サンタクロースと僕と。
時々プレゼントを届けるんだ。
まあ、お荷物もたくさんあったけどね。
これからは『いらない』なんて言わないで
少しでも1つでも
物語を受け取ってよ。
君のための
僕のプレゼントを。
僕さ、時々泣いたりするんだ。
誰も知らない涙なんだ。
なぜだかよく分からないけど、涙が出るときは、
世界で僕ひとりぼっちな気がして
誰にも会いたくないし、誰にも見られたくない。
僕の泣き顔だけはね、でも
こんな僕だってさ、泣いたりするから
誰かに分かってほしいなんて思わないけど、
誰かに知ってほしかったんだ。
「ねえ、君は誰?」
「僕が誰かって?」
「うん」
「僕が誰か分からないの?僕は君を知ってるよ。よく考えてよ。」
「君とはどこかで会ったような気がするんだけど・・・うまく思い出せないや。」
「じゃあ、ヒント。僕はずっと君のそばにいた。」
「僕のそばにいたの・・・?分かんないや。」
「第二のヒント。僕は悲しい。泣きそう。」
「悲しい?どうして?」
「第三のヒント。それは今、君が悲しいからだ。」
「ぜんぜん分からないよ。君はいったい誰なの?」
「じゃあ、答え。僕は君だよ」
「えっ?君は僕なの?」
「そうだよ。ずっと会いたいと思ってたんだ。」
「君は僕で、僕は君・・・
どうゆうことだよ。分からないよ。」
「そうかい?そんなに難しいことかい?」
「うん。だってさ、君が僕だなんて・・・
そんな考えありかい?
僕、こんな姿だったっけ?」
「そう、これが君。ちょっとの間会えなかっただけさ、僕は君に。いつも近くにいたのにさ。」
「なんだかもっとややこしくなってきたぞ。」
「そうかい?すごく簡単なことじゃないか。君は僕で僕は君。そして僕は君のそばにいる。」
「僕の近くにいたのに、どうして僕は君のことを知らないの?」
「君は僕のことを知っている。でも君が呼んでくれないだけなんだ。
僕は君が呼んでくれれば、いつでも会うことが出来る。まあ、鏡みたいなもんだよ」
「じゃあ今は僕は君を呼んだのかい?
そんな覚えはまったくないんだけど。」
「君は時々僕を呼ぶ。泣きながら、ね。でも僕は来ない。
呼んでるのは僕じゃない僕だからさ。」
「じゃあ君はちゃんとした、僕なの?」
「ちゃんとしてるかどうかは分からないけど、僕は正真正銘、ありのままの君さ。」
「僕はこれまでに君を呼んできた覚えはないよ。
それに僕は君のことを知らない。だから、呼ぶことはできないんだ。そうだろ?」
「いや。知ってるんだ。君は僕のことを。同じように僕も君のことを知っている
だから僕らはお互いに呼びあうことが出来る。だから今日も会えた。まあ、簡単に言えば僕はちょっとしたプレゼントを君に渡しにきた。
僕が君を呼ぶってことは君が僕を呼んでるみたいなことだけどね。」
「じゃあ、僕は君を呼んだの?」
「そうさ。」
「どうして?」
「君が悲しい気持ちだったからさ。それで、僕を必要とした。そうゆう時やってくる、君さ。」
「君はさ、僕なんだよね?」
「そうだってさっきから言ってるじゃないか。」
「僕が悲しい時は君も悲しい。僕が嬉しいと君も嬉しい。」
「そうさ。」
「僕は君。」
「うん。」
「君は僕。」
「そうだよ。」
「君が僕を呼ぶってことは僕が僕を呼ぶってこと?それってなんか変じゃない?
僕は僕なのに、僕が僕を呼ぶなんてさ、そしたらやっぱり君は僕じゃないじゃないか。」
「そう難しく考えるなって。君はいつも君で、僕はいつも君なんだよ。
だからいつでも君は僕を呼ぶことが出来る。僕に会うことが出来る。
そんなことも分かんないのかい?」
「わけ分かんないよ。じゃあさ、君が僕なら僕の知ってることは君も知ってるの?」
「もちろんだよ。」
「じゃあ、僕が知らないことは君も知らないの?」
「そうだよ。でも君が知ってるはずの忘れたことも知っている。」
「例えば?」
「このことさ。僕は、いつだって会うことができた。君に呼ばれば、ね。
そんなこと、ずっと前から当たり前に知ってるのに君は忘れてる。」
「だから…そんなこと知らなかったってば。」
「じゃあ・・・例えば君はサンタクロースを12歳まで信じていた」
「嘘だ。幼稚園のころには知ってたよ」
「いや。好きだった女の子がサンタクロースなんていないって言ったから、君もいないとかっこつけていた。
本当はずっと信じていた。クリスマスの夜はいつも薄目を開けてた。サンタクロースってどんな姿なんだろうって。」
「嘘だ。親が入ってくるのを見ようとしていたんだ。」
「でも親が入ってくるのは見たことない。知らない間に眠ってたからね。起きてた最高記録は12時半だ。」
「だから…親が入ってくるのを…」
「でも見たことないよね。朝になれば必ず枕元にはプレゼントが置いてある。サンタクロースを信じない理由がどこにある?」
「嘘だ。」
「なんで信じれなくなったんだい?隠すことないのに。君は忘れてるよ。信じることは素晴らしいことじゃないか。」
「僕のことをバカにしとるのか?」
「バカにしてるだって?そんなわけないじゃないか。
だって僕は君なんだから、君をバカにすることは僕をバカにすれことなわけだし。」
「でも、本物の僕は僕さ。僕のことは僕が一番知ってる。
僕はサンタクロースがいないことを幼稚園のころには知っていた。12歳まで信じていたなんて嘘だ。」
「じゃあ、そう思ってればいいさ!でも本当のことは変わらない。君は12歳までサンタクロースを信じていた。君が変えようたって変えられない。」
「君ってすっごく頑固だね。自分の意見を譲ろうとしない。」
「お互い様さ。だって君は僕なんだから。でもその性格、不便じゃない?」
「それから、頭ごなし。人の意見に耳を傾けようとしない。」
「よく言えば、自分の思ったこと貫き通す強い意思だよ。」
「要は頑固者ってこと。」
「だから、お互い様。」
「なんで、君は僕なのに意見が違うくなってしまうのさ。やっぱり変だよ。」
「さっきも言ったけど、君は僕だからさ。僕は僕が嫌いになったり、好きになったりするだろ?」
「そりゃあさ、君は僕かもしれないけど、本物の僕は僕だって。」
「だから、その君は僕だからさ、どっちが本物なんてないさ。どっちも本物の僕。
君が勝手に僕のことを偽物の僕にしてるだけ。偽物の僕なんてないさ。」
「じゃあ、君は何者?」
「僕は君。君は一人じゃないだろ?つまりさ、僕と君が何かを言い争いすれことは、僕と僕の中で僕が言い争いするようなことなんだ。
だから、よけいに頭が混乱してぐちゃぐちゃになって何が正しいか、分からなくなることで、どっちも間違えちゃいないのに、
はやくどっちかに決めようとするから、単純だったはずのことが、よけい後からぐちゃぐちゃになって、よけい後から言い争いが始まるんだ。
で、はやく決めなきゃってなるから、結局誰かが言った意見が正しいってことになるんだ。」
「つまり?」
「君の並べた正しさなんて君が見つけたものじゃないってことさ。」
「意味分かんない。」
「サンタクロースに関してもそうなんだよ。君が見つけた正しさしか、正しくないってこと。君のもんじゃないってこと。」
「?正しい答えって決まってるもんだろ?本当に君の言うことって分かんない。」
「僕も分かんない。答えなんてないからさ。」
「でも、例えば、1+2=いつも3だろ?それが正しい答えなんじゃないの?」
「確かに数学は不変的なものではあるけど、1+2=5-2でもあるし、1×3でもある。答えはいくらでも考えられるさ、0+3、10-7・・・」
「でもテストで1+2=5-2ですなんて書いたら、バツがつくよ。3って書かなきゃだめなんだ。」
「先生はバツをつけるかもしれないし、テストじゃ0点をとるかもしれない。
先生は君を1+2も分からない子だと思うだろうし、先生がつける成績表は最悪な結果になるし、そのことでママに怒られるかもしれない。
でも、君は間違った答えを書いたわけじゃないんだ。1+2=3は君の正しさじゃない。何万年か前に誰かが出した数字でしかない。」
「けどやっぱり変だよ、それ。」
「変は変だよ。1+2の答えがいくつもあっちゃ困るだろ?」
「うん。まあいいんだ。君が1+2を3って書くのは仕方ないこと。でも君がそうしたんじゃない。学校で教えられただけだ。1+2=3がすべてじゃないのにさ。
君は先生が言うことは素直に受け入れる。僕の言うことはちっとも賛成しないね。」
「でも学校で教わることは間違ったことじゃないだろう?間違ってないと思うなら素直に受け入れて当然だろう?」
「間違ったことじゃないよ。1+2=3は正解だからね。ただ、3以外の答えが間違ってるわけじゃない。テストでバツをつけられてもね。」
「けど、バツつけられるくらいなら3って書くことにするよ。」
「先生じゃない、例えば犬とかに1+2=3と教えられたとしたら、本当に3なのかなって疑うだろう?
先生が教えたから、君の中で1+2=3になってしまったんだよ。つまり、1+2=5-2っていう僕の意見を信じない君は僕を信頼してないってこと。
君は僕だから、つまりさ、君は君を信頼してないってことだよ。」
「やっぱ、君は変だよ。」
「僕が変なら君も変さ。さっきも言っただろ?僕は君なんだ。」
「もうきりがないよ。僕らは意見を持つことが出来ないの?」
「出来るよ。でも持たなきゃいけないわけでもない。君しだい。」
「なんだよそれ。」
「だから君しだいで僕も変わる。でも、僕は変えられない。変わらないものなんだ。でも、君が変われば僕も変わる。つまり、君しだい。
君が頑固な性格をこれからやめたら、これからの僕は頑固な性格をやめなきゃいけない。」
「つまり、僕がこれからどうするかによって、君も変わっていく、ってこと?」
「僕は変わるさ。君が変わるならね。でも僕はずっと変わらないものなんだ。」
「君の言ってること矛盾してるよ。だって君は僕しだいで変わってしまうものなんだろう?でもずっと変わらないものなの?」
「そうだよ。」
「矛盾してるって。」
「矛盾してないさ。鈍感だな。」
「じゃあさ、例えば僕がこれから頑固な性格をやめて、人の意見を素直に受け入れながら生きていったとしたら君もそうなるの?」
「もちろんそうさ。けど君が頑固だったってことはずっと変わらないことなんだ。どんなに隠してもね。」
「そりゃそうだけど、じゃあ僕が素直な性格になったとしても、昔は頑固だったってことがひっついていくってこと?」
「君が僕を見ることができるのなら、そう、それが例えば君ってこと。」
「つまり、僕が素直な性格になったとしても、頑固だったことはまとわりついて離れない。
だから、素直な性格に生まれ変わりたい時、頑固な僕は邪魔なんだ。」
「ちょっと待って。なんで頑固な僕が邪魔なんだよ?」
「だってさ、僕が素直になってさ、Yesと言おうとするたびにさ、頑固な僕がちょこちょこ出てきてNoって素直な僕を反対する。で、なかなか素直になれない。」
「それは君が頑固だからだよ。いいじゃん。頑固だった君も間違っちゃいないよ。そのままでいれば。」
「だったら本当に素直になりたかったらどうするの?」
「さぁ?でも前はママの言うことをちゃんと聞いていただろう?いつから信じれなくなったんだい?」
「分からない。素直になれない僕は素直な姿もあったはずなのに。本当の僕はどっちなんだろう?」
「どっちなんだろうね。僕にも分かんない。」
「僕、なんだか分からなくなってきたよ。どうしたらいいんだろう?こんな気持ち・・・
僕は何なんだろう?」
「どっちでもいいじゃないか。素直に生きれば。」
「じゃあ素直に生きればいいの?」
「さあね。分からない。」
「君ってさ、大事なとこ、教えてくれないよね。」
「僕は教科書でも先生でも聖書でもないし、どんなふうに生きるか、選ぶのは君なんだよ。
でも何かを選んでも選ばなくても、君が君であることには変わりない。僕がいる、つまり、君があるってことには変わりない。」
「でもさ、君はさっき素直に生きればって言った。」
「それはさ、誰かに従順であるって意味じゃないよ。君が考えるままにやればってこと。君は今まで選択しながら、変わりながら生きてきたんだ。
君が、たまには素直になったり、たまに頑固だったりしたみたいにさ。」
「考えるままにやれって言ったってさ、本当の僕はどこか分からないよ。僕らしいのはいったいどっちなの?」
「どこかって、本当の君はここにいる。君が君を探さなくても、ね。あたりまえじゃないか。
だって、僕は君とこうやって話してる。それで君らしいのは、どっちもだ。
どっちがいいかなんて僕は言えないよ。何を選択するかが僕らしさを決めるんじゃないかな。」
「どっちも選ばないってのは?」
「あり。」
「じゃあ・・・死ぬっていう選択は?」
「分かってるよ。死にたいんだろう。でも君はまだ死ぬほど苦しんじゃいないよ。」
「でも・・・こんなに、こんなに僕は僕を嫌いになってことない。」
「大丈夫。いつかは見えてしまうんだ。嫌なところが。」
「だってどうすれば、しっかり立てて、強くなれるかとかさ。もう分かんないし、選択しろたってさ、どうすればいいかとかさ、こうすればうまくいくとかさ、誰かがはっきり言ってくれないと、僕はどうしたらいいか分かんないし進めないよ。
こんなに弱い、嫌いな僕があるんだ。」
「分かってるよ。僕も死にたくなってくる。」
「泣くなよ。」
「泣いてるのは君だろ?」
「君が泣くからだろ?」
「ごめん。」
「なんで謝るんだよ。」
「だって君がそう思うのも僕のせいなんだ。君が苦しいのも僕のせいなんだ。」
「泣くなよ。君、さっきは何度も言ったろ?君は僕だって。それは僕のせいでもあるからさ。
それにさっきまで偉そうに話してたくせに急に弱気なこと言うなよ。」
「先に弱気になったのはそっちだろ。僕は知らないよ。」
「じゃあ僕はどうしたらいいんだよ?誰に聞けば分かるんだよ?」
「僕に聞けばいい。誰にも言えないんだろ?僕に聞けばいい。」
「でも、君は答えてくれない。」
「僕は答えは持ってないよ。答えるのは君だ」
「僕はいったいいつになったら大人になれるの?」
「君は大人になりたいの?」
「そりゃそうさ。大人になったら、今の僕みたいに泣かなくていいだろう?」
「どうかな。」
「どうかなって・・・大人になれなきゃ・・・」
「僕は占い師じゃない。どうして君は大人になりたいんだい?」
「なんだか知らないけど・・・ちゃんと立てるようにならないと・・・」
「そんなに背負うなよ。もっと君を弱くするだけだ。
そもそも大人と子どもの境目なんてどこにあるんだい?一生、子どものままじゃ生きていけないわけじゃないだろ?」
「そんなの・・・知らないよ」
「声が変わったら大人。そしたら君は大人って名前だ。」
「違う。」
「べつに、泣いたっていいよ。君が大人でも、子どもさ。泣けないほうが余計悲しい。」
「僕がよく泣いてることを知ってるの?」
「知ってるよ。僕は君なんだ。」
「じゃあ、いつになったら、泣かなくていいようになるの?」
「僕は占い師じゃない。泣いてもいいよ。大人との境界線なんてどこにあるんだって。そんなの君が作っただけじゃないか。」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
「どうしたらいいかなんて、僕は知らないよ。たださ、君は君のままであればいいと思うよ。
かっこいいところもたくさんあるはずだろ?」
「やっぱわかんないよ。そのままの僕が分からないんだ。君は何も答えてくれない。」
「だって、本当の正解なんてないんだ。そしたら君が考えるしかないし。
僕はさ、変えられないんだ。でもさ、君は考えられるし、選択できるし、新しい道を拓くことが出来る。
変わるんだ。それが君なんだ。」
「じゃあもう、僕が僕の答えを出すしかないってこと?」
「うん。君は今までほとんどのことをさ、誰かがつけた道をほんの少しの選択をしながら素直に歩いてきたんだけどさ、きっともう単純じゃなくなってきてるんだ。」
「じゃあもう迷うしかないってこと?」
「でもさ、そんなややこしいことでもないとおもうんだ。」
「また矛盾してきてる。」
「君がやりたいことをすればいい。昔はよく、いろんな夢を持ってた。」
「そんなの・・・忘れたよ。」
「投げだすなよ。君の真ん中にあったことなのに。
僕らはそうやって、たくさんの大事なことを見失ってたくさんのいらないことを拾ってきたんだ。」
「そうなのかな?僕はたくさんの大事なことを捨ててしまってきたのかな?たくさんの大事なことを忘れてきたのかな?」
「うん。でもさ、僕はちゃんと覚えてるし、忘れない。君が、都合よく僕の姿を変えてもね。いつか、思い出すためにあるんだ。
ちゃんと拾い集められるんだ。君がちゃんと探せるように、僕があるんだ」
「大事なことを捨ててきたら、こんな僕になったのかな。」
「時にはさ、大事なことも捨てなきゃいけないこともあるよ。君がそうやって捨ててきたからこそ、今の君があるんだ。」
「もしやり直せたら、うまくいくのかな。こんな僕にならないですんだのかな。」
「どうだろう?今の君がいるから、これからの君がいるんじゃないかな。
だから、君がこんな僕になったってのも、間違ったことじゃないと思うよ。」
「そうなのかな?」
「これからの君のために、今の泣いてる君がいるんだとしたら、泣いてて進めなくて、迷ってる君もさ、素直になれない君も、僕と出会った君も、きっとさ無駄な君じゃないよ。
違うかな?確かに近道じゃないかもしれないけどさ、遠回りでも間違ってはいないはずだよ。
さっきも言ったけど、正解は一つじゃないんだ。」
「これからの僕のために今の僕がいる…ってこと?」
「うん。で、君のために僕がいる。」
「じゃ、悩んでもいいの?苦しむことは間違いじゃないってこと?」
「うん。そこで君が見つけた正しさを信じられるならね。」
「・・・けどさ、君と会ってから、どんどん僕がもっと弱くてさ、汚いものになってる気がするんだ。
僕の嫌いなこところが見えてきてる。嫌だよ。僕。」
「うん。でもさ、強くもなくて、きれいでもなくて、泣き虫で…それが君の姿なんだよ。そうゆう君じゃないと、もう二度と僕に会えない。
いろんな姿を飾ってきた。だから、本当の君が分からなくなるんだ。」
「僕は僕じゃない、いろんなものを飾ってきたってこと?」
「うん。だからさ、今君が見てるのは、君の姿だよ。僕らは鏡なんだって。僕の姿は君の姿なんだ。
君が飾ってきた、心のきれいさとか、いい子ぶりっことかそんなのが君を重くしてきた。
君を重くしてきた。君自身を傷つけてきたんだ。」
「僕がしてきたいろんなことは、僕を苦しめてきたの?意味ないことだったのかな。」
「さっきも言ったけど、無駄なことなんてないさ。あれもこれもみんな君に繋がって、これからの君に繋がってる。
君が傷付いたことも、誰かに優しくしてきたことも、みんな意味ないことじゃないはずだよ。」
「本当に?」
「うん。大丈夫。君は飾らない姿が一番カッコいいと思うから。」
「そっか。ちょっと軽くなれるかも。」
「あっでもさ、飾らずに生きることって難しいことだと思うよ。飾らないこと飾ったらだめなんだと思うよ。なかなかできないことだよ、きっと。」
「うん。そうかもね。」
「でもさ、どんな君も君なんだ。どんな選択をしても、ね。難しいことじゃない。」
「うん。そうだよね。それからさ、君が最初に言ってたこと分かってきた。」
「何?」
「君が僕だってこと。」
「うん。気付くの遅いよ。鈍感だな。」
「そうだね。」
「うん。」
「僕らさぁ、何のために生きてるのかな?」
「何のため?分かんないよ。」
「僕、今少しだけこう思うんだ。君は僕のために生きて、僕は、これからの君のために生きる。
誰かに優しくすることも結局は僕のために生きることなんじゃないかな。」
「つまり・・・」
「僕はいつだって君のために生きてる。つまり僕は僕のために生きてる。」
「なるほどね。」
「だってさ、どこまでいってもいつも僕はいるわけで、僕が無くなる時は僕もないわけで、つまりさ、生きてる間、今、僕が君に出来ることは、僕のためのことなんじゃないかな。」
「そうだね。僕以外に僕はいないからね。」
「つまりさ、僕のために君の声を聞いて、心臓を鳴らして、誰がの声を聞いて、誰かにキスする。
もとをたどればみんな僕のためなんだ、きっとね。」
「うん。なんかすごくカッコいいよ。」
「ね、僕は君にまた会えるかな。」
「僕は君のすぐ近くにいるよ。いつも、離れない。君が忘れなけばね」
「そっか。よかった。」
「僕は君の中にいるんだ。」
「そうだね。君は僕だもん。分かったよ。」
「君はひとりじゃない。ひとりになる時はないさ。だって僕がいる。
ずっと、ずっとね。君が泣いてる時は泣いてる僕がいるし、君が幸せな時は幸せな僕がいるからさ。」
「ねぇ、越えられるかな?」
「大丈夫。いつも僕がいるから。そんなに未来ばかり見ようとしなくてもいい。今の君はちゃんと僕を見れるから。大丈夫。」
「信じていいの?君のこと。」
「うん。」
「本当に?」
「うん。君が僕を信じる時、君は君をしんじているんだ。」
「そっか。ねぇ、邪魔とか嫌いとか、言ってごめん。」
「謝ることないよ。」
「今さ、少しだけ、信じられるかも。君のこと。」
「うん。信じて。僕がいつでも力になるさ。僕は離れないしね。大丈夫。悩んだ分さ、きれいじゃなくても、もっとひとつになれるんだ。
君の涙も笑顔をみんな僕が知ってるし、僕はきっと忘れない。僕は変わらないし、僕は君の鏡だ。
いつも、出会える。」
「うん。傷付いた数だけ、飾りじゃない、本当の強さを持てるって信じてる。なんだか、これからが楽しくなってきそう。」
「そっか。よかった。僕の仕事はそうゆうことでもあるんだ。ちょっとくらい飾ったってさ、僕を忘れないで。」
「うん。ありがとう。君のこと、もう忘れることはないよ。」
「でもさ、いつも僕ばっか見てちゃだめだよ。時には君も忘れて進まなきゃいけない。
僕がいつもあることを忘れてなければいいんだ。」
「うん。」
「これさ、秘密なんだけど、僕ら実は誰かのひとりごとみたいな中で生きているんだ。まぁ、それ自体が誰かの世界なんだけどね。」
「えっ?どうゆうこと?」
「僕もよく分からないんだ。これからどうなるかも知らない。
僕らはさ、未完成の物語なんだ。なんて言えばいいか分からないけど、普通、つまんないようには書かないよ、物語はね。
主人公は大冒険をしたり、大恋愛をしたりさ、いろいろなことをするんだ。平凡には終わらないよ。つまんないもん。」
「これから、いろいろあるってこと?」
「たぶんね。僕らは未完成の物語でも、誰かの物語はなかなか終わらないと思うよ。
だって誰かは僕らはと出会えたんだ。つまり、ここからはじまる物語だよ。」
「ここから・・・?」
「今なんだ。ここにあるのは。過去じゃない。君が流してきた涙とか傷付いたこととか、みんな今、生きることなんだ。
だから、僕はこうやって生きてるって叫べる。」
「生きてるって、“今”ってこと?」
「生きてなきゃ“今”もないし、僕らが出会うこともない。それだけでも、生きてる意味なんだと思うよ。」
「そっか。」
「うん。あとね、うひとつ秘密。」
「何?」
「やっぱり言わないでおこう。」
「何だよ。気になるよ。」
「言わない。」
「ケチ。」
「じゃあ君の秘密と引き換えね。」
「秘密?えっとね・・・そうだな・・・僕、照れるけど、やっぱり僕、12歳までサンタクロースのこと本当に信じてた。」
「やっぱり、そうだろ?」
「実は・・・今でも本当は信じてる。君の秘密は?」
「僕さ、サンタクロースなんだ。実はね・・・・」
「なるほどね。」
最後まで読んでくださってありがとうございました。