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雪だるま


夜半から雪が降り、翌昼に30センチほど積もってから降り止んだ。


「母さん、今日も泊まっていいかな。これだけ積もると帰れないや。」

「いいわよ。」

「これだけで帰れないの?」

「電車が動かないんだ。この辺りの電車は雪に弱いから。」

「ふ~ん。」



僕の実家に泊まりに来ている。電車とバスで1時間ほどの距離ではあるが、今回が結婚してから初めての訪問となる。仕事が忙しくなると難しいため、天気予報で降雪と聞いていたが強行した。


じっと雪を見ていた恵美が、よしと気合を入れて外に出る。


「雪だるまを作るよ!」


そう言うと雪を丸め始めた。やれやれと思いながら手伝う事にし、スコップを手にして外に出る。


「雪を集めるよ。」

「かまくら作るの?」

「いや、雪が少ないから集めるんだ。雪だるまを転がしていると土で汚れるから。」

「え、もう胴体できたよ?」


そこには土で汚れた雪玉があった。


「あっちで頭作るね。」


恵美は雪がきれいな方に駆けていく。

走ると危ないと思ったその時、恵美が前のめりに転ぶ。


「きゃっ。」

「大丈夫か?」

「もう、転んだ~。」


転んだ彼女の姿を見て、子供の頃の出来事を思い出した。





「きゃっ。」


声がした方を見ると、雪の中に少女がうつ伏せに倒れている。


「転んだ~。あっ見て、わたしの形。」


僕は近くに寄り手助けをする。


「ん、ありがと。」


立ち上がり、雪を払う。


「一緒にあたまを作ろうよ」


少女はそう言うが、一緒に転がすには雪玉は小さい。少女がひとりで転がし、あっという間に丁度良い大きさになった。


「重くて持てない。手伝って。」


「ああ、ちょっと待って。」


ふたりで雪玉を持って胴体の雪玉まで運ぶ。乗せようとするがバランスが悪くうまく乗らない。


「あきくん支えてて。首をくっつけるから。」


少女がぺたぺたと雪を付ける。

出来上がったそれは、雪だるまというよりは、ひょうたんであった。


「まあいいか。出来た~。ほら一緒に、出来た~!」

「出来た~!」


二人で万歳をする。

そこに叔父さんがやって来た。


「雪だるま出来たのか? ん、これか? う~ん、少し綺麗にするか。」


土がついたところをスコップで削り、新しい雪をつける。型を整えてからふわふわの雪を振りまいた。


「そら出来たぞ。どうだ。」

「わたしが作った雪だるまなのに~。わたし、つるつるがいい。」


雪だるまをぺたぺたして固める。ふわふわは無くなっていく。叔父さんは残念そうだ。

気を取り直して叔父さんが胸を張って指をさす。


「あっちにかまくらを作ったぞ。見るか?」

「見る。あきくんも行こ!」


僕の腕を掴み、強引に引っ張っていく。

かまくらに着いて、二人で中に入った。


「暖かいね~」

「うん。」

「すごいだろ、はっはっは」


叔父さんが入ってくる。


「おとーさん、狭い。邪魔。あっちいって。」

「恵美、それはないだろ。俺が作ったんだぞ?」

「邪魔。あきくんと二人でいっぱいなの。」


叔父さんが肩を落として去っていく。


しばらく遊んでいると叔父さんが来た。


「寒いから早く家に入れよ。」

「ここ寒くないから大丈夫。あきくんも温かいし。」





二人で雪だるまをつくった。叔父さんが教えてくれた、ふわふわの雪だるま。


「お父さんの雪だるま。なんだか懐かしいな。」


優しく恵美の肩を抱いた。



家に入り、母さんに尋ねる。


「叔父さんのところで雪だるまを作ったのを思い出したんだ。毎年夏に行っていたと思うけど冬にいったことあったかな?」


「あるわよ。雪だるまを作ったのはあなたが小学5年のときね。あのときね、あなた達がかまくらの中に二時間もいて心配したものよ。様子を見にいったら二人で仲良く遊んでいて、絵を書いていたのかな、楽しそうだったわ。それから、叔父さんが娘を取られたと嘆いてたわね。」




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