ベッド
新しいベッドが届いた。もともとあったベッドと連結できるタイプで、連結してキングサイズにした。これで床に寝ることもなくなる。
「すごい。こんなに広いベッド、初めて。」
彼女は広くなったベッドを見て驚き、早々にダイブして、ごろごろと楽しそうに転がる。僕はそれを見て苦笑した。
とても嬉しかったのか、しばらく経ってもベッドから離れず、夕食は?と聞くと、忘れてたと言って飛び起き、台所に駆けて行った。
大きくなったベッドに二人で横になる。それぞれがシングルの位置だ。掛け布団はシングルサイズでそれぞれが一枚掛けとなるが、8月下旬の暑い夜のため、タオルケットをお腹から掛けている。
横を見ると彼女が寝ており、パジャマ越しにふっくらした胸の膨らみが見える。あまり見てはいけないと思い、上を向いた。
彼女の息遣いが聞こえて緊張し、真っすぐ天井を見ながらどうしたら良いのか思案する。
不意に彼女から声が掛かった。
「一緒に寝られるね。」
「そうだな」
夫婦になって一週間。一緒のベッドに寝たことはなく、今夜が初めてだ。
「ケーキ美味しかったね。」
「そうだな」
結婚祝いに、彼女が好きなショートケーキを購入し、さきほど食べた。
「わたしたち夫婦よね。」
「そうだな」
もぞもぞと彼女が動く。
「あきくん?」
耳元で聞こえ顔を向けた。目の前に彼女の顔があり、真剣な顔をしている。彼女の息を感じるほど顔が近い。僕は驚き下がろうとするが、ベッドに寝ているためほとんど動かない。
「あなたの奥さんは誰?」
「きみだ。」
「恵美よ?」
「恵美。」
「よろしい。」
満足したようで、彼女は笑みを浮かべてから元の位置に戻っていった。
「おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
そういえば、子供の頃は恵美ちゃんと呼んでいたな。いつから名前を呼ばなくなったのだろうか。
そんなことを考えながら、眠りに落ちた。