょう! しょうがなかったんだ、あれはしょうがなかったんだよ! 父さんだってきっと自分が悪いと彼女のことを許すに決まっている! 今回お前をここに連れてくる時に約束しただろう、その話はしないって」
「う、う――」
我子は口角をプルプルと震わしながら気まずそうに顔を伏せる。
すると頭部の寂しいお父さんと呼ばれていた男性が申し訳なさそうに頭を掻き、中年のサラリーマンが上司に媚びへつらうようなヘラヘラした顔ですいませんねと言い、我子に麻袋を手渡した。
「それがスタンプ特典です。ルーアさんにはよくやっていると伝えてください。彼女の働きはとても素晴らしいものです、これからも期待していますと」
「え、あ、うん。その」
「いえ、こちらの問題ですからあなたは気にしないでください」
お父さんが娘に目を向ける我子に気がついたのか、相変わらずのヘラヘラした顔で軽く頭を下げた。
「う、うっ、おじいちゃん……わたっ私はダメな神様だよぅ。おじいちゃ、おじいちゃんみたいな神様になるってきめ、決めたのに、全然出来ないよぅ」
ポロポロと涙をこぼす娘を視界に入れないようにしていた我子だったが、つい目に入ってしまい、罪悪感で心が蝕まれていく。
彼女になんと声をかけるべきか、そんなことを考えていた我子はお父さんに目を向ける。
するとお父さんは誇らしげにうんうんと頷き、こうやって娘の成長を見守っていくんだなと何かに納得していた。
我子はげんなりとし、もう帰っていいですかと尋ねると、お父さんが何度も何度も頷き、最後にはありがとうとの言葉を放った。
そんなことを言われる筋合いが一切ないが、我子は頷いておき、そしてそばにあった異世界へと通じる魔法陣に足を運ぼうとする。
しかし最後にチラリと娘を見た時、我子は動かずにはいられなかった。
「うっ、うぅっおじいちゃん、おじいちゃん……おじいちゃんが大好きだったものを置いていくね。あれ本当はね、構ってほしくて意地悪してたんだよ。でもいつの間にか本当に大好きになってたよね。一日ご飯をそれだけでも美味しい美味しいって――」
我子はスキップで娘に近づいていく。
「だから今日もこれ食べて元気出してね――」
「おじいちゃんはカブトムシじゃありません!」
娘が屈んでおじいちゃんと書かれた棒を床にぶっ刺し、その目の前にカブトムシ用のゼリーを置いたために我慢できず我子はハリセンを振るった。
脳天をハリセンで打ち付けられた娘はそのまま床に顔面を埋め、名古屋城のシャチホコのような体勢でピクリともしなくなった。
『スキル·女神の息吹を習得しました。スキル·神殺しA+を習得しました』
「娘ぇぇっ!」
お父さんが動かなくなった娘を抱きかかえ、慟哭を上げたために、我子は額いっぱいの汗を掻きながら駆け出し、逃げるように魔法陣の中に入る。
またやらかしてしまった我子の明日はどっちなのか。
そしてどうして神々はツッコミどころを提供するのか。そんなことを考えながら、我子は意識を今では我が家となっているそのギルドに馳せるのだった。