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ふたり


ふたりでべッドに横になっている。

残業続きで疲れた僕は、ぐったりと身体を沈めている。

対照に、恵美はテンションが高かった。花屋の真奈さんに赤ちゃんを抱っこさせて貰ったらしい。


「でね、赤ちゃんがわたしの指を掴むの。小さい手でギュって。指がとてもちっちゃくて、それでもしっかり動いていてね、すごく可愛いの。あと、ほっぺがまんまるで、つんつんするともぐもぐしてね。可愛いの~。」


恵美のテンションについていけず、早く終わってくれと祈る。だが祈りは叶わなかった。恵美がこっちを見て、じわじわと近づいてくる。


「わたしも赤ちゃん欲しいな~。」

「まあ、神様の贈り物というからな。簡単ではないよ。」

「うん、そうだけど。やることやらないと出来ないよ?」

「ぐはっ」


鋭い指摘に少なからずダメージを受ける。夫婦になり5ヶ月が経つが、まだ営んでいない。


「そもそも、温泉宿に泊まっても手を出さないのはどうなのかなって。立たないのかなって。」

「いや、そうでは、、」

「あきくんを待ってたら、おばあちゃんになっちゃうよ?」

「んん?」

「だからね、わたしから襲うの!、それ~。」

「ちょっとまて、今日は疲れているんだ、、、」





翌朝。ふたり一緒に目が覚めた。


「おはよう。」

「ん、おはよ。」


ピタリと身体を寄せ、ふたりとも裸で寝ている。直に感じる体温が心地よい。


「少し安心した。」

「ん?」

「夫婦になれたのかなって。」

「ん」


恵美は身体をよじり、背中を向ける。


「わたしね、待っていたの。あきくんが迎えにこないかなって。高校を卒業したら迎えに来るかな。成人式のあとに来るかなって。

夏にあきくんがうちに来るけど、わたしに一緒に来いと言って欲しいって、いつも願ってた。いつもわたしに声を掛けてくれるけど、望んでいた言葉は無くて、帰ったあと泣いてた。もう諦めようって、忘れたいって思って、神社でお願いまでして。

でも諦めきれなくて。意気地のないわたしは何もしないで待ってた。」


恵美の声は少し震えている。

背中から抱きしめた。


「怖いことがあって、お父さんに相談したら話が進んで、結婚して。

それから毎日があっという間で、毎日が楽しくて。以前のわたしには想像できないくらい幸せで、夢を見ているのではないかって。

いまこうして一緒にいて、あきくんに抱きしめて貰えて、とても幸せ。」


恵美の手が僕の手に重なる。


「待っててくれてありがとう。以前の僕は幼かったから、なにも考えずに受け入れない選択をしていたかもしれない。

経緯はどうあれ、いま僕らはこうしてここにいる。君が待っててくれたから一緒になれたんだ。」


恵美が僕の手を握る。


「ありがとう、愛してるわ。」

「僕もだ。」


しばらくそのままでいたが、恵美が身体をよじりこちらに向く。少し不機嫌のようだ。


「言わないの?」

「え?」

「わたしは言ったよ。愛してるって。」

「ああ、愛してるよ。」

「気持ちが入ってない。」

「うっ。」


呼吸を整えた。


「恵美、愛してる。」


すこし待つと、恵美が顔を寄せてキスをした。


「ありがと。」




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