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冒険者たち


 ――永久迷宮(エターナルラビリンス)の前には、ぞくぞくと冒険者たちが集結していた。


「おいテメーら! 冒険者の挟持(きょうじ)、しっかりと見せてやれ!」


 その先頭にはシドの姿があった。


「神の子らよ、感謝します。今こそ冒険者たちの総力を結集する時。正しきお行いをする者に神の加護のあらんことを」


 ロメオの姿があった。


「主と精霊の御名において、この素晴らしき冒険者達に祝福のあらんことを」


 フィオリナが出した水龍がダンジョンの周りを巡り、冒険者達に聖水の祝福を与えていた。


「いざ決戦の時! 我に続けーい!」


 ――ウオオオオオオオオ――――ッ


 アレキシスが叫ぶと、冒険者たちは一斉にダンジョンの中へとなだれこんで行った。


 上層階層の低級モンスターでは、相手になるはずもない冒険者の人数だったが、それでも5階層、10階層、15階層と進むにつれて冒険者たちの数は半減していった。



 ――そして25階層――

 

「偉大なる炎の精霊、イフリートのボーマン様。どうか我らの願いを聞き入れ、ここを通し給え」


 やがて25階層に到達する頃には冒険者たちのパーティーは30ほどしか残っていなかった。


「ご心配なく、我らの半分はここで引き返しますゆえ、ボーマン様の魂を消費することはございません」

「ふん! 人間風情が小賢しい! 事情は知っておる。ヒカルのライフは30。半数では足らんだろう。全員でゆけい!!」

「し、しかしそれではボーマン様。ボーマン様の魂が……」

「フン! ワシもそろそろ疲れた。覚悟は出来ておるわ!」

「ハ、ハハー! 感謝いたします」


 ボーマンの許可を受け、冒険者達は下の階層に向かった。アレキシス達を先頭に段階的に進んでいった。


 ――そして30階層――


「あ、ああああ〜アレキシスぅ!」


 30階層にアレキシスが到達したのは、アリア達が来てから少し経った頃だった。アリアはアレキシスの姿を見ると駆け出し、アレキシスに抱きついた。


「アリア、迷惑をかけたな」


 アレキシスは一言、そう言うだけだった。


「おいおいアレキシス。もう少しいたわってやれよ」

「シド、そんなヒマはないだろう」

「まー、それはそーだがよ。んじゃヤローども! とっととエスケープしやがれ!」

「いや、待ってください」


 シドはこれまでダンジョンマスターがいたフロアでそうしてきたように、冒険者達に脱出を指示した。

 そもそも今回の作戦は30階層に冒険者達が来て、引き返すことでヒカルのライフを復活する、というものだった。しかし、その際通過するダンジョンマスターといちいち戦っていては間に合わない。だから各フロアーのダンジョンマスターを説得し、フロアに到達した冒険者のうち半数は逃げ帰ることでダンジョンマスターのライフを消費せず30階層まで来る、というものだった。


 そのシドの最後の指示をロメオが制止した。


「な、なんでだよロメオ!」

「冒険者達よ。疲れているところ本当にすまないのですが、どうぞ25階層まで戻ってからの脱出をお願いします。ボーマン様を犠牲にしてはならない」

「ああ〜なるほど。そ~いうことかよ」


 ロメオの指示に従って、冒険者達は一旦25階層に戻ると非常口を開け、エスケープしていった。


「よし! そしたら俺達は行こう! 行くぞ!」

「お待ちください」


 シドとアリアを先頭に、アレキシス、ロメオも下の階層に向かおうとした。しかし今度それを止めたのはフィオリナだった。


「な、なんだって言うんだ……のですか!」

「シド様、ロメオ様、アレキシス様……この度のご助力感謝します。しかし、これより先は行かせるワケにはまいりません」

「だ、だからなんでだよ! な、なんでだって言うんですか?」

「邪魔だからに決まってるじゃないデスか」


 いつの間にかフィオリナのそばに立っていたエレナが口を開いた。


「んだとー! クソガキは黙ってろ」

「へぇー、我が名は殲滅の女神エレナ。我が名において命じます……」

「エレナさん、ちょっとここでその魔術は……」

「え? えええええ――め、女神なの?」


 エレナの服装はあまりにも女神像からかけ離れていたのだ。


「シド、慎みなさい。しかし女神エレナ様。なぜでしょう? これでも我らアレキシスパーティはアデステラ最強を自負するパーティ。足手まといというのは少々、聞き捨てなりませんが」


 ロメオもまた冒険者だった。自らの力で道を切り開く冒険者にとって、自身の力への信頼は強く、それを否定されることは我慢できないのだ。


「ロメオ様。貴方がたの力を侮っているのではありません。これはダンジョンマスター同士の戦い。御存知の通り、ダンジョンマスターの命は1つでは有りません。ですから命をかけた技を使える。しかし、貴方がたがいれば、その技を使えず自滅もありうるのです」

「な、なるほど……」

「ったくぅフィオリナ氏は回りくどいのデス。ディアーナ、そしてフィオリナ、そしてワタシ、エレナ、それぞれの技はバカみたいに超超超強力で、冒険者達がいたら、気ままに技をぶっ放せない! と言えばいいのデスよ」

「な、なるほど……」


 シドも、アレキシスも納得するしかなかった。


「そういうことでしたら。フィオリナ様。我らはここで待ちましょう。まだ冒険者たちが協力していてくれるはずですので、その指揮にあたります」

「ハイ! よろしくお願い致します!」


 こうしてフィオリナは下層への扉に手をかけた。

 

 


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