初クエストに挑戦
「はい、確かにお預かりしました。では、こちらの水晶球に手をかざしてください。これはあなたの能力を測る水晶球。あなたの成るべき姿を指し示すでしょう」
「お、ここで能力値とか職業選択ができる? きたきたー、これをまっていました!」
俺は迷わず水晶球に手をかざす。なにかしら字が浮かんできた。
「これは…おや、おやおや?」
受付のお姉さんが困ったような顔をする。
「ん、どうかしましたか?」
「シシトウさんでしたか。どうも、現時点でなれる職業が無いようですが…」
成れる職業がない?
「ど、どういうことですか!」
「パラメータが全般的に平均値。ぽそっ(運は人外レベルの高さです)…知力はかなり高いようですが、(運と)知力だけでなれる初期クラスがないので、選択可能な職業がありませーん!」
受付のお姉さんが困ったような表情をした。途中でさりげなく何かを言った気がする。
「おい、いきなり無職スタートだとよ」「無謀な方も居たものだ」「前途多難だねぇ」「俺はあんな命知らず、嫌いじゃねえぜ」と、まわりがざわつき始めた。
「でも大丈夫です! 雑用ですとか荷物持ちならいけます! 安心してください、シシトウさん」
受付のお姉さんが笑顔で慰めてくれる。ところで、自分の名前はシシドウなんですが。
「はぁ、雑用、ですか。何か戦闘用のスキルみたいなのが身に付いたりなんて事は…」
「ありません。コモンスキルなら習得可能なので、狩りスキルなどで弓の扱いを覚えることもできますよ」
ファイトですよ! と、受付嬢は両手でぐっと握りこぶしを作って励ましてくれた。
「ところで、とりあえず今日の生活費だけでも稼ぎたいです。何か良いクエストとかないですか?」
俺はとても重要な話を切り出す。
「兄ちゃんよぉ、その分だと装備を揃える金もねぇんじゃねーのか?」
「うっ、その通りで…」
装備のことまで頭が回っていなかった。
「駆け出し冒険者のお仕事は…町の近隣の野犬退治。森の草刈り(食人草)や水辺のリザード退治など。まずは武器となる装備品が必要かと…」
受付嬢がいくつかのクエスト案内の紙をくれる。
「これは…ありがとうございました」
俺はとぼとぼとその場を離れる。
「兄ちゃん、冒険者は体が資本だ。こいつぁヒントだぜ」
強面のお兄さんが俺の肩をぽんと叩く。
「…ありがとうございます」
俺は歴戦の勇士であろう冒険者のアドバイスを聞き流しながらギルドを後にした。
外の空気に触れる。ギルドを訪れる前後では自分の身分証代わりの札があるかないかだ。自分の名を記した札には職業・雑用と記されている。スキルは無い。覚え方はスキル所有者からラーニングをするだけだ。が、その場合にはスキルの応じた謝礼が要る。つまり、今は何も覚えられない。
詰んだ。冒険者の出だしにして無職。所持金0。装備なし。仲間なし。コネなし。伝手なし。スキルなし。こいつぁ無理ゲーだ。
俺は力なく路肩に座る。情報もまた何も無い。
『炭鉱の鉱夫希望なら歓迎するぜ』
…脳内リフレイン。そうだ。職業斡旋してくれそうな人がひとり居た。ここは炭鉱の町。鉱夫ならいくらでも募集している!そうだ、冒険者は体が資本なんだ!
③冒険者たるもの、クエストで生計を立てるべし
ふと、冒険者心得の3条を思い出す。…いや、背に腹は変えられない。初心者の駆け出し冒険者だ。きっと大目に見てもらえるさ(後日強面の兄さんに聞いた話では、これは反社会的行為、犯罪行為を行わないと言う事で、野盗崩れにはなるなと言う意味だった)
やるしかない。レッツ鉱夫。つるはしなどは土下座してでも借りよう。
―鉱山通り ドロクロド―
…鉱山はたくさんある街だった。鉱夫募集中の張り紙はそこかしこにあった。先ほど出会った鉱夫の男は歓迎してくれそうだったが、そうやら総じて人手不足のようだった。
俺は通りの壁にある張り紙に目を留める。
『当鉱山は魔物出没の為、冒険者経験のある鉱夫急募! 日給2,000G』
なるほど。身の危険がある職場はより一層の人手不足のようだ。…その為か給料は他より倍ほど高い。冒険者経験といわず、駆け出しだが冒険者の俺は可能だろうか。こうなったらここにしよう。冒険者ギルドへ登録してきた分、有利に交渉を進められるかもしれない。俺は張り紙を壁から引き剥がし、地図に記載の場所へと向かった。
張り紙のある鉱山ギルド。古びた木造の建物の中に入ると、中は何人かのむさくるしく居かつい男達が居るだけだった。
「すみません、鉱夫募集の張り紙を見たんですが…」
いかつい男の一人が顔を上げる。
「よく来たな、小僧。ここはこの町一番の危険な鉱山のギルドだ。度胸のあるやつぁ歓迎するぜ!」
ごつい男がニッ!と笑ってぐっと親指を立てながら挨拶してきた。見た目によらずいい人なのかもしれない。
「俺は駆け出しの冒険者なんですが、それでも大丈夫ですか? 道具の類も一切持っていないし、鉱夫の経験もありません」
「かまわねぇとも。何なら今すぐ行くかい。俺が案内するぜ」
こうも話がトントン拍子だと、却って危険な現場名のではと勘繰りたくもなる。
「はい、是非よろしくお願いいたします!」
所持金0の自分には選択肢は無い。可能性のあるところ。道の拓けそうなところなら飛び込むしかない。
ギルドに居た男に案内してもらいながら鉱山を目指す。つるはしなどの道具は、魔物が出て逃げ出していった働き手の置き土産を使って良いようだ。なるほど、道具が無いと言っても問題ないわけだ。初回は鉱山ギルドだけど、仕事の斡旋を得られた。
Quest Set! 「鉱山で採掘せよ!」 Get Ready? …Go!




