二人クエスト
―拠点にしている掘っ立て小屋―
前回のクエストでは大手柄だった。しばらく遊んで暮らせるだけの資金を手に入れた俺達は、その日は昼まで寝て過ごしていた。
俺は目を覚まして辺りを見回す。ボーっとした頭で思い出そうとするが、昨晩は夜遅くまで飲んでいた記憶しか残っていない。エルルもチムチムもカルナもまだベッドで寝ている。
「ここも手狭になったもんだなぁ」
と、俺はそんな事を言いながら、ベッド脇のナイトテーブルの水差しから水を注ぎ、ぐいっと飲み干した。
バウエルが目を覚ました。
「よぉ、バウエル。たまには普通の散歩でもするか」
普段はクエストが散歩コースだ。それでもクエストに出掛けるときは連れて行けと吼えてうるさい。
リードに手をかけたら尻尾を振って駆け寄ってきた。
「『動物会話』も早く覚えたいよなぁ」
だが、付近で動物会話を身につけているものは居なかった。山中の狩人などが所有している事が大半で、街中に住む狩人たちにはあまり一般的ではないらしい。
―ザーラムの小道―
名も無い小道。
既に時刻は昼であるのでそれなりに人通りはあるが、それでも大通りほど人は居ない。
「ハッハッハッハッハッ」とバウエルが息をしながらリードの先で歩いている。
リードを引く俺は目的地を決めてはいない。今日も休みだ。どこで過ごそうが自由である為、気ままにぶらぶら歩いている。
「なんか腹減ったなぁ」
近場のパン屋で売り出されていた肉を挟んだバターロールを二、三個買う。バウエルにも一個あげた。
通りのベンチでパンを貪る。ついでに買ったお茶でのどを潤す。
「おー。何て平和なんだ。毎日こうならいいのにな」
通りを行き交う人を見ながらそんな事を思う。
と、その中に見覚えのある顔が歩いていた。カルナだった。
「ん、あそこにいるのは・・・おーい!」
俺はカルナに声をかけた。相手も気がついたようだ。
カルナが歩いてきた。
「誰かと思えばシシトウ殿か。バウエルと散歩かな?」
「あぁ、そうだ。いつもみたくクエストへ散歩に連れて行ってばかりじゃ可哀想だからな」
「たしかに過酷な散歩道になるな。シシトウ殿もたまには休まれたらよかろう。聞けばしばらくはクエスト続きだったらしいではないか」
「あぁ、馬車を買って所持金に余裕がなくなったんだが、この間のクエストのおかげで今じゃ、以前より所持金が増えたよ。偶然とはいえ、魔神に出くわしたおかげだな!」
カルナは俺の言葉を聞いて、何か思うところがあったようだ。
「ふむ。シシトウ殿は魔神と遭遇したのは偶々だと思うのか。・・・あれも私が居たせいでそうなったのかもしれないが・・・」
俺はあの時のことを思い出す。壁が消えたのもどちらかと言えば自分のせいかもしれない。
「あれは偶然道が開いたからそうなっただけさ!」
未だにあの黒いオーラの事はわからないのでごまかした。
「そう思ってくれたら気が楽で助かる。・・・私は生まれてこの方トラブルに遭遇する性質のようで、あれさえもがそのせいではないかと言う気がしてならないのだ」
「それは流石に考えすぎだろうよ!」
カルナがしばし考え込んだ。
「ふーむ。それなら今日一日、シシトウ殿は私と行動を共にするか? もしかしたらそれでわかる事もあるかも知れぬぞ?」
「へぇ、そんなに変わるものなのかな。大体この間のクエストは特に変わったことは無かったように思えたが・・・」
と言いかけた所で、この間に変わったことが起きたのは自分だった事を思い出した。
「無くはないが、あれは俺のほうもいろいろあったから・・・」
「色々と言えば色々だが、私には大分変わった事があったように思えたが」
魔神を討伐した日は皆無事で何事も無く終わりはしたが、俺自身を含めて何事もありすぎた一日だった。俺とカルナが揃うと何かが起きるとかそういう話なんだろうか。
「なに、私といればいずれはわかるさ。周りの者達にも少なからず影響を及ぼすからな」
そういう彼女の横顔はどこか悲しそうだった。きっとそれで身近な人達と離れて暮らす必要性などがあったのだろうか。
「そこまで言うなら、ためしに一日一緒に居ようじゃねーの! 冒険者稼業、トラブル上等だぜ!」
何かあるから必要とされる商売。なら、カルナの悪運はあるいは仕事の助けになるかもしれない。
「では、何もしないでぶらぶらするのもなんだ、何か請け負えるクエストが無いか探してみよう」
カルナの言葉に俺は頷いた。
「あ、バウエル。今日はお留守番な! 毎回クエストが散歩コースも過酷過ぎるだろう」
バウエルはどこか悲しそうな表情で「クーン・・・」と鳴いた。




