謎のオーラ
Boss Monster Encounter! 「入り江の魔神」
魔神が口から白い煙のような息を吐く。低いうなり声が聞こえてくるようだ。
「ガウガウ!」
バウエルが懸命にほえている。
「お前は危ないから下がっていろ!」
俺はバウエルにそう命令した。
バウエルはたったったっと部屋の入り口まで行くが、それ以上は逃げずに振り返り、魔神のほうをめがけてほえ続けていた。
「私が前に出る!」
カルナが抜剣し先頭に飛び出した。それを合図に他のみんなもいつものフォーメーションを組む。
ガキン! カルナの鋭い一撃は、魔神のかぎ爪と火花を散らしあう。
ヒュバッ! その剣戟の応酬の合間を縫って俺が狙撃する。
バチン! と魔神のかぎ爪が矢を叩き落す。
「なんて動体視力だ!」
飛んでくる矢を叩き落せるなんて!
「裁きの雷よ、悪しきモノを打ち滅ぼせ! サンダーアロー!」
チムチムの紅玉のロッドから雷光の矢が放たれる!
バシュ! なんと魔神は翼を畳み、その翼で雷光の矢を受けきった。
ズガッ! 魔神は攻勢に移り、カルナをかぎ爪で襲う! カルナはその攻撃を剣で受け止めた。
「グァハハハ! グァァァ!(他愛ないわ! 滅びるがいい!)」
魔神がかぎ爪、翼、鋭いとげを持った尻尾を次々と繰り出し、カルナへと連続攻撃を仕掛ける。
ドガッ、ガガッ、ズガッ! ・・・ドゴォ!!
クリティカルヒット!
魔神のかぎ爪がカルナの鎧を直撃する!
魔神の怪力によって、カルナが横薙ぎに吹きとばされる。俺は弾き飛ばされたカルナを受け止めようと飛び出したが、後方にいた俺ごと壁際まで弾き飛ばされた。
全身に浅いが細かい傷だらけのカルナが、鎧の上からの重い一撃を受けて気絶した。
俺は立ち上がり、パーティの先頭に立った。エルルがカルナの傷の治癒を始めた。時間を稼いだほうが良さそうだ。・・・何ができると言うわけでもないが。
「ゴォアハハハァ!(仲間と仲良くあの世へと旅立つが良い!)」
魔神の笑い声ともつかぬ勝利への確信の声を聞いた気がした。
魔神が全身に力を溜め、両腕に魔力を充填させる。黒いオーラが魔神の腕を循環しほど走る。
魔神の両腕から作り出された暗黒の球体が宙に浮く。
「ゴファファファ!(とどめだ、ダーク・フォース・インパクト!)」
魔神が俺達に向けて暗黒の球体を飛ばす!
ギュワァァァ! 先頭に立つ俺は、せめて時間稼ぎでも出来ないかと思ってみたが、飛んで来る魔力の塊を見て体が硬直し、思わず眼前を腕でガードして防ごうとした。それがどれほど有効なのかは高が知れているが。
暗黒の球体が直撃する!
・・・暗黒の球体は俺の体を直撃した。
直撃したはずだった。無残に引き裂かれたのは暗黒の球体のほうだった。
俺の体で真っ二つに切り裂かれた球体は後ろのパーティメンバーには当たらず、それより遥か後方の壁に激突して激しい爆発が起こった。
俺の体の回りにちぎれて残った暗黒の球体のかけらが、まるで吸い込まれるように俺の体に取り込まれる。
「ゴォア!?(なんだと!?)」
魔神は混乱している。状況が理解できていないようだ。
俺の体から暗黒の闘気のようなものが立ち上る。
黒より黒い黒。漆黒の闇。光さえもを切り裂くような暗黒。
この黒いオーラを、以前にもどこかで見たような気がした。
「ゴブァァァァァァ!(なんだそのどす黒いオーラは!)」
俺の様子に魔神は明らかに戸惑っていた。
「・・・こいつでいけるのか?」
俺は手のひらからほど走る黒いオーラごと、矢を手でなぞった。
矢に暗黒のオーラが纏われる。
俺は矢を番え、弓で魔神を狙う。
魔神は動揺している。
俺はその隙を逃さなかった。狙い撃つ。少なくとも外す気は起きない。
ヒュパッ! 黒い軌跡を描いて矢が飛ぶ!
魔神は再び矢をかぎ爪でなぎ払おうとするも、かぎ爪のほうが折れ飛んだ。
ドガッ!
クリティカルヒット!
今度はこちらの一撃が魔神に撃ち込まれた。かなりの有効打だったようだ。
「ギャアアアアア!(この暗黒の力は、バカなぁぁぁ!)」
魔神が圧倒的声量で叫び声を上げた。苦悶の表情を浮かべて矢で穿たれた胸を抑える。
「後は私に任せろ!」
カルナが飛び出した。エルルが全回復させたようだ。
「我が全身全霊の一撃を受けてみろ!」
カルナは防御をかなぐり捨てた一撃を放つ。防御や回避を全くしないで全力で攻撃するアーツ、『パワースラッシュ』だ。
ガズッ! カルナの剣が魔神を袈裟切りにする。
「ゴォアァァァァァ(そんな、バカな。この俺様が・・・)」
魔神は両手を天に掲げながら魔法陣の上に崩れ落ち、そのままゆっくりと体は消えて行った。
「やった・・・のか?」
俺は思わずそう言葉を漏らした。
みなが心配そうに魔神の崩れ落ちた場所を見続けている。
シーンと静まり返り何も起きない。
Victory! 「魔神のかぎ爪×1」
「倒したみたいね・・・」
エルルがほっとしたように息を漏らした。
「シシトウ、大戦果」
チムチムが拳を突き上げ、勝利のポーズをしている。
「シシトウ殿にあれほどの力があったとは・・・。いやはや、驚かされた」
カルナも俺を労った。
「ワンワン!」
バウエルが飛び出してきて、俺の足元まで走り寄ってきた。
「みんな・・・無事のようだな」
俺は全員の無事を確認した。
「何だったのかは良くわからないが、魔神を討伐しちまったな・・・ハハハ!」
俺は思わず笑い出していた。
「ハハハ、じゃないわよ。何だったの、あれ?」
エルルが半分怒りながら俺に聞いてきた。
「何って言われても、何なんだろうな。俺にもわからねえよ!」
そう言うしかなかった。
「まぁまぁ、みな無事でよかったではないか。なんにせよ、あの魔神を討伐したのならこの一帯の入り江の海の平和は戻った。大手柄だぞ」
カルナが間を取り繕った。
「こいつぁ、帰ったら大宴会だな」
俺はそう言うと、なんだか疲れを感じてその場へとへたり込んだ。緊張が解けたようだ。
「じゃあ、早く帰りましょ」
へたり込んだ俺を見て、エルルが笑いながらそう言った。
思いがけずクエストは大成功。早く冒険者ギルドに帰って、馬鹿でかいローストチキンにでもありつきたい気分だった。
暗闇の洞窟内に、仲間達との笑い声だけが響いた。
Quest Clear!! Result.
・魔神討伐報酬10万G
・入り江を騒がしていた魔神討伐の名声
・1000G(スケルトンのドロップ品売却)




