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終わらない死闘

 「全員、十分ひきつけてからよーく狙って撃てよー!」と指示が聴こえてきた。闇夜であるので狙撃は難しいが、方角さえあっていればとりあえず当たりそうだった。

 ゆらり、ゆらりと徐々に近づいてくる。

 ヒュン、ヒュンと矢が放たれる音が聞こえ始めてきた。距離があっても当てられる自信のある者達から次々と矢が放たれ始める。俺も負けじと矢を放ち始める。

 ガガッ、ガツッ、ドガッ・・・次々と矢が当たる音が聞こえてくる。

 ドサリ、バタッ・・・何体かのゾンビが崩れ落ちて動かなくなる音が聞こえる。もっとも迫り来るゾンビたちは倒れたゾンビを踏み越えて押し寄せてくる。


「これはいずれ矢が足らなくなるな!」と誰かが叫んだ。

 その時であった。炎の矢がゾンビの一体を弾き飛ばして倒した。

「我々がいるのをお忘れなく!」魔法使いの男がゾンビを一体仕留めてそう言った。そう、魔法使いも同席している。


「精神力、続く限り、魔法、放てる」


と、そういうとチムチムもファイアアローを放った。先頭のだけでなく、後ろの二,三体をも巻き込んで倒している。


「精神力の続く限りってことは、そちらにも攻撃手段に限りがあると言う事か・・・」


 今までの冒険は戦いが長期化する事は無かった為、チムチムの精神力が切れると言う事は無かった。だが、今日の戦いは持久戦だ。

 木や鉄の矢と魔法の炎の矢や雷の矢が飛び交う。

 が、倒れたゾンビの後ろから、新たなゾンビが次々と現れる。


「大量のアンデッドってのは本当だなぁ!」と、誰かの弱音が聞こえてきた。実際のところやはりゾンビ映画さながらの数が押し寄せてきている。


「西洋らしく土葬ってわけかよ! せめて半分は火葬にしてくれ!」


 アウラ・ノヴァの埋葬方法の主流は土葬のようだった。・・・押し寄せてくる彼らも元は街の住民だったのだろうが、今はその有様を悼む余裕はなさそうだ。


「たった今、そうしてやろうとしていたところさ!」と、近場の魔術師がファイアアローを放ちながら言った。なるほど、ファイアアローが当たったゾンビは燃えながら倒れた。


 戦いは一方的な攻勢から始まった。こちらは飛び道具。彼らは徒歩でゆったりと回避行動も取らずに歩いてくる。

 だから不気味だった。あれらに押し寄せ迫られたらどうなるのか、と。

 「撃て撃てー! 怯むな、休むなー!」と怒号が聞こえてくる。

 徐々にゾンビたちは近づいてくる。

 ドカッ、ガズッ、ボワッ! と矢の中に混じり、炎の矢がゾンビを燃やす音。その音も徐々にバリケードに近づいてきた。段々とゾンビの顔がわかるくらいにまで近づいてくる。

 「まずい。このままだとバリケードにまで届かれる・・・」と誰かが言った。

 ドガッ、ドガッ、ドガッ! 断続的に何かを叩くような音が続く。

 「このおっ!」と誰かが叫んだ。見ると、ゾンビの一体がバリケードを叩き割ろうとしていた。そのゾンビが頭部に矢を貫通させて倒れた。が、次々とゾンビたちが押し寄せてくる。

 ドガッ、ドガッ、ドガガッ! バギッ! 一際激しい音と共に、バリケードの一角が叩き壊された。その様子からも見てわかるとおりに、かなりの怪力のようだった。

 バギバギ、メキメキメキメキッ、メリメリッ! と、木のバリケードをへし折り破る音が聞こえてきた。


「バリケードが破られる! 射撃隊、さがれーっ!」と合図が聞こえた。


 先鋒射撃部隊は総員退避だった。さすがにゾンビと白兵戦をするには分が悪すぎた。


「後は俺達に任せな!」


 筋肉質のごつい者達が入れ替わりに前に出る。戦士系職業を中心とした白兵戦部隊だった。


「シシトウ殿、チムチム殿、お疲れ様。今度は私達の番だな!」


 と、カルナはそう言うとスラリと剣を抜いて前へと駆け出していった。


「接敵するなら私達も忙しくなるわね」


 と、エルルも後方待機してヒーリングをいつでも出来るように待機した。バリケードを抜けてきたゾンビたちを戦士たちが迎え撃つ!

 俺達後衛職は後方待機で撃ち漏らされたゾンビがいないか警戒をしながら様子を見た。

 始めにゾンビ達と接触してから30分ほど経っただろうか。


「今日は夜明けが待ち遠しいな・・・」と誰かが言った。その人物のいうとおり、今夜は時間の流れが遅く感じた。少しでも早く日の出を拝みたかった。だが、夜が明けるまでは後数時間はある。

「前衛たちが頑張っている間に、何人かは矢を補充するんだ!」と誰かが檄を飛ばした。慌てて何人かが後方の町の方へと駆け出して行った。

 俺もチムチムも後方に詰まれた木箱の山に乗り、バリケードの向こう側へと攻撃を続けた。その様子を見て他の冒険者達も続いた。

 さらに30分が経過した頃であっただろうか。

 突如前衛でワーワー! という喧騒が大きくなった。後方の治癒部隊に運び込まれる負傷者が増えた。


「なんだ? 何かあったのか?」


 俺は戦況の変化をいち早く見抜き、前衛を見た。

 ランスと盾を持ち、漆黒の鎧を着たナイトが、これまたゾンビの馬に跨って前線に立っていた。

 3人の冒険者が馬に乗ったゾンビに突進する。・・・馬に乗ったゾンビも突撃する。・・・3人の冒険者達が軽く吹き飛ばされて宙を舞った。

 チャージ。乗馬するものがランスなどで突撃するアーツ。一撃の威力は普通の歩兵の比ではない。

 馬に乗ったゾンビは巧みな槍さばきで次々と冒険者達をなぎ倒していく。


「なんだ、あいつは? このままじゃまずいぞ!」

「シシトウ、どうした?」


 まだ、後衛で気が付いたのは俺だけだったようだ。俺は後方指揮を執っていた冒険者に駆け寄る。


「大変だ! 前衛に馬に乗ったゾンビが前衛を破り始めた!」

「・・・!? なんだって? そいつはアンデッドナイトか! 大変だ! 中級、上級職の冒険者をぶつけないと!」


 陣頭指揮を執っていた者が慌て始めた。


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