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ゴースト

 と、その時、前線から歓声が上がった。漆黒の鎧を着たアンデッドナイトに対峙していたのは、白銀の鎧を着たカルナだった。

 カルナの宝剣の閃きがアンデッドナイトのランスと交差する。双方激しい攻撃の応酬が始まった。

 カルナを応援するように、他の冒険者達もアンデッドナイトを取り囲む。・・・が、魔法と思わしき爆発がそばで起きた。


「なんだ!? 魔法の暴発か?」


 違った。ゾンビの群れの後方から現れた魔術師のゴーストだった。


「そうか! 街の共同墓地だから、冒険者達の死者も眠っていたんだ!」


 それはかつての先達冒険者達の成れの果てだったのだろう。鋭い槍捌きを見せるアンデッドナイト。魔法を使うゴースト。だが、今は生きる者達の脅威となっていた。


「後衛、前衛を補佐しろ! あのゴーストを何が何でも倒すんだ!」


 陣頭指揮をしていた冒険者は叫んだ。前線が崩壊するほどに魔術師のゴーストは危険だった。

 ヒュヒュン。ヒュヒュン! 残っていた狩人達がゴーストへ矢をけしかける。

 スカスカッ、と矢はゴーストをすり抜けた。どうやら物理攻撃無効らしい。


「だめだ。矢が効かない!」


 俺は矢をけしかけようとして、その光景を見て止まった。


「燃え盛る熱意よ、業火となって唸れ。ファイアアロー!」


 チムチムがファイアアローをゴーストへ向けて放った!

 バシュッ! と、ゴーストも同様にファイアアローを放って、ファイアアローをかき消した。


「魔法、相殺された!」


 チムチムが驚いているのが見えた。他の魔術師達も次々に魔法を放つが、ゴーストは腕を一薙ぎし、それらの魔法をかき消した。有効打には至っていない。


「くっ、生前は魔術師だっただけに、魔法耐性まであるのか!」


 陣頭指揮を執る冒険者が驚愕していた。その間にもゴーストは吹雪の嵐を巻き起こし、前衛冒険者達が膝をついていく。範囲魔法も心得ていたようだ。敵も味方もお構いなしに凍てつく吹雪が襲う! だが、ゾンビにはあまり吹雪が効いていない!

 一方的だった。種族と属性相性の違いと言うものもあるのかもしれないが、戦況は一方的にアンデッド軍団に有利に働いている。


「このままじゃまずい・・・あのゴーストを何とかしないと・・・」


 俺はそう呟きながら、ふとあの黒いオーラの事を思い出した。


「そうだ、あの力なら何とかできるんじゃないのか!」


 俺は魔神と戦った時と同じように、指先で矢をなぞった。・・・が特に何も変わりは無い。


「なぜだ! あの時みたいに使えないのか!」


「くっ!」俺はそう漏らしながら、矢をゴースト目掛けて放った!

ヒュッ、・・・スカッ・・・矢はむなしく地面に落ちた。


「どうしてあの時は黒いオーラを纏えたんだ・・・」


 考えるが答えは出ない。

 前線ではカルナがアンデッドナイトとゴーストを相手にしていた。流石のカルナもダメージを負っていた。深手ではないが、明らかに疲労が見て取れた。他にも中級職の冒険者が何人か足止めに廻っている。が、彼らのダメージも深刻そうだった。


「このままじゃカルナが危険だ!」

「シシトウ、カルナの援護に行くわよ!」


 エルルが駆け出していた。彼女は前線の戦況はそれほど見えていなかっただろうが、俺の言葉に動いたようだ。


「危険だぞ!」


 と、叫んだ俺も気が付いたら前線に向けて走り出していた。


前線は二体の魔物の手によって窮地に陥っていた。


「大丈夫か、カルナ。援護に来たぞ!」


俺はそう叫んで、宙に浮いたゴーストの前に立った。エルルはカルナの治療に当たった。

「お前ら、勇気あるヒーラーを守れ!」と、他の前線の冒険者達も援護に廻った。

 不利な戦況ではあったが、前衛に治療役が現れた事でかろうじて戦線は維持された。

 チムチムがファイアアローをゴーストへ向けて撃つが、ゴーストもサンダーアローを放って迎撃された。どうやらチムチムの魔力の高さは警戒しているようだ。他の魔術師達よりも一回りも二回りも大きなファイアアローは直接腕でかき消さない。


「ゴースト。魔力、高すぎる!」

「この死にぞこないめ!」


 ギリシャ転生? で生き返った俺は、自分の事はさておいて、幽霊を罵倒して矢を放つ。ヒュカヒュカと矢が幽霊をすり抜けていく。


「なぜあの時の力が使えないんだ!」


 俺は懸命に応戦するが、ゴースト相手に決定打を与えられずにいた。

 「俺が相手だ。この野郎!」前衛の戦闘職の男が幽霊に斬りかかるが、こちらも空を斬り手ごたえがなさそうだ。


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