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34/38

1/30の願い


「ふざけるな! ディアーナ!」


 ヒカルが叫ぶと、動かせなかったはずの体がプルプルと震えだした。


「オマエは俺のモノなんだろ? なにを勝手なことを言ってやがる!」

「ふむ。往生際が悪いダンジョンマスターだなあ。彼女は君のために犠牲になると言っているのに」


 デュランが伸ばした拳に力を入れると、ヒカルの拘束が強くなっていく。

 

「グギギギギギィ~ そ、それが余計だってんだよ!」

「い、いい加減にしてよねヒカル! も、もうチェックメイトなんだから。諦めるしか無いんだから」

「おいチッパイ! チッパイのくせに生意気言うなよ!」

「な、今さらそれ? もう怒る気力もないわよ」

「そうか……チッパイ、チッパイ、やーいチッパイ! カップ偽装の女神~」

「ってオイ! ふざけんな!」


 ディアーナは涙を隠すこともせず、ヒカルの方をにらみ返した。


「はは。それでこそだ。それでこそ俺の女神様だぜ。いいか、よく聞けディアーナ。いっちょファイアーバードをぶっ放せ。俺ごとだ」

「そ、そんなことをしたら……」

「いいから俺を信じろ。大丈夫。俺はまだ巨乳ハーレムを達成してない。死ぬ気はないさ」

「で、でも……」

「いいからやるんだよ! 俺の女神……ディアーナ……」

「わ、分かったわよ。ど、どーせ死ぬなら一緒だからね!」


 ――ファイヤーバードォオオオ エグゾースト!

 ――ヴァーン ファイヤ――――――ッ

 

「ふっ、つまらんな。自殺願望かい? 僕は何度死んでも死なないんだぜ?」


 デュランは手の刻印、999/35を見せたまま余裕の表情で避けようともしない。しかしデュランはディアーナの力を読み誤っていた。

 

 ――ジュワワワワァアアアアアア  ドスンっ

 

 デュランの体はファイアーバードに吹き飛ばされ、橋から下へと落ちてしまった。


「ヒ、ヒカル! ごめんなさい。私のせいで……」


 ディアーナは崩れ落ちたヒカルの方へ駆け寄った。かろうじてコントロールしたおかげか、ヒカルの体は焼け焦げてはいなかった。しかし、その空間を支配する熱量は人の生存を許さないことをディアーナは知っていた。


「う、うむ……さ、最後に……お願いがあるんだ……」


 ヒカルは横になったまま弱々しくディアーナの方に手を伸ばしている。

 

「な、なに? なんでも言って」


 ディアーナは自然にその手を取った。


「あ、ああ……ちょっと胸を……揉ませてくれ……この世の名残に……」

「え? ええ……い、いいけど……」


 ディアーナは少し戸惑いながらも、ヒカルの手を自分の胸にあてた。


 ――モミ……モミモミモミ……


「ふむぅ……やっぱBだろ」

「Cよ! じゃなかったDよ!」

「ふふふ……」

「てかなに? あんた最後にやりたいことがそれなの?」

「最後?」

「そーよ。残りライフ1だったでしょ。アンタは死んだら……もう、生き返れないのよ!」

「うむ……じゃあもうひとモミ……」


 ディアーナは、自分の胸を触るヒカルの手の上にもう一度自分の手を重ねようとした。その時――

 

「ん? なにそれ」

「なにって、なんだ?」

「なんだ、じゃないわよ。なによその手は!」

「だからなにがだよ」

「その刻印よ!」


 ――30/30

 

 ヒカルの刻印の残ライフはマックスになっていた。


「ちょっと、なんでライフマックスになってんのよ」

「んなこたあー知らねーよ」

「じゃ、じゃあ、いつからソレ知ってたのよ」

「そ、それは……っていうか逃げるぞ」


 ヒカルは一度橋の下を見ると走り出した。橋の下では特にダメージを受けた様子もなくデュランが見上げている。


「ちょ、ちょっとーっ! 逃げんな! どっちなのよ! 知ってて私の胸触ったんでしょ! ちょ、ちょっとー! ハッキリしなさいよね。燃やすわよ! ファイヤーバード打つわよ! こら!」


 ディアーナもヒカルを追いかけてダンジョンを引き返して行った。


「ふむ……これでお膳立ては整ったかな?」


 そしてディランの姿も消えた。





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