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岩の魔物

―冒険者ギルド ゼカイア―

 昼過ぎの冒険者ギルド。朝の苦手な冒険者を除いて、みなクエストに出立した後だった。

 俺とカルナはクエストボードを眺めて廻る。


「やはりこんな時間じゃあ、ろくなクエストは残っていないなぁ」


 ある程度予想はしていたが、大半のクエストは既に受諾した冒険者が決まった後だった。


「ならフリークエストを受けよう」


 カルナが一枚のクエスト用紙を手に取る。それは一定期間内に特定モンスターを倒せばよいという街の治安維持組合が定期的に出すクエストだった。

 受諾する必要は無く、討伐した証明が出来ればよいだけの誰でも参加できるクエストの為、フリークエストと呼ばれていた。


「オッケー! 直ぐ近くなら楽でいいんだけど」


 カルナが手にしたクエスト用紙を覗き込む。地図で見ると、街の直ぐ北西の荒れた岩山だった。


「日帰りで行ってこれる場所のようだ。低い山だから危険はそれほど無いだろう」


 カルナの提案に俺は乗った。


「エルルとチムチムはどうする? 一応今日は休みの日の予定だが」

「無理に連れて行く必要もあるまい。近場で危険度は低めのクエストだ。我々だけでも対処可能なはず」


 以前も俺はエルルとザーラムの近くの森へ2人で採集クエストに行った事がある。難易度はそのときとほぼ同じだった。だからそれほど苦労はしないだろうと考えていた。

 カルナの不運という特徴が無ければ、そうだったかもしれない。


Quest Set! 「岩の魔物を退治せよ!」

Target Monster「ローリングロック」Get Ready? ………Go!


―ザーラム北西の荒れた山―

 そこはザーラムの鉱山のある山から少し先の山だった。鉱山の山と途中で重なる部分もある。近場と言えば近場だが、まだまだ自然が多く手付かずの地域のようで、開拓に先立って荒れ山の魔物討伐を推奨されていた。

 今回のクエストもその一環だった。


「ところで、討伐対象の魔物はどんな魔物なんだ?」


 なだらかな山を登りながら、俺はカルナに尋ねた。


「山の上部から転がり落ちてくる岩の魔物だ。ローリングロックと呼ばれていて、最初に転がって来た時に避ければ楽勝の初心者向けの魔物だ」


 それはつまり、山の頂側に警戒していれば良いと言う事らしい。俺は狩人の固有スキルの『観察眼』があるので、少なくとも奇襲を受ける可能性は少ない。


「なら、俺は索敵役をやろう。固有スキルの出番だぜ!」


 矢よりは斧や槌のほうが有効そうな気がする。鉱夫の道具のつるはしがあれば、特効可能な武器だったかもしれない。


「ふむ、シシトウ殿は武器を新調したのか?」


 カルナが俺の背中にあるボウガンに目を留めた。この間の報奨金を使って購入した街の武器屋で一番値打ちモノのボウガンだった。

 威力はきわめて高く、連射性も高い。そして木の矢ではなく鉄の矢を購入した。


「俺の攻撃力もかなり上がったんだ。これならキラーグリズリーも倒せそうだな」


 ボウガンは通常の弓より威力が高く、射撃精度も高く、射程も長い。いい事尽くめの武器だった。現実では西洋の戦争でボウガンが登場したとき、あまりに威力の高い武器であった為、使用が禁止されたという逸話もあった。


「では、どちらがより多くの魔物を倒せるか、競争しよう!」


 カルナが狩り競争の提案をしてきた。なるほど、それなら励みにもなる。


「いいだろう。上等だ。乗ってやる!」


射程が長い分はこちらのが有利だ。と、そう判断した。勝機はある。


 2人で意気揚々と山を登る。貴族は狩りを嗜むようで、それなりの家の出自となるカルナも楽しそうだ。

 巨石などが転がる荒地のなだらかな山だ。木々はまばらで見通しは良い。このまま行けば順調に山を踏破可能だろう。

 だが、しばらくしたら天候が荒れ始めた。


「おっと、雨でも降ってきそうだな。街にいたときは晴れ空だったのによ」


 山の天気は変わりやすいと言うが、高山ほどではないので問題はないだろうと考えていた。だが、あっという間に黒い雨雲が空を覆いつくす。


「ふむ、これでは一雨来そうだな。少し急ぐか、どこかで様子を見るか・・・」


 と、カルナが言いかけたときバラバラバラッと何かが降って来た。


「岩の魔物か!? ・・・いや違う、雹だ!」


 握りこぶしくらいの氷の塊が振ってきた。近場に岩に当たって氷が砕ける。


「シシトウ殿、頭部を守れ! 一旦避難しよう!」


カルナが篭手で自らの頭部を守りながら駆け寄ってきた。俺もそれに習って頭部を腕でガードする。篭手などは無いが、頭部へ雹が直撃するよりはましだろう。

 と、今度はゴロゴロゴロ! という音が聞こえてきた。


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