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イフリート VS フィオリナたん


 ――パッパラー パッパッラー パッ パァア――ン


「朝が来た。決戦の朝だ。今日俺は、俺たちは! ボーマンに勝って、巨万の富を手に入れるのだ! っておい! クソ女神どもっ! 起きろってんだよ!」


 ――グガガガガガァアア スピィー


 いつの間にかまた同じベッドでエレナとディアーナは寝ていた。


「す、すみません」

「いやいやフィオリナたんに言ってるのではないです。そこの恥じらいをなくした女神と、死んだように眠る死神女神コンビに言っているのです!」

「す、すみません……」

「いやいや、だからフィオリナたんはOKです! 完璧にマジ女神サマです! そ、それにしても……フィオリナたん……そ、その寝間着姿が……ちょ、ちょっと刺激的過ぎて……布団から出られない状態です」


 フィオリナは、スケスケのネグリジェのような寝間着を着ていた。


「あ、す、すみません。す、すぐ着替えますので」

「うおっ、ま、まだ脱がないでください。後ろ向きますので」


 フィオリナは、立ち上がると即座に寝間着を脱ごうとした。その天然さはヒカルにとって刺激が強すぎたようで、下腹部に朝特有の痛みがムクムクっと立ちあがった。


「よ、よーしエマ! そこで聞き耳立てているのだろう? 朝飯2人分と昼の弁当な!」

「ど、どーして分かった……じゃなくて! 金がないなら朝飯も昼飯も抜きだからね!」

「まーまー、そういうなって。今日はアテがあるからさ」

「いや、そういうセリフって駄目なパタンじゃない?」

「ぐっ、し、仕方ねえ。じゃあこの盾返すからよ。とりあえずそれでなんとかしてくれよ」

「え? いいの? ヒカルって見た感じすげー打たれ弱そうだけど。盾ナシじゃ死ぬんじゃない?」

「いいーんだよ! だいたいその盾、一度も役に立ってねーしな!」

「あらそう。じゃ、ちょーど盾の勇者とかいうのが盾欲しがってるらしいから、そっち回すわ」

「な、なるほど。成り上がる感じか?」

「いや、波がどーとか言ってたけど」

「あ、ああ。それは聞かなかったことにするよ。みんないろいろ大変ってことだな」

 

 そんなこんなで、またディアーナとエレナを無理やりたたき起こすと30階層に時空移動(ワープ)した。


「と、いうことで! 25階層向けてしゅっぱーつ!」

「……ムリ」

「死ぬのデス」

「ダーッ、テンション上げていけよ! ボーマン倒さねーと俺たちに明日はねーんだよ!」

「が、がんばろう……おーぅ」


 フィオリナが小さく拳をあげた。


「お、おう……ほら! フィオリナたんも言ってるだろ! 行くぞ!」

 

 4人はなんとか25階層までやってくると、そーっと中を覗き込んだ。


「ど、どもーボーマンさん! おはよーっす」

「お、お前らは昨日の! よくもぬけぬけと顔を出せたな!」


 ヒカルは夜の飲みがバレたと思っていた。しかし


「勝負の途中で逃げ出すなんて許せん! 無に帰してやるからそのつもりでかかってこい!」

「えっと……昨日の夜のことは? 覚えてらっしゃいます?」

「なにい? 昨日の夜? うーむ……良い酒を飲んだくらいしか覚えておらんゾ」

「ボーマンちょれ~」


 ヒカルは思った。やはりボーマンは直情型、猪突猛進型で騙されやすい性格なのだと。しかも酔ったら記憶をなくすという特典付きだ。つけ入れられないほうがおかしい。


「なにか言ったか!」

「い、いえ……そうしましたら。本日はきっちり、かっきり勝負をつけさせていただきます。そしたら……以後、ここを通していただけますでしょうか?」

「なにぃ! まあ良いだろう。ワシが負けを認めたらな!」

「よし、じゃあフィオリナたん! 頼んだぜ!」

「あ、ハイっ!」


 作戦通り、ディアーナとエレナは下がり、フィオリナが一歩前に出た。


「また女に戦わせる気か!」

「まあ、あれですよ。この女子に勝てるなら、その時はお相手しますよ」

「ぐぬぬぬぬぅ~その言葉、覚えておれよ!」


 ヒカルは、ボーマンが直情型と読んでおり、頭に血が上ると冷静な判断ができないだろうと挑発したのだった。


「あの、そのぅ……申し訳ありません。イフリートのボーマン様」

「ぬ? なんだ?」

「わたくし、水を操ります。ですので、どうかお引き願えませんでしょうか?」

「ぐははははあっ! ワシが炎の精霊だと知ってのことのようだな。しかし、戯言をいうでないわ! キサマごときの水にワシが屈するとでも思うたか! さあ、受けてやるから存分に浴びせてみるがいい!」

「おおー、フィオリナたんってばやるなあ~さらに挑発を重ねて手出しさせないだなんて、女って怖いぜ」

「ヒ、ヒカルさん……わ、わたくしはそんなつもりなど、ないのですが……」

「まあ、いいさ。頼むぜフィオリナたん! いっちょボーマンの旦那をギャフンと言わしてやってくれーい」

「はい……で、では参ります。ボ、ボーマンさま、すみません」


 ――我、聖泉の女神フィオリナの名において命じる。聖なる龍よ、泉より出でて、我が前をその恩恵で満たさん!

 セント・アクア・ドラグーン!


 ズ、ズゾゾゾゾゾォォォオオオオ


 フィオリナが胸元に重ねた両手を開くと、水の流れが飛び出し、うねり始めた。それは竜のようにトグロをまき、フロアの端から中へと埋め尽くしていった。

 

 

 

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