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またまたハデスの元へ

 カルナが応戦していた。


「不浄な霊め、貴様のようなものに我が剣の名を名乗るのは名折れだが、この窮地に陥った我が未熟さゆえとする!」


 カルナが眼前で剣を垂直に立てる。


「我が魂の刃よ、その真の姿を現せ、エノムスティ!」


 彼女が叫んだのは剣の名前だろうか。本来は名乗ってはいけない剣の名らしい。彼女が剣の名を叫んだ途端、剣の鍔、ガードの部分がバカッ、と取れて、刀身から金色の光が輝き始める。

 その剣の輝きにゴーストが怯んだ。


「我が剣技、この世の見納めにするには贅沢と知るが良い!」


 カルナが一気に間合いを詰め、十字斬り《クロススラッシュ》に幽霊を切り裂いた。

「GYAAAAAAA!」


 幽霊は絶叫を上げ、散り散りに霧散して行った。どうやらあちらも片付いたようだ。

 前線を崩壊させた元凶の二体の魔物を倒した!

 一時は戦況が混乱していたが、冒険者達はその結束であっという間に体制を立て直した。

 バリケードを乗り越えてまだまだ何体ものゾンビが押し寄せてきていたが、後詰めの冒険者達があっという間に撃退していく。

 「お前ら、大活躍だな!」と、冒険者が語りながら前線を交代した。

 俺達パーティは後方の治療部隊の世話になる。


「よかったぁ。シシトウの機転のおかげで何とかなったわね」


 機転だけではなかったが、本当に何とかなってよかった。

 と、俺は担架に乗せられたままのグルドフを見た。


「・・・彼は?」


 治療班の女性が首を横に振った。よく見ると、彼の冒険者仲間と思わしき男が泣いている。


「俺達パーティじゃ蘇生できるほどの所持金は無い・・・。残念だがグルドフは・・・」

「そ、そんな! おっさーん!」


 俺は思わず叫んだ。


「あ、ちょっとまって。蘇生あと一回ぐらいなら余裕はあるかも」


 言葉はわからないが、雰囲気で察したエルルがグルドフに蘇生リザレクションを試みた。

 グルドフの寝ている地面に金色の光の魔法陣が描かれる。


「え、この女性。蘇生が出来るほど高位だったのか!?」


 先ほどの泣いていた男が驚いている。俺も蘇生魔法を見るのは色々な事情があって初めてだ。

 やがて地面の魔法陣が消える。

 グルドフがゆっくりと目を開ける。


「お、俺は生きているのか?」

「蘇生魔法は受ける側も体力をかなり使うから、しばらくは安静にしていてね」


 エルルが額の汗を拭って答えた。顔色が大分悪い。かなり無理をしたようだ。

 グルドフが起き上がる。


「元雑用の兄ちゃん、あんたがアンデッドナイトをやったのか! 俺の眼に狂いは無かったぜ! ありがとうよ!」


 そういうとグルドフは勢いよく俺の背中をドンと叩いた。気が付いていなかったが、俺も治癒を受けて体力がかなり消耗していたようだ。バターンと激しく前のめりに倒れこんだ。視界がブラックアウトしていく・・・。そこから先は記憶が無い。


―生と死の狭間―

 それはアウラ・ノヴァに行く前にハデスと出会った場所。

 気が付くと俺は椅子に座っていた。


「はっ、俺はまた死んだのか!?」


 と、俺の言葉を笑う声が聞こえてきた。


「いや、気絶しているだけだ。お前の魂は何度かここを訪れた為に、この場に来やすくなっているがな」


正面の高台の上に豪華な椅子に座っているのは黒いローブの男。ハデスだった。


「度々訪れる場所ではないが、よほど死が気に入ったのか?」

「そんなわけない!」


 俺は思わず勢いで言葉を返した。が、俺のスポンサーのような相手であったことを思い出して慌てる。


「あぁ、変に気を使わなくてよい。お前はお前のままだ」

「そういえば、黒いオーラを度々見かけたが・・・」


 ハデスがにやりと笑った。


「それは我が加護。黄泉の波動。生と死の狭間に陥るほどに強く輝く。死を強く意識するほど、生を強く意識するほどにな。闇の力ではなく、死の力だ。魔神であろうが、不死者であろうが逃れられぬ『死』の力そのものだ」


 これまでにも何度か窮地で強大な力を発揮した訳を知った。


「たしか、異世界行きの際に、特典のようなものは無いって言っていた筈だ・・・」


 ハデスがまたしても笑った。


「お前の聞き方が悪い。『異世界行きに関して』とお前は尋ねた。俺様の加護は別に異世界行きだから与えるわけではない。俺様が気に入るか気に入らないかだ」


 思わぬ特典があったものだと、そう思った。


「お前の行動は予想の範囲内。いやはや・・・」

「それも予定通り、と?」

「いかにもいかにも」


 ハデスはクックックッと笑った。かなり上機嫌だ。


「期待通りであることには変わらない。行くが良い。シシドウ。お前の帰りを待つ者達の元へ。死の価値の異なる世界ではあるが、そこにはもうお前の居場所がある」


 体を暖かな光が包むのを感じた。

 意識が遠のく。視界がホワイトアウトして行った・・・。


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