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私の分

 このタイトルだが、ご飯や、おやつの話をしているわけではない。よく、ぶ・ぶんをわきまえろとか、分相応ぶんそうおうとか言う。その事なのだが、それで言うなら、私はなかなかよくやっているのではないだろうか。

 私は昼間うつらうつらしながら、お母さんの動きを窺っている。暇そうにしていたら、ここぞとばかりに近づいて、温かい膝の上でごろごろし、おやつをもらう。料理で忙しいなら、くっついて回る。カーテンを上って上から見下ろし、一緒に冷蔵庫の野菜入れを覗き、調味料の引き出しの匂いを嗅ぐ。なかなか刺激的だ。でも、それ以外で忙しそうなら、こっちは寝る。ひたすら、寝る。そしてチャンスが来たら、飛び掛かる。「遊んで~」ってわけだ。夕食後は大体遊んでいるけれど、お母さんはすぐ眠くなってしまうから困る。さっさとベッドに入るとそれきりだ。お母さんが寝た後も家族は起きてごそごそと活動しているので退屈しのぎにはなるが、それもやがて寝てしまう。仕方がないから一人遊び。家じゅうをこそこそ探検し、そうでないときはこれでもかという音を立てて駆けまわり、高いところから飛び降りる。飛び降りると言えば、子供の頃は毎晩ベッドわきのカーテンをよじ登ってベッドで寝ているお母さんの上に飛び降りたものだが、さすがに今ではそこまではしない。そこまではしないで、お母さんがパソコンをいじっている時に、キーボードの上に飛び降りるくらいにしておく。お母さんは慌てるが、これはやめられない。こっちだって遊びたいのだ。

 さて、みんなが寝静まり、こちらも一息つく。そろそろかな。午前三時。お母さんを呼んでみる。甘え声を出してみたり、声を張り上げてみたり、声を小さくしてかすれさせてみたり、情けない声にしてみたりと我ながら芸が細かい。お母さんは案の定それにいちいち答える。そのうちにのそのそと起き出して、「全く」、とかなんとか言いながらキャットフードを出す。そんな話じゃないんだけど。キャットフードはいつも少し残っているでしょ、と思うがこれは変わらない。習慣だな。それからお母さんはトイレに寄る。そうそう、お母さんは起きても明かりは付けない。寝室から隣の部屋を通って餌のお皿がある廊下をすいすい歩く。寝室のドアも、隣の部屋のドアも開けっ放しなので(私が行き来できるように)、廊下のフットライトで十分なのだ。お母さんはキャットフードを出した後、その先のトイレに寄る。そして外で待っている私を見て笑う。

「午前三時にトイレに起きたら、暗い中で目をぎらぎらさせて(そのつもりはない)口の周りをぺろぺろなめて(これは待ち伏せしている時の癖だ)いる猫が待っているって怖いんだよ」

 と言うが、なら、何故笑う? そっちの方が怖いじゃないか。まあ、私や先輩が来るまでは怖がりだったお母さんも、すっかり午前三時の恐怖を卒業したようだ。私の体をぽんぽんとたたき、それからまたベッドに入る。私は軽く二、三回鳴いてみるが、それこそ、をわきまえて、今度は静かにお母さんの枕元にある出窓のクッションで朝日が昇るのを待つのだ。

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