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敗走

 ・・・気がつけば暗闇の中。


「・・・ん、ここはどこだ? 俺は荒地に居たはず」


 周囲は何も見えないくらいに闇に包まれていた。


「目が覚めたか獅子堂空無」


 聞き覚えのある声だった。そうだ、この声は・・・。


「ハデス?」


 名を呼びながら、今は初めの頃と違い、本物なのではないかと考えていた。


「いかにも。二度目の死を迎えたか。いや、あちらの世界ではまだ始めての死であったな」

「俺は・・・死んだのか」


 心は静かなものだった。特に苦痛の記憶などは無い。


「オマエの行動は期待通り。だが、それは予想通りと言う事だ。足掻くがいい。生きるは死に向かうと同義。果たしてオマエは何を成す?」


 青白い顔が何を考えているのかはわからない。


「どう言うことだ?」

「オマエの二度目の死は仮初めのものだ。オマエの死後の扱いはまだ定まっていないと言う事。陪審員達も居る。せいぜい探求することだ」


 俺は何かを言いかけたその時、聞き覚えのある声がしてくるのを感じた。

 それはエルルの声だった。


「死に瀕し、逃れられる術のある世界でよかったな。こちらとそちらの世界。異なるのは色々あるが、死の価値もまた違う」


 俺は体が浮くような感覚に包まれる。どこか温かく優しい光が身を包む。


「どういうことだ。俺は一体何をすれば・・・」

「オマエとは世界の息吹、『新たなる風』よ。答えなど、無い」


 ハデスは薄く目を細め笑っていた。

 俺の体は光に包まれていった。


「世界が変われどさしてかわらず、か」


 どこからとも無く、ハデスの声だけが聞こえてきた。


―――――――――――――――――――――


 うっすらと目をあけると、心配そうにえるるとチムチムが顔を覗きこんでいた。


「うっ、ここは・・・」


 なんだかまぶしい。


「良かった! リザレクションがうまくいった・・・良かった。必ず成功するという保証は無かったから・・・」


 エルルの安堵した表情が見えた。

 俺は先ほどまでの光景を思い出す。


「・・・俺は死んでいたのか?」

「そう、助け出す、苦労した」


 気がつけば最初に作成した野営地にいた。


「私達は何とか逃げられたけれど、あなたが・・・」


 どうやって助かったのかはわからないが、ともかく俺は生きていた。


「シシトウ、無事、良かった・・・」


 本当にそう思った。


「みんな、助けてくれてありがとう・・・」


 俺はお礼を言うのがやっとだった。意識を保ったままで居るのが困難で、その後は深い眠りについた。

 後で聞いた話では、治癒や蘇生の魔法は対象者の体力を大幅に使う為、施術後は深い眠りを必要とすることも多いようだ。

 俺達は野営地で一日休息をした。


Defeat・・・

Quest Fail・・・


 戦闘には敗走し、クエストは失敗。だが、誰も欠ける事が無かったのが幸いだった。

 無事であればまた今日を、明日を生きる事ができる。俺はその日の無事を何かに感謝せずにはいられなかった。

 街へ着いた時には皆へとへとで、しばらく休養を取ろうという話で決定した。

 主人公補正なんてものは無いのかもしれない。そんな事を考えながらも、未だに無事でいる自分と言うものが不思議で仕方なかった。


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