久しぶりの測定
―冒険者ギルド ゼカイア―
それはとある昼の事。いつものギルドのテーブルにみんなで集まったときの事。
「ばーん! これが注文してきた俺達の馬車だ!」
俺は上機嫌で一枚の紙をテーブルの上に出した。
描かれているのは真っ白い分厚い幌付きの馬車。若々しい栗毛の馬。
内装予定図も描かれていた。ロープで固定可能な小型のチェスト。幌の天井からはカンテラを吊るす事も可能。・・・火災が怖いので、蛍光石という闇の中で光る石を購入しようか考案中。明かりはカンテラよりは弱いので、本当に夜でも物とか人が識別できるくらいの用途だ。
完成予想図の図面の書かれた紙切れをみんなで覗き込む。
「最大8人まで乗車可能! 安心の収納スペース!」
俺は設計者の売り文句をそのままに伝えた。
「ついに色々なところへ旅が出来るようになりそうね」
エルルが嬉しそうに身を乗り出してみている。
これまでは食料や日用品を雑用が運搬する為に、重量オーバーしない範囲でしか活動できなかった。そして戦利品を持って帰るだけでも一苦労だった。
そんな苦労から解き放たれる・・・。
「いやー、エルルにも喜んでもらえてよかったよ」
元はエルルが封じられていた水晶を売却した際のお金だった。当人の事情もよくわからないが、ともかく喜んでいてくれているならよかった。
「予算きっかり50,000Gで細部までこだわりの設計!」
これで所持金の余裕はかなり無くなるが、旅先での快適さ、何物にも換えがたい価値がある。
「やるじゃねえか、お前ら。早々に馬車を買うなんてよ!」
いつぞやのダブルモヒカンの先輩冒険者だった。
「いやぁ、たまたまの幸運のお陰ですよ」
自分で言っておいてなんだが、良く考えると本当に降ってわいたような幸運だった。
「クレイジーバッファローを一頭とはいえ討伐しちまうし、たいしたもんだぜ!」
「それもこれも仲間や、ギルドのみんなの応援があったおかげですよ。・・・ここのギルドの皆さんは本当に親切な方ばかりですし」
俺がそんな事を口にしたら、
「あたりまえよ! 誰もが最初はみな駆け出しの初心者だった。それに、いつどこで遭遇し助けられるともかぎらねぇ。それが冒険者ってもんだ。それにお前らの活躍でギルドが有名になりゃあ、もっと仕事も入ってくるってもんだ。一蓮托生。同じギルドに所属するなら仲間であり兄弟みてぇなモンさ。なぁ、お前ら?」
ダブルモヒカンの男が周囲の冒険者達に語りかける。
「そうだそうだ!」「グルドフも良い事言うねぇ」と、いかつくゴツイ男達が返事を返してきた。
「しっかし、兄ちゃんは未だに雑用のままなのか? そろそろ水晶球診断を受けたらどうよ。パラメータもあがってスキルも増えたから転職も可能だろうよ」
ジョブチェンジ、俺は魅力的な響きの言葉にしばらく身を委ねた。
「ジョブチェンジ・・・俺が・・・他のジョブに?」
そういえば、チムチムからセージの話を聞いた事を思い出した。
「そう、受付嬢に頼んでみな。きっとアドバイスもらえるぜ。じゃあな」
グルドフと呼ばれたダブルモヒカンの男は去って行った。
「ぉぉう、俺がジョブチェンジ可能かもだと? 直ぐには無理かと諦めていたが・・・」
「シシトウ、水晶球診断、しばらく、やってない?」
俺はこれまでにそこそこ冒険してきたと思う。
「最初だけでやっていないな」
「成長、しているかも」
俺は早速受付嬢の下へと行った。
「では、こちらの水晶球に手をかざしてください。あなたの今の姿を現すでしょう」
俺は最初の頃と同じように、水晶球に手をかざした。




