洞窟
洞窟の中にもぐる。松明の火が洞窟内を照らす。全てを明かりで照らす事が困難で、死角からなにか現れないかという恐怖を感じる。
「良く考えると俺はダンジョン探索が初めてだったな・・・」
洞窟内にトラップが仕掛けられていないか気にかかったが、自然の洞窟内であるため恐らくはそのようなものは無いだろう。
「私も初めてだ。エルル殿やチムチム殿は?」
カルナの言葉にエルルもチムチムも首を横に振った。なんだ。ダンジョン探索自体が珍しいクエストだったのか。
「私は殆ど館暮らしだったものだから、今はとてもわくわくしている」
そんな事を言いながら、カルナはとても上機嫌だ。
俺もダンジョンなんてゲームでしか探索した事は無かったから、ある意味ではどきどきしている。トラップは無くとも、どこからとも無く魔物が沸いて出てくるらしい。蚊みたいに沸いてくるのだろうか。まぁ、そんなすぐに遭遇する事は・・・。
そんな他愛ない話をしていたところ、バウエルが前方に向かって低くうなり始めた。
と、しばらくした頃だった。かっちゃかっちゃと何か乾いた音が近づいてきた。
みな緊張の面持ちで警戒する。カルナはシャッと剣を抜いて構え、チムチムもルビーの杖をぎゅっと握った。
・・・前方から剣と盾を持った2体の人骨が歩いてきた。
Battle Encounter! 「スケルトン×2」
カルナを先頭に、俺とチムチムがその後ろに立つ。通路はそこそこに広いので、一体は抜けて中、後衛までやってくる可能性がある。
「GOGAAAA!」
スケルトンの1体が雄たけびを上げながらカルナへと切りかかる。既に前衛は切り結び戦端がひらかれた。
「残り一体は任せた!」
カルナの声に俺もチムチムも身構える。
俺は速攻で脇を抜けてきた一体を弓で狙い打つ。
「あぁ?」
矢は胸骨の隙間をすり抜けて飛んで行った。ヘッドショットでも決めなければ決定打を与えにくいようだ。
カルナともう一体のスケルトンがキンキンと剣戟を叩き込みあい応戦している。
「このスケルトン、ただのアンデッドではないな! 気をつけろ!」
カルナからの檄が飛んできた。魔神の眷属のようで、偶然発生した死霊とはわけが違うようだ。要するに戦闘面で強化されたアンデッドのようだ。
「私に、お任せ。紅蓮の矢、持って、眼前の敵、狙い打つ。ファイアアロー!」
チムチムが杖を掲げて炎の矢を飛ばす!
炎の矢は狙い違わずスケルトンを撃つが、スケルトンが片手に持った鋼鉄製の盾でなぎ払い防ぐ。
「防がれた!」
チムチムが驚愕する。防がれたと言っても盾を持った腕を弾き飛ばしたので、決定打ではないが有効打だったようだ。だが・・・。
「次の詠唱、間に合わない!」
「GAAAAAAAA!」
スケルトンが片手で剣を持って突進してくる!
俺は咄嗟にチムチムをかばい、左腕を浅く切りつけられる。
俺は当然白兵戦なんて出来ない。このままではまずい・・・!
俺は手にしていた弓で横薙ぎにしてスケルトンを追い払おうとする。スケルトンは弓で殴られても危険がないと判断したのか、平然と受けようとした。
が、スケルトンは俺の姿を見て後ろに飛びのいて避けた。その瞬間・・・。
「相手がアンデッドなら任せて!」
最後列でエルルが目を閉じ蒼玉のワンドを地面に突いていた。
「命を傷つける事はできなくても、不浄なる霊を裁く術はあります! ターンアンデッド!」
地面に白い魔法円が描かれ、洞窟内を白い光が包んだ。
「GYAAAAAAAAAAA!」
洋画のモンスターの絶叫もかくやという断末魔を上げてスケルトン達が苦悶する。彼らは剣を取り落とし、自らの顔を抑えながら天を仰いで崩れ去っていった。
Victory! Result 「ショートソード×2、ラウンドシールド×1」
戦闘に勝利。だが状況次第では中々に危険だった。
「今の魔法は・・・」
神官職が行うアンデッドを浄化する魔法らしい。
「エルル殿の魔法か。効果抜群だったようだな。あいつらは一掃されたようだ」
「相手がアンデッドってわかれば直ぐにでも使ったのだけど・・・」
エルルがそう言いながら俺の腕を治癒で治療した。
「接敵して直ぐには識別できないし仕方ないよ。それでも助かった。ありがとう」
俺の腕はあっという間に完治した。
「なるほど。魔神だけでなく脅威は存在するようだ。みな、状況によっては退却しよう」
カルナがそう提案した。流石に怪我をしたばかりの俺も反対はしない。
一息ついてからまた慎重に進み始める。
・・・一時間ほど洞窟内を歩く。文様の描かれた壁がある以外は何も無い。
「なんだろう。さっきもここ通ったよな」
俺は周囲の様子を見ながら洞窟内を全て踏破した可能性を考慮した。
「言われて見ると・・・殆ど一本道に近かったような」
エルルも同意した。彼女も辺りの様子を観察していた。
「おかしいな。この先は行き止まりだけだ。私達が倒した2体の魔物を除けば何も居なかったし、何も無い洞窟だな。本当にこの洞窟でよいのだな?」
カルナが俺に尋ねてきた。他に特徴の一致した洞窟も無かったし、この洞窟で間違いは無いはずだ。
「そのはずだ。気になる箇所なんて一番奥の行き止まりくらいだな」
「じゃあ、そこ。もう一度、調べてみる」
「そのほうが良さそうね。壁の文様があったけど、気になるのはそれくらい?」
一度洞窟全体を調べて回って、壁に文様があった箇所に戻る。全体を廻った段階で文様が一番奥に当たるのが判明したのもある。




