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死と生の条件


「な、なぜダンマスがアンデッドを使役できるの?」


 みるみる湧き上がったアンデッド軍団はデュランの思いのままに行軍している。

 

「ど、どー言うことだ?」

「バカね。少し考えれば分かるでしょう。ダンマスは神から派遣された、言わば神の使いなのよ? それが冥界の者、アンデッドを使役するなんてあり得ない。あってはならないんだからね!」

「フフフフフ……はっはっはっはあ~これだから女神というものは始末が悪い。オマエらが崇める神とやらがどんな代物か理解もしないでな!」


 デュランがヒカルたちのほうを指差すと、一斉にアンデッド軍が走り始めた。


「あわわわわ~どうする? どーすんのよ!」

「と、とりあえずこの橋の上で蹴散らすしかないな。エレナ! 復活したか?」

「え、ええ……服はあらかた……」

「うむ、それは復活しなくてもいいんだが……で? エレナ。オマエの魔法でアンデッドを倒すことはできるのか?」

「む、無理デスよ。だってワタシの魔法は命を奪うもの。命なき者を倒すことはできませんのデス」

「や、やはりなあ~チキショウ、俺のミスだ。フィオリナの聖水ならヤレただろうに」

「後悔してる暇なんてないよ。やつら、見た目より速い」


 ヒカルたちも後退しながらだったが、橋の真ん中程度までアンデッド軍はやってきていた。


「仕方がねえ、やるか……おいエレナ! オマエはつかえねーから、スライムを連れて逃げろ! それとオッパイエルフ! オマエもだ」

「オ、オッパイエルフとはなんだ! 我も戦うゾ」

「勘違いするなオッパイ。戦うな! とは言ってねーぜ。たぶんヤツのことだ、逃げ道にも敵が居るはずだ。エレナもスライムも戦えない。だから、オマエだけが頼りなんだよ。頼むからふたりを30階層まで連れて行ってくれ。そうすればアレキシスがきっとなんとかしてくれるだろう」

「あ、ああ……そういうことなら……承知した」


 アリアは言うが早いか、エレナとスライム両方を抱えて走り出した。その足の速さと言ったらすざましく、あっという間に見えなくなってしまった。

 

「ったくアンタ、口がうまいんだかなんだか……三人を逃がすためとは言え、よくもウソが次から次に出てくるわねー」

「ディアーナすまん。オマエは付き合ってくれるか?」

「ふんっ、あったりまえじゃん。私はアンタの女神様なんだからね!」


 ヒカルは死魂剣(デスペラード)を抱えて走り出した。魂の残量的に偽蝕套(ガウル)は使えない。その生身のヒカルにとって、死魂剣(デスペラード)は少し重い剣だった。


 ――ハッ ヤァ トワッ

 

 生身……にしては頑張った。しかし所詮は人間の体力、不死者たちの尽きることのない力に押されていく。

 

 ――ファイヤーボルト!

 

 ディアーナがファイヤーボールを手に持ったまま敵を殴りつけている。


「お、おい、ディアーナ、それ正式な技なのか?」

「い、いやあ~なんか技に名前ついてたほうがカッコいいかなあーって」

「お、おう。カッコいいぜ」

「でしょでしょ? やっぱ私はカッコいい系女神なのかな?」


 ふたりが戦えたのは立地的な面もあった。とにかく、橋から落とせばアンデッドといえど死ぬ。というか飛び散って土塊(つちくれ)に戻る。だから、なんとか左右に落とせばよいのだ。しかし、やはり多勢に無勢。

 

「キャッ、や! やめなさい!」

「ぐ、す、すまねーディアーナ」


 殴られ、倒され、投げ飛ばされることが多くなっていった……

 

「んー、どこまでやれるか~ちょっと面白そうだと思って見ていたのだが。ま―――――ったくくだらない! つまらない! ので、そろそろ死んでいただくよ」


 ――ガシャンッ ガシャンッ ガシャンッ


 アンデッド軍団が道を開けると、そこには鎧を着た騎士のような者がいた。


「さあ、歴代の勇者より作り出した至高のアンデッド。亡霊騎士ファントマよ! 神の従者を倒すのだ! まずはそこの女神の首をはねよ!」


 ――ガ ガ ガシャ ガシャン


 亡霊騎士が走り出した。ディアーナのほうへ。


「や、やべー、ディアーナ避けろ!」

「キャッ」


 ――斬


「ぐはっ」


 一刀のもと、あっけなく……ヒカルが斬られた。

 

 ――2/30

 

 ヒカルが、ディアーナをかばって背中を斬られたのだ。斬撃による傷口はすぐさま塞がれてはいく。しかし、その痛みは、心に刻まれた痛みは簡単にはひかない。


「ぐぐぐぐぐ………」

「ちょっとヒカル! アンタが死んでも同じなんだから、私なんてかばわないでよね!」

「へへ……同じならさ、女の子が斬られるのを見るのはゴメンだぜ」

「ヒカル……」

「ふむー……やはりつまらないショーだなあ~。最低だ! そして……みたところ……君。残ライフは2! なのかな?」


 デュランは言葉とは裏腹に崩れた顔で笑いをこらえているようだった。


「ふむ、ひとつ私の残ライフを見せてやろうか。物事は公平に行われなければならないからね」


 デュランが右手の甲を擦ると、そこに刻印が現れた。


 ――999/35


「な、なんだと!」


 デュランの刻印は35階層ダンジョンマスターマックスの35を上回り『999』を表示していた。




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