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仲間というもの

「みんなカルナを歓迎しているよ」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


 カルナが小さくほほ笑んだ。笑うと可憐な女性と言った感じである。普段の鎧姿からは似ても似つかぬ雰囲気がした。・・・剣の流派も名乗れないと言った彼女は、おそらく相当な由緒ある剣術を学んだのだろうと考えた。そして、恐らくは父親と思わしき存在から貰ったであろう剣を携えて。・・・彼女は貴族の貴婦人のような格好ではなく、貰った剣にふさわしい女性になろうとしたゆえに白銀の鎧を纏うようになったのだろうかと、そう思えた。

だが、それゆえに上級職のソードマスターは選べなかったのだろう。なれるだけの実力はあるらしいが、流派を名乗る事ができない。だから控えめの下級職をあえて選んだのだろう。


「ん? あぁ、この剣か」


 カルナが俺の視線に気が付いたようだ。


「その剣。きっと大事なものなんだろうな、と思ってさ」


 俺の言葉に彼女が嬉しそうな表情を浮かべた。


「そうだとも! この剣こそが私の証明。唯一直接授かった賜物。この剣こそが我が誇り」


 カルナは剣の柄を大事そうに撫でた。


「しかし、なんでまたそんな大事な話を黙っていたんだ?」

「訳あって名乗れないと言っただろう? いつどこで誰の聞き耳があるかわからなかった。この先も可能な限りは秘密にしていてくれ」


 今日の話は俺とカルナの秘密の共有のようだった。エルルやチムチムに話したい気もしたが、彼女のクライアントからの話以上に守秘義務が必要そうな話だけに躊躇われた。


「私はそのような生まれなのだが、なぜかいつも不運に見舞われる身でな。色々と『自然の災い』などに遭遇しやすいのだ。天候もそうだが、魔物などの類とも良く遭遇する」


 魔物の類と遭遇しやすいのならば、それは冒険者が天性の職業だと言えなくもなさそうだった。


「お目当ての魔物と出会いたい職業、冒険者へようこそ。ギルドのみんなも歓迎していたし、きっと天職だと思う事だろうよ」

「なら良いのだがな」


 彼女は剣の腕も立つ。きっと良い冒険者になることだろう。出自の件はおおっぴらに出来そうに無いが。


「大丈夫、トラブルなんて自分から突っ込んでいくのが俺達冒険者さ!」


 俺はいつも遭遇する厳つい冒険者達のように親指をぐっと立てて笑った。


「ありがとう」


 カルナは小さく笑った。

 外を見るといつの間にか雨は上がって晴れていたようだ。


「お、青空が広がり始めているぞ」


「この分ならもう少しローリングロック退治をして帰れそうだな。私は既に三体討伐したが、シシトウ殿は現在何体か?」

「俺はまだ二体だよ。そっか。競争は継続中か」

「当たり前だ。帰路に着くまでが狩りなのだからな」


 家に着くまでが遠足です、見たいなことわざでもあるのだろうかと思った。


「よーし、俺も負けていられないな! この後の作戦はどうする?」

「先ほどと同じ戦法なら安全だ。まずは回避に専念し、近場にとまったやつを狙えばいい」


焚き火を消して外へ躍り出た。

 濡れた斜面に気をつけるくらいで、晴れて見晴らしがよくなった状況では、ローリングロックを看破し避けるくらいは造作も無かった。

 再びローリングロック退治に専念する。

 がこっ、がこっ! とカルナが次々とローリングロックを砕いて廻る。

 ズガッ、ズガッ! と俺も次々と転がってきた岩を撃ち抜いていく。・・・たまに本当の岩があるので射程の有利だけで勝負は決まらなかった。

 一時間ほどローリングロック退治を続ける。


「俺はこれで二十三体目か。結構倒したなぁ」


 つい今しがた打ち抜いたやつにも顔があるのを確認した上で、矢筒の残りの矢を確認した。残りの矢は僅かしかない。


「私はこれで十七体だ。上出来だろう。これくらいならな。どうやら私の負けのようだな」


 この分だと矢が足らなくなって戦闘を継続するのは困難だろう。


「現時点なら俺の勝ちかな? だが、矢も無くなりそうなんだ」

「もうそろそろ切り上げる頃合いだ。時間無制限と言うわけには行かないから、私がおとなしく負けを認めよう」


 なんだかんだで射程距離の差で勝てた。そしてカルナは潔く負けを認めた。長期戦ならどうなっていたかはわからない。


「今日は勝ちを譲ってもらった感じかなぁ」

「なぁに、次は私が勝つ。シシトウ殿、また付き合ってくれ!」


 カルナはどこか楽しそうだった。ずっと胸のうちに溜め込んでいたことを話した事もあってか、晴れ晴れとしていてどこか気が楽そうだった。


「さぁ。シシトウ殿。今日はもう帰ろう」


 そういうとカルナは先頭を歩き始めた。

 俺はふと先ほどの会話を思い出した。


「なぁ、カルナ。何かあったときはみんなを頼ってくれ」

「どうしたんだ? 急に。・・・まぁ、前向きに検討してみる」


 彼女の不運はきっと偶然くらいに思う程度のものだった。たいした問題ではないさ。それに彼女の出自の件も。


「きっと、みんなでカバーできるさ」


 少し先を行くカルナには聴こえない程度に、俺は独り言を呟いた。


Quest Clear!!  Result.

・ローリングロック討伐四十体分(2,000G獲得!!)


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