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買い物


炊飯器を購入するため、ふたりで大型のショッピングセンターにきた。

複合の商業施設で、ショッピングのほかにレストランや映画館がある。4階建ての建物内は中央が吹き抜けになっており、天井がとても高い。


「なに、すごい、天井がたか~い。」

「ああ、僕も最初はそうなった。広いからゆっくり見ていこう。電気屋さんは一番奥だから。」

「広くて迷子になりそうね。はいっ。」


彼女が右手を差し出す。手をつなごうという身振りだ。僕が躊躇したのを見て、彼女が僕の左腕を掴み腕を組んだ。


「いきましょ。」

「えっ、あっ、ちょっと、」


彼女に引っ張られながら歩く。ふと懐かしい感じがしたが、なぜかは思い出せない。

店を見ては、彼女がぱたぱたと駆けていき、喜んだり関心したりしている。ぬいぐるみに関心があるようで長く見ている。そういえば彼女の部屋はぬいぐるみが多かったなと思い出した。大きなワニのクッションを見つけ、これいいなと身体をくねらせるが、恥ずかしかったのか僕を見て真っ赤になる。


「楽しそうでよかった。」

「うん、楽しい。こんなにいろいろなお店があるところは初めてよ。」

「時間はあるから、ゆっくり見ていいぞ。」

「多すぎて全部見きれないよ~。」

「はは、また来ればいいよ。いつでも来れるから。」


彼女はそうねと言いながら次の店に駆けていく。以前から変わらないなと思ったが、一緒に買い物に行ったことがあったかな?と、不思議に思った。


寄り道しながらも電気屋さんについた。炊飯器を見つけた彼女が駆けていく。蓋を開けたり覗き込んだりしながらひと通り見て回った後、僕に聞く。


「どれにするの? 大きさもいろいろあるけど。」

「どれがいいのか分からない。見た目で選んでもいいかな。」

「これ可愛いの。けどちょっと小さいかな。」

「2人なので3合炊きでもいいな。」

「う~ん、こっちの大きいのにしましょ?、お弁当も作るから。」

「なるほど。じゃあこっちで。パンフレットを見るから少し待っていて。ほかの家電を見ていていいよ。」


僕はパンフレットを手に取る。彼女は他の炊飯器を見ている。

パンフレットを見終わり彼女を見ると、こっちに来てと手を振っている。


「これはどうなの?、こっちは少し安いから。」

「ああ、これは海外メーカーなんだ。すこし高くても国内メーカーがいいかな。長く使うものだし。」

「ふ~ん、いろいろあるのね」


わたしにはわからないよという顔をする。

僕は店員を呼び、炊飯器を購入した。


その帰り。


「えっ、無くなってる。売れちゃったのかな?」


大きなワニのクッションがあった店だ。ワニの姿が見えないことに彼女が落ち込んでいる。


「ああ、ちょっと待ってて。」


彼女を置いて店に入り店員に声を掛ける。店員が大きな袋を持ってきたので受け取った。


「はい。」


袋からワニの頭を引き出し彼女に見せた。彼女はワニの顎を両手で挟み驚いている。


「さっき寄ったときに買ったんだ。君が喜ぶと思って。悲しい思いをさせてごめん。」

「ありがとう!」


彼女が僕を見て、笑顔でワニの袋に抱きついた。あれ?という顔になりワニの袋を脇にどける。


「もう一度。ありがとう!」


今度は僕に抱きついた。最初のはワニが大きくて手が届かなかったようだ。

周りの視線を感じる。店の前でいちゃいちゃしているわけで、恥ずかしくなった。


「嬉しいのは分かったから、移動しよう。周りから見られていて恥ずかしい。」


ふたりで顔を赤くして周りを見る。

店員さんが微笑みながら、お幸せにと言ってこちらにお辞儀をする。

僕達はありがとうと言いながら会釈して、そそくさとその場を離れた。



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