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すべて丸く収まる世界

―共同墓地へと続く街の通り―

 気が付くと俺は担架の上で寝ていた。


「あっ、目を覚ました?」


 むくりと起き上がる。・・・ふと元寝ていた場所を見る。なんだかエルルに膝枕してもらっていたような・・・。


「治癒も体力を使うんだから、シシトウも安静にね」


 エルルは強い語気で俺を怒った。

 周りを見るとゾンビはあらかた倒した後だったようだ。


「もうすぐ、夜が明ける」


 チムチムが言った。どうやらずっと倒れていた俺を看ていてくれたようだ。カルナも心配そうに見ていた。

 俺は起き上がる。東方の空を見ると、ぼんやり白く明るみがかっていた。長い長い夜が終わった。


「「俺達の勝利だ!」」


 バリケード地点から大歓声が上がった。丸々一晩、アンデッドの進行から街を守り抜いたのだ。皆思い思いに健闘を褒め称えあっていた。


Quest Clear!!  Result.

・亡者より街を救った英雄の称号


―冒険者ギルド ゼカイア―

 それは早朝であるにもかかわらずの大賑わいだった。

 酒場も臨時で24時間営業していた。それもそのはず。冒険者ギルドの酒場では戦勝祝賀会が開かれていた。


「やったぜ!」


 俺は上機嫌だった。共同墓地の南側防衛地点の最功労者は俺に決まったようだ。表向きは魔水晶での魔法使用によるアンデッドナイト撃破とされていた。

 祝賀会の主人公は俺だった。


「みなさーん、今日のクエスト大成功をお祝いしましょう!」


 冒険者ギルドに帰ってきた冒険者達を迎えたのは受付嬢やいつもの給仕の女性達だった。今回のクエストに報酬は設定されていなかった。国から色々労われるのはまだ後だった。よって、その日は冒険者達をギルドが労った。

 食べても食べても食べつくせない料理が次々と出てくる。冒険者ギルドも名を上げたので、羽振りのよさがすごかった。


「それでは・・・冒険者ギルド・ゼカイアの益々の発展を願いましてー、乾杯!」


 誰かが乾杯の音頭を取った。ガッチンガッチンとエールのジョッキを打ち付けあう光景が広がる。


「おめでとう、みんな!」


 俺も冒険者ギルドの仲間全員と祝いながら杯を交わしていく。

 しばらくしたら、いつものパーティのみんなのところへと戻った。


「戻ってきたな。本日の主役殿が!」


 カルナが拍手をしながら俺を迎えてくれた。


「私が気まぐれにそなたらのパーティの仲間入りを願ったが、今では街を救った英雄のパーティの一員だ。おかげで私もある程度の自由が許された。感謝する!」


 俺はカルナの身の上の話を思い出した。何らかの恩赦が出たようだが、詳しい話はわからないのでそのままにした。後ほどわかった事だが、アンデッドが押し寄せてくる事件の最中、宝剣の真の名前を開放した事が問われたらしい。一体どれほどの問題だったのかは知らないが、彼女の話しづらい生い立ちに絡むので、こちらからは尋ねられない。


「シシトウ、魔法の使い方。よく直ぐわかった」


 チムチムが感心していた。直ぐにわかったと言うより、いつも矢のようなものが飛んでいたし、魔法にもアローと付いていたので矢を番えるイメージで使ってみただけだった。うまくいって良かった・・・。


「なんだかんだでシシトウはいつも大事な局面で活躍するよね。きっと神のご加護があるのよ」


 と、エルルが珍しく褒めてくれた。実際、冥府の神の加護があった事が判明したのでそうなのかも知れない。相手ハデスの意図はわからないままだが。


「きっと英雄の星の下に生まれてきたのさ!」と、カルナも俺の事を讃えてくれている。俺は気をよくしていつも以上にガバガバと酒を飲んだ。


「俺も頑張った甲斐があるってものだよ!」


 実際のところかなり何度も死を覚悟したので間違ってはいない。その死の覚悟のおかげで黄泉の波動を纏えたらしいが。

 それからは皆冒険者ギルドから讃えられた。カルナ曰く、俺とエルルが目立ってくれたおかげでこちらの素性は表ざたにならずに済んだと言ってくれた。

 俺の活躍と、エルルが蘇生リザレクションを使える最高位神官だと言う事が判明した事が大きい。

 エルルはいまや女神か何かのような扱いだった。それもそうだろうが。

 俺は酒の席での挨拶が一巡して落ち着いたとき、ふと思った。


「異世界転生行きを望んで良かった!」

「え、異世界転生て何? シシトウ」


 俺は思ったことを思わず口にしていたようだ。


「あぁ、なんでもねーよ」


 俺はそういうとその場を後にした。


「おっ、バウエル。人間の宴には退屈そうだな」


 ふと床下を見ると、バウエルはテーブルの下で寝そべってあくびをしていた。


「おっと、急がないと」


 酒を飲みすぎてトイレに行きたくなったのだ。

 いつもの冒険者ギルド内。勝手知ったる場所である。いつものようにトイレを探してドアを開けた。


―生と死の狭間―

 それはアウラ・ノヴァに行く前にハデスと出会った場所。

 気が付くと俺はトイレではなく違う場所に居た。


「ここは厠ではないぞ、シシドウよ」


 ハデスが俺のほうを見ている。


「え? なにここ。え? 俺また死んだの? 何で?」

「死んではいないが厠前のお前は危篤状態だな。急性アルコール中毒。何だ、お前未成年だったのか。酒は呑みなれていなければそうなる。せっかくだ。冥府の特上のワインでもくれてやろうか? 俺様からの迎え酒だ」


 ハデスはクックックッと笑った。

 俺は笑い事ではなかった。


「まぁ待て。今お前のお仲間が緊急で治癒しているところだ。解毒キュア・ポイズンは酒に効くのか?」


 と言うハデスを見ていたら、徐々に体を温かい光が包んだ。


「まったく、この場はそうそう安い場ではないのだがな」


 そういうハデスはどこか面白そうにしている。俺は意識がホワイトアウトしていくのを感じた。



・・・生と死の狭間。その間に残されたハデス一人。


「さて、陪審員の神達よ。生と死の価値の異なる世界を跨ぎながら、全く変わらない男がいたな。世界ごとに死の価値が異なる不公平の件に対する問題提起に繋がるが、あれが特例だとしても人の営みは変わらんと言う事だ。それを示すくらいには役に立った男であろう。俺様があの獅子堂 空無を別世界へ転生させたこと、悪くは無かったであろう?」


⇒はい

 いいえ


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