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初めてのパーティプレイ

―鉱山の町ザーラム 商店街通り イサノバ―

 天気の良い朝だった。仕立て屋から出てきた俺は、袖を通したばかりの服の姿に変わっていた。

「あなたの服ってば、変わった作りをしているじゃない。縫い目とかまるで神業。均等でいて、それでなお真っ直ぐに縫い付けられている。布地もかなり上質」

 エルルの鑑定眼というものは適格だった。俺には文明レベルの違いの差異というものが、彼女に言われるまで気がつかなかった。が、言われてみれば納得がいった。

「そっかな? 売れば高く売れるかも。大事に仕舞っておくか」

 さて、服と荷物入れと弓とナイフを買った。どれも冒険に出る上で使いそう、の印象で決めた。弓とかナイフとかの扱いの心得なんて無い。冒険者ギルドのお姉さんに教わったとおり、まずは狩りスキルで弓の扱いを覚えたほうが良さそうだ。

「そうだ、エルルさん」

「ん、なに?そんな呼び名じゃなく、エルル様、とかエルル大神官、と呼んでいいわよ?」

「エルル、冒険者ギルドに行ってみるか」

「なによ!」

 つい俺の反骨精神が。いや、エルルのあれはボケじゃなく本気で言っていたような気がしたので、あえて呼び捨てにしてみた。

 昨日歩いた道を行く。

―冒険者ギルド ゼカイア―

昨日訪れた冒険者ギルド。今度の受付はエルルのほう。昨日会った受付嬢が居た。

「え、あなたの出身地はアルカエイテ? あの伝説の古代都市、アルカエイテ?」

 受付のお姉さんが難しい表情で申込用紙を見ている。伝説の古代都市、その名が嘘でなく、エルルの話も本当ならば、ますます自分も本当のことを言いづらい。

「ちょ、ちょっとまってください。エルルに言って聞かせてきますので!」

 俺は冗談の類のせいにして、一旦エルルと周りに話が聞かれない場所へと移った。

「エルル、俺の話を聞いてくれ」

「え、何? あなたの言ったとおりに書いたはずなんだけど」

 エルルも不思議そうな顔をしている。

「そのことなんだが、実は一つお前も含めてみんなに隠していることがある。実はエルルは俺と会った段階では水晶の中に閉じ込められていて、お前が言う神殿てのは周りの人達は遺跡だと言っていた。出身地の話も、伝説の古代都市、とかさっきのお姉さんが言っていた。つまるところ、エルルはどうも古代人みたいなんだ」

「え、何それ。面白い冗談―♪」

 彼女は信じていないような雰囲気だ。

「俺達の生活費となったあの聖水晶という光る水晶にお前が入っていたんだ」

 俺はあえて真顔で話を繰り返した。

「事情がわからないので、このことは他の人には言っていない。さっきの記載内容も冗談の類だと言っておいた」

「え、なにそれ。本気? 本気なの?」

 俺はエルルを連れて受付嬢のところへ戻った。

「すみません。この子も俺と同じおのぼりさんでして、故郷での冗談をまさかここでやるなんてー、いやー恥ずかしい」

 俺はそう言ってごまかした。

「では、こちらの方も『ニホン』というところからいらっしゃったのですか。わかりました。他は問題ないため受理します」

 そう言うと、受付嬢は見覚えのある水晶球を取り出した。

「では、こちらの水晶球に手をかざしてください。これはあなたの能力を測る水晶球。あなたの成るべき姿を指し示すでしょう」

 俺のときと全く同じ台詞を言った。ロープレだからと言うのではなく、マニュアル的対応なのだろう。

 エルルが水晶球に手をかざす。

「これは…すごい高い知力と信仰心…中級どころか上級職にも成れそうなレベルです」

 大神官というのだから信仰心は高いのだろう。知力については俺の学生服から裁縫、仕立ての文明レベルの違いを看破しているようなものなのだから、相当なものの可能性が高い。

「エルルさんはハイプリーストからスタート可能です。おめでとうございます。100年に一度の人材かと」

 俺はふとさっきの古代都市の話を思い出す。

「おねーさん。そういえば、先ほどの古代都市は何年前に栄えたんですか?」

「え、アルカエイテですか? そうですねーいまから2600年ほど前です」

「エルル。おめでとう。2600年に一度の人材だとさ」

「もっと私を崇めなさい、讃えなさい!」

「あーはいはい。こういう性格の人ね」

「ところで、あなたなんでシシトウなんて呼ばれているの?」

「あー、それか。俺も冒険者ギルドに申し込んだんだが、そのときに名前の綴りを間違えていたみたいなんだ」

「じゃあ、シシトウ。あなたの職業は?」

「秘密だ。冒険者たるもの、真の力はそうそう見せびらかさない、ひけらかさないものさ」

「シシトウさん、パーティたるもの、互いのことを良く知るべし。ですよ冒険者の心構え第⑪条!」

 受付嬢に注意された。ていうか、受付嬢も暗記しているんだ、あれ。

「で、シシトウ。今一度聞くわ。あなたの職業は?」

「……雑用」

「雑用? それはどんな優れた職種なの?」

「仲間のみんなの戦闘以外の面でのサポートを行う万能職さ」

 遠くから「言うねー!」なんて野次が聞こえてきた。

「それでシシトウさん。今日はクエストを受けていきます?」

「あ、はい。できれば狩りスキルを覚えられるとありがたいですが」

「はい。えーと。んー、狩りスキルには直接関わるものがないですね。強いてあげますと、近くの森での採集クエストがありますので、そのときにその森にいる狩人さんに教わると良いかと。他の退治系クエストよりは格段に安全ですよ」

「わかりました。では、これを受注します」

Quest Set! 「森で薬草を採集せよ!」 Get Ready? ………Go!


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