前衛がいる状態でのクエスト
生活環境については話は纏まった。あとはパーティ行動の為に必要な話くらいだろうか。
「うーん、馬車が届くのは昼過ぎだから、朝方に受けても行動は遅れるだろうなぁ」
「へぇ、それじゃあシシトウが持ってきたその一枚のクエストの張り紙は?」
「良くぞ聞いてくれました! 長い間放置されているクエストが一つ!」
俺は持ってきておいたクエストの張り紙をテーブルに広げた。
「これは・・・魔神討伐!?」
カルナが少々驚いていた。
「貴公らはとてつもないクエストばかりを受けてきていたのだな! もはや歴戦の勇者ではないか!」
カルナがなぜか感動していた。
「え、これなに。ちょっと! カルナ。いつもこんなクエストは受けていないからね! シシトウ、どういうこと?」
ずっと残り続けていたクエストの一つだった。
「良くぞ聞いてくれました」
「聞くに決まっているでしょ。この間も残っていたクエストを受けて大変な目に遭ったばかりじゃない!」
サンドリザードのクエストの件だとすぐにわかった。
「安心してくれ。今回は先輩冒険者達にきちんと聞き込みを行った。聞いたところによると、このクエストは今現在扱いが保留中なんだ」
俺の言葉にみなが不思議そうな表情をした。
「どういうこと?」
エルルが言葉の続きを催促した。
「入り江の先の半島にある洞窟に魔神が住み着き、長年通りがかる船を襲っていると言うのが事の始まりだが、なんとこの洞窟に冒険者が訪れても誰も魔神を見つけられずに帰ってきているんだ。この洞窟から魔神が出てきているのは確かな話なんだが」
「それはつまり、洞窟に隠し部屋か何かがあるかもしれないと言う事か?」
カルナが尋ねてきた。
「それはわからない。このクエストは討伐クエストではあるが、魔神の住処の探索クエストでもある。魔神の居所を突き止めればサブ報酬が貰えるんだ」
そして、行って帰ってきた冒険者が居るからこのような情報があるわけで、訪れるだけならば危険はそれほど無いのではないかと言う俺の計算も入っていた。
「つまり、そのサブ報酬狙いってわけね」
「そう。なんとその報酬1万G!」
「報酬、破格! しばらく安泰」
「そうなんだ! 洞窟内にいる魔物は退治しただけの討伐報酬も出る! だから、今回俺はこれを推薦する」
長年入り江の海上の安全を脅かされているのもあって、この討伐クエストへの力の入りようは半端なかった。報酬設定からそれが伺えた。
俺達のパーティにはシーフは居ないが、自然の洞窟に人工的な隠し部屋があるとは思えないので、もしかしたらあわよくば俺達でも何か見つけられるかもという算段もある。
「シシトウが事前に情報を仕入れてきた上で臨むと言うのであれば、私は反対しないよ」
「私も、反対、しない」
「私はもとよりみなの意見には口は挟まない。どこであれ供しよう」
報酬の金額やら相対的危険度が意外に低い点から、みなが賛成してくれたようだ。
「何人もの冒険者が何も見つけられずに帰ってきていたが、ここの冒険者も何人か挑んで帰ってきている。ここは一つ、俺達も参加してみようじゃねーか!」
馬車の扱いに慣れる意味でも、まずはそこそこの距離のクエストを探していた。だから、行って戻ってくる前提でのこのクエスト自体が、骨折り損で終わる可能性も低いのもあって、俺はベストなのではないかと言う判断だった。
「じゃあ、みんなで岬の洞窟を目指そう」
Quest Set! 「岬の洞窟の魔神を討伐せよ!」 Get Ready? …Go!
―ザーラム北東の街道―
入り江を囲うような街道。海沿いになだらかな道を進む。
半島に入らず北上すれば小さな町もあるので、人の往来もそれなりにある。道中の危険度も限りなく0に近かった。
2頭の馬に引かれた馬車がゴトゴトと進む。御者台に座るのはカルナ。彼女は何事も無く2頭の馬を操った。
「何て快適なのかしら! 念願の馬車なんだから、大事に使わないとね」
2頭の馬に立派な幌つき荷台。風を完全にシャットアウトも可能。なべや食器などの備品も完備。ハンモックなどの寝台スペースも確保。水や食料を積むスペースも万全。生活空間としての性能が高い設計だった。
「買って良かったなぁ」
俺一人では到底運べないであろう量の荷物も難なく載せている。大事に使って補修しながら、馬の管理をしっかりやれば、冬場以外の生活空間としても申し分なさそうだった。
バウエルものんびりと馬車の中で寝ている。
馬車の中でゆったり過ごしながら、入り江沿いに道を進む。
しばらく進んだ先に洞窟が見えてくるまで、それほど時間はかからなかった。
―魔神の巣食う洞窟―
それは山に出来た自然の洞窟だった。山の外壁は草木に覆われて、人の手の加わった痕跡などは欠片も無かった。
カルナが先行して洞窟の中を覗き込んだ。
「ここか。問題の洞窟は・・・松明が必要そうだな」
俺はその言葉に馬車から松明を取り出す。
「中には色々な魔物が蔓延っているらしい。気をつけて進もう」
俺はそういうと松明に火を灯した。




